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2019/01/05

【2018年米音楽界を歌詞でプレイバック】「2018年【BETアワード】サイファー」ヴィック・メンサ~倫理的な音楽消費にまつわる議論

 2018年の米チャートを賑わせたヒット曲や話題曲の中には、今年の米音楽界におけるトレンドや、社会の動きが歌詞に凝縮されているものがいくつも見られた。

 米ビルボードがこれらの楽曲を起点に、米国における2018年の音楽事情/社会情勢を振り返っている。本日は、長澤まさみらとともにアンダーアーマーのプロモ映像に出演したことも話題となったヴィック・メンサによるサイファーをピックアップする。

 「Your favorite rapper’s a domestic abuser, ay/ Name a single Vic Mensa song, [censored] we all know you won’t live that long/ I don’t respect [censored] posthumously」(お前のお気に入りのラッパーはDV加害者だ/ヴィック・メンサの曲をひとつでも言ってみろよ、[検閲]お前がそんなに長くは生きられないって俺らみんな知ってるし/俺は死んだ[検閲]なんて尊敬しない)

 米ラッパーのヴィック・メンサは、今年の【BETヒップホップ・アワード】で披露したサイファーで、2018年に最も議論された問題のひとつに真っ向から挑んだ。彼は、問題のある過去を持つ故XXXTentacion(エックスエックスエックステンタシオン)を非難し、彼のようなアーティストの音楽と人気を世間はどのように受け止めるべきかという難しい問題を提起した。

 6月に死去したXXXTentacionの楽曲は、米ビルボード・チャートに長くとどまっており、12月にリリースされたニュー・アルバム『Skins』はアルバム・チャート“Billboard 200”で首位に輝いた。生前ドメスティック・バイオレンス(DV)などの容疑により裁判を待っている状態だった彼は、死後に不起訴になったものの、元恋人への暴行を認める発言をしていた音声が秋に報道されて物議を醸した。

 問題のある過去を持つアーティストはXXXだけではない。今年は6ix9ine(シックスナイン)がギャング絡みの犯罪で逮捕され、ヤング・サグも9月に逮捕されている。また、性的暴行疑惑が付きまとうR.ケリーやXXXの楽曲がヘイト・コンテンツ/ヘイト的行為に関する新たな規定に基づいてSpotifyの公式プレイリストから外されるという騒動もあった。このように多くの人気アーティストが悪事に関係しているなか、リスナー側がいかにして倫理的に音楽を消費すべきかが問われている。


◎2018年【BETヒップホップ・アワード】サイファー
https://youtu.be/zLejw6gGctc

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