2019/02/28
キュートな顔立ちにマッシュルームヘア、甲高い声で歌っていたデビュー曲「ワンタイム」(2009年5月)のリリースから、今年で10周年を迎えるカナダ・オンタリオ州出身のシンガー、ジャスティン・ビーバー。2019年現在のジャスティンといえば、ボウズ頭に全身タトゥー、数々のゴシップ騒動を繰り返した後、美女モデルとゴールイン……という、デビュー当初からは想像できないキャラクターで世間を賑わせている。
10年の時はこれほど人を変えるものか、というほどの変貌を遂げたワケだが、それはシンガーとしてもいえること。大きな転機といえば、2012年リリースの3rdアルバム『ビリーヴ』だろう。ラッパーのリュダクリスをフィーチャーしたティーン・ポップ「ベイビー」(全米5位)含むデビュー・アルバム『マイ・ワールズ』(2010年)や、ジェイデン・スミスとコラボした「ネヴァー・セイ・ネヴァー」(全米8位)の“アイドル的”イメージを取っ払い、“アーティスト”へ成長したことを証明したアルバムともいえる。
その『ビリーヴ』からは、ラップを絡めた「ボーイフレンド」(2位)、アリアナ・グランデの元カレでも知られる、ラッパーのビッグ・ショーンをフィーチャーした「アズ・ロング・アズ・ユー・ラヴ・ミー」(6位)、そしてフィーメール・ラッパーのニッキー・ミナージュとコラボした「ビューティー・アンド・ア・ビート」(5位)の3曲が米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でTOP10入りし、ヒップホップ・シーンでも高い注目を集めた。ヒットこそしなかったが、今やシーンのトップに君臨するドレイクとの夢の競演(?)「ライト・ヒア 」も人気曲として『ザ・ベスト』に収録されている。
変声後の活躍は目覚ましく、翌2013年は元カノのセレーナ・ゴメスに向けた失恋ソングとして話題を呼んだ「ハートブレイカー」や、米シカゴ出身のヒップホップ・アーティスト=チャンス・ザ・ラッパーをゲストに迎えた「コンフィデント」など、10週連続で配信シングルをリリースし、それら含むコンピレーション・アルバム『ジャーナルズ』でさらにR&B色を強めた。なかなかフォーカスされない作品だが、今聴き返しても質の高い意欲作(曲)が揃っている。本作からは、その2曲がベスト盤に厳選された。
知名度を“世界的”にのし上げたのが、2015年の快挙。同年2月にリリースしたディプロ&スクリレックスによるユニット=ジャックÜとのコラボ・ソング「ホウェア・アー・ユー・ナウ」が、主要各国でTOP10入りする大ヒットを記録すると、同年8月発売の「ホワット・ドゥ・ユー・ミーン?」で、自身初の全米No.1を獲得。11月にリリースした4thアルバム『パーパス』からは、「ソーリー」と「ラヴ・ユアセルフ」もHot 100チャート1位に輝き、翌2016年の全米年間シングル・チャートでは、「ラヴ・ユアセルフ」~「ソーリー」がワンツーフィニッシュを飾るという、大快挙を達成した。2015年の集計と期間が割れなければ、「ホワット・ドゥ・ユー・ミーン?」含むTOP3を独占していたかもしれない。アルバム『パーパス』も、2016年の年間アルバム・チャートで3位にランクインし、「カンパニー」や「アイル・ショウ・ユー」など、ファンの間で高い人気を誇るナンバーも生まれた。もちろん、これらの代表曲は全て同ベスト盤に収録されている。
2016年後期は、ピコ太郎の「PPAP」の大ブレイクを生み出したとして、CMで共演するなど日本でもさらに知名度を高め、フィーチャリング・ゲストとして参加したディプロ率いるメジャー・レイザーの「コールド・ウォーター」(全米2位)、DJスネイクの「レット・ミー・ラヴ・ユー」(全米4位)が2曲連続でTOP10入りした。勢いはとどまるどころか、最前線で加速し続ける。
翌2017年は、“リミックス・ゲスト”して参加したプエルトリコ出身のラテン・シンガー=ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキーによる「デスパシート」が、米ビルボード史上最長となる16週のNo.1をマークする。先日、ジャスティンが参加していないオリジナル・バージョンのミュージック・ビデオがYouTubeの再生回数60億回を突破し、殿堂入りしたことも話題となった。「デスパシート」は同年の年間チャートで2位にランクインし、2年連続の年間TOP3入りを果たしている。この年は、DJキャレドの「アイム・ザ・ワンfeat.ジャスティン・ビーバー、クエイヴォ、チャンス・ザ・ラッパー&リル・ウェイン」が自身5曲目の全米1位をマークし、デヴィット・ゲッタの「2U」(全米16位)や、ブラッドポップとのコラボ・ソング「フレンズ」(全米20位)もスマッシュ・ヒットを記録した。
2018年の活動は(ゴシップ含め)比較的大人しかったものの、DJキャレドと再びタッグを組んだ「ノー・ブレイナーfeat.ジャスティン・ビーバー、チャンス・ザ・ラッパー&クエヴォ」が全米最高5位をマークし、2015年から4年連続のTOP10入りを果たしている。
10周年を記念した本作『ザ・ベスト』は、米ビルボード・チャートで1位を獲得した4曲、TOP10入りした12曲を網羅した、アニバーサリー・イヤーに相応しい記念盤。10年という短いキャリアにもかかわらず、ご紹介したタイトルの他にも、マライア・キャリーとデュエットした「恋人たちのクリスマス」のカバーや、ウィル・アイ・アムとのコラボ曲「#thatPOWER」など、人気曲といえるナンバーがまだまだある。ヒット曲の多さでいえば、マイケル・ジャクソンやアッシャー、ジャスティン・ティンバーレイクといった男性ソロ・アーティストの代表格を上回る……といっても過言ではない。この短いキャリアで、だ。
今年2019年は、デビュー10周年目ということもあり、4年ぶり、通算5作目となるスタジオ・アルバムのリリースに期待が寄せられているが、未だそういったアナウンスやほのめかすような発言(ツイート)などはされていない。しかし、いつでも“サプライズ”を届けてくれるのが、世界のスーパースター=ジャスティン・ビーバー。まずは心身を整えていただき、『パーパス』以上の傑作を届けてくれることを期待しよう。その時に向けて、まずは同ベスト盤で輝かしいキャリアのおさらいを!
Text: 本家 一成
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