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2019/07/19 18:00

『ライオン・キング』オリジナル・サウンドトラック(Album Review)

 全米では2019年7月19日、日本では8月9日に全国公開されるディズニー映画『ライオン・キング』が、公開1か月前から話題を呼んでいる。ストーリーのすばらしさは勿論のこと、“超実写版”として蘇るCGIアニメーションを融合した映像の美しさ、そして1994年のアニメーション版でも高く評価された、音楽のクオリティと参加アーティストたちにも注目が集まっている。

 制作の中心となるのが、ドイツ出身の作曲家=ハンス・ジマーと、南アフリカ出身の音楽プロデューサー、レボ・Mの2人。両者は1994年に発表されたアニメーション版のサントラにも参加している。そして、同映画から数々のヒットを生み出したエルトン・ジョンと、作詞家のティム・ライスもリメイクに大きく貢献した。

 本作の目玉曲といえば、そのエルトン&ティムが手掛け、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で最高4位をマークしたメイン・テーマ「愛を感じて」だろう。同曲は【第67回アカデミー賞】で<歌曲賞>も受賞した『ライオン・キング』を語る上で欠かせない一曲。2019年バージョンは、主人公のシンバ役を務めるドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)と、メス・ライオンのナラ役を担当するビヨンセによる超豪華デュエットで、1994年の映画バージョンとも、エルトンのソロ・バージョンともまた違う、両者だからこそ醸し出せるエモーショナルな仕上がりになった。

 ドナルド・グローヴァーは、 昨年「ディス・イズ・アメリカ」で世界中に大きな衝撃を与えた俳優/歌手で、今年は4月に公開した映像作品『グアヴァ・アイランド』が絶賛され、俳優としても目覚ましい結果を出したばかり。今作では、ファレル・ウィリアムスがプロデュースを手掛けた アフリカン・テイストの傑作「ハクナ・マタタ」にも、ビリー・アイクナー、セス・ローゲン、JD・マクラリーと共に参加している。いずれも、語り、ラップ、コーラスを見事に調和させた傑作だ。

 ファレルは、前述の「愛を感じて」と「ハクナ・マタタ」の他、数々のカバーやサンプリング・ソースとしても有名な「ライオンは寝ている」(ビリー・アイクナー&セス・ローゲン)、「愛を感じて」に匹敵する知名度を誇るワールド・ビートの「王様になるのが待ちきれない」(JD・マクラリー、シャハディ・ライト・ジョセフ、ジョン・オリヴァー)、本編のラストを飾る賛歌のようなナンバー「ムブーベ」(レボ・M)の計5曲を担当している。レボ・Mは、1998年公開の『ライオン・キング2 シンバズ・プライド』に提供した「ヒー・リブズ・イン・ユー」と、冒頭の「サークル・オブ・ライフ/ナー・イゴンニャマ」にも引き続きボーカルで参加した。

 一方のビヨンセは、オリジナル版未収録の新曲「スピリット」を、スウェーデンの音楽プロデューサー=イリア・サルマンザデ、英ロンドン出身のR&B系シンガーソングライター=ラビリンスと共に完成させた。力強いコーラスをバックに、感情を振り絞るように歌う場面もあれば、壊れそうなほど繊細に歌う場面もある、壮大なゴスペル・バラードで、3人の母親になったからこそ醸し出せる包容力に思わず聴き入る。民族衣装を纏ってお得意のフォーメーション・ダンスを披露した、ミュージック・ビデオもすばらしい出来栄え。

 ビヨンセは、本作のリリース1週間後、映画公開の7月19日に、ストーリーに基づくインスパイアード・アルバム『ライオン・キング:ザ・ギフト』を世界同時発売した。本作には、この「スピリット」の他、R&B、ヒップ・ホップ・アフロ・ビートなど、ジャンルの垣根を超えたタイトルが収録される。

 前述の【第67回アカデミー賞】にもノミネートされた「サークル・オブ・ライフ/ナー・イゴンニャマ」は、エルトン・ジョンによるバージョンが全米18位、全英11位を記録した、オープニングを飾るに相応しい壮大なゴスペル・ポップ。予告編や映画のオープニング・ショットのみならず、ディズニー・リゾートやパレードでも使用されている名曲だ。2019年バージョンは、レボ・Mのボーカルを起用したアフリカン・テイストなトラックに仕上がっている。そのエルトンは、自身が手掛けたアップチューン「ネヴァー・トゥー・レイト」でボーカルを担当した。この曲は、ドナルド&ビヨンセによるバージョンがエンド・クレジットで使用されるとのこと。

 歌モノもいいが、ハンス・ジマーによる映画ならではのインストルメンタルも充実。細やかな音造りの「この世は不公平」、左右から包むようにコーラスが被さってくる「ラフィキのホタル」、スリリングな展開を音で表現した「象の墓場」、目まぐるしい躍動感が伝わってくる「ヌーの暴走」、管弦楽が織りなすクラシカルな「スカーが王に」~「シンバが生きている!」、映像を結び、感情・動作が伝わってくるような「ムファサの面影」、静寂から喧噪へ、ストーリーの一部始終を取り込んだ長編「プライドロックの戦い」~「思い出せ」と、どれをとっても優秀と言うに尽きる楽曲が揃っている。

 日本盤は映画公開の2日前、8月7日に3形態で発売される。オリジナル・キャストによる英語バージョンを収録した「英語版」、吹替版キャストによる日本語歌を収録した「日本語版」、その両方を収録した「デラックス版」の3形態で、「英語版」はデジタル・アルバムのみ7月12日より配信がスタートした。来月の公開に先駆け、まずは英語版で映画の世界観を堪能してみては如何だろうか。


Text: 本家 一成

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