2019/04/05
ここ数年、ライヴ・ツアーやアーティスト活動からのリタイアを宣言するソウル/ファンク系のヴェテラン・アーティストが増えている。過去に何度か引退宣言をしていたアレサ・フランクリンはこの世を去ってしまったが、アニタ・ベイカーが還暦を迎えたのを機にフェアウェル・コンサートを行い、まもなくラスト・アルバムを発表するオージェイズも2020年に引退するという。思えばビルボードライブでも、3年ほど前にマリーナ・ショウが日本でのラスト・コンサートを行い、昨年は古参メンバーが引退を表明したインプレッションズも初来日にして最後となるフェアウェル公演を行った。リロイ・ハトソンも、5月の公演が体調不良のため中止になってしまったが、当初は“最後の日本公演”という触れ込みで1年ぶりに再来日する予定だった。
何故“最後”を謳うのか。直截的に言うとそれは加齢に伴う体力の限界ということになる。個人差はあるだろうが、なにしろ彼らは60~70代。サラリーマンでも定年退職している年齢だ。ただ、作品やライヴに接すると、「引退するには早すぎる」と思わされる人たちばかりでもある。いや、ソウル~ファンクの歴史に太字で名を刻むほどの偉人たちが疲れた姿を公に見せるはずもないのだが、それが表向きの姿だとしても、好調なうちにベストなパフォーマンスで花道を飾ることは過去の偉業をより輝かせるものだ。加えて現在は、若い世代の間で“クラシック”とされる音楽が60~70年代のソウルやファンクから90年代以降00年代初頭あたりまでのR&Bやヒップホップに変化しており、潔く後進に道を譲ることでヴェテランとしての器の大きさやプライドを示しているのかもしれない。
この4月にビルボードライブで公演を行うジョージ・クリントン(77歳)もツアー活動からの引退を宣言しており、今回が最後の来日公演になるのではないかと言われている。昨年は38年ぶりとなるパーラメントの新作『Medicaid Fraud Dogg』を発表。〈SUMMER SONIC 2018〉でも若手のサポートを得ながらステージと観客の双方を煽りまくってグルーヴを支配し、Pファンク軍団の総帥ぶりを見せつけてくれた。かねてから噂されているブレインフィーダーからの新作も待たれるクリントン御大は近年、フライング・ロータスがサンダーキャットやシャバズ・パレセズと組んだWOKE(ウォーク)の“The Lavishments Of Light Looking”、またケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』(ともに2015年)などにも客演しており、余裕で現役だ。しかし昨年、2019年でのツアー引退を宣言。観客までもがエネルギーを消耗するほどの激しいライヴを70代後半になってやり続けるのは厳しかったのかもしれない。
そんなこと思いながら観たサマソニのステージが最後だと思っていただけに、8ヵ月ぶりとなる今回の来日は嬉しい誤算。奇才ギタリストのブラックバード・マックナイトや軍団の伝説的ヴォーカリストであるゲイリー“マッドボーン”クーパー、そしてクリントンの孫であるトレイゼイを含む総勢20名近くの大所帯でたたみかけるP印のステージには期待しかない。
これが見納め。淋しくもなるが、百戦錬磨のファンカーが“ライヴ納め”の場所に日本を選んでくれたということが嬉しいではないか。
Text:林 剛
Photo:Masanori Naruse
◎公演概要
【ジョージ・クリントン】
ビルボードライブ大阪
2019年4月27日(土)
1st ステージ 開場15:30 開演16:30
2nd ステージ 開場18:30 開演19:30
ビルボードライブ東京
2019年4月29日(月・祝)~4月30日(火・祝)
1st ステージ 開場15:30 開演16:30
2nd ステージ 開場18:30 開演19:30
URL: http://www.billboard-live.com/
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