2018/11/02
米津玄師、に、説明はもういらないだろう。2018年10月27日、28日の2日間、いまや日本の音楽シーンを代表するようになった存在を追い求め、何年も前から彼を知る人、ここ最近で彼に魅了され始めた人、すべての人がさまざまな想いを抱えて足を運んだのは、幕張メッセにて開催された【米津玄師 2018 LIVE / Flamingo】である。
動員数は計4万人。とはいえ、米津は各日2万人へいっぺんに音楽を届けたのではなく、あくまで一人ひとり、それぞれの心に音楽を響かせたのではないだろうか。美しい。そう思った。美しくありたい。そう願う自分もいた。いま現在の米津が鳴らす音楽が、そのときの楽しみだけに留まらず、人の意識をも変え得るのものだと実感した夜だった。
最終公演のサポート・メンバーもお馴染み、須藤優(b)、堀正輝(dr)、中島宏士(g)。彼らに続いて米津が登場すると、名曲「LOSER」のストリングスから始まるイントロが鳴り響く。一気に広がった歓声は演奏中も止むことなく、ボーカロイド曲のセルフカバー「砂の惑星」、米津もアコースティック・ギターをかき鳴らす「飛燕」など、ライブでも人気のナンバーが続いた冒頭、米津自身を鼓舞したのは間違いない。なお、今回はステージ左右に巨大ビジョンも設置されており、この「飛燕」では米津の姿が映し出されることになった。パーカーのフードを深くかぶっており、表情はほとんど読み取れなかったが、ステージに立つ自らの姿を大々的に打ち出してくれたのも、のちほど彼の話す“変化”と言えるだろう。
ダンサンブルでキャッチーな流れが断ち切られ、最初に息を呑んで聴き入ったのは、スモークの立ち込める中、鐘の音に導かれるように演奏された「amen」。米津が現在の地位を確立するひとつのターニング・ポイントにもなったシングル『LOSER / ナンバーナイン』のカップリング曲だ。せり上がるムービング・ステージからはダンサーたちも登場し、4拍ごとに変わるどこか不気味なポージングにより、楽曲のダークな雰囲気を体現してみせる。
また、ステージ背後には格子状のセットが組まれていたのだが、3rdアルバム『Bremen』の収録曲「Undercover」では、四角く区切られた各スペースにパフォーマーたちが起立し、首からぶら下げたマーチングドラムを演奏。それから次々にムービング・ステージへ乗り移り、メイン・ステージに降りると、米津は彼らを従えながら花道を歩いていくのだった。その姿はまさにブレーメンの音楽隊。もともとライブ演出にも定評がある米津だが、ステージの上空からフロアの奥まで、会場を立体的に使うアイデアは、自身最大規模だからこそ映えたものである。
10月31日にリリースされたニュー・シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』からはまず、オルタナティブ・サウンドで展開する「TEENAGE RIOT」を披露。大型ビジョンではMVも初解禁となった。バンドの演奏シーンを自身初のモノクロで収録しており、翌10月29日にはYouTubeにて一般公開されたが、この日のオーディエンスは一足先に音源・映像をフルで体験することとなった。
ここで米津は「元気?」と投げかけ、会場へ足を運んだ人々に感謝を述べた上で、先ほど演奏された「TEENAGE RIOT」の原型が、中学生のときにつくった楽曲であることを明かした。「14、5歳ころのぐずぐずした気持ちとか、ヒリヒリした気持ちみたいなもの、そのときの記憶を掘り起こして、27歳になったいま世の中に出すことがとても大事なんじゃないかな、と思ってつくった曲です」。そして彼は、“ハチ”名義でボーカロイド曲をつくっていたころから、“米津玄師”となって現在に至るまでを振り返る。
「初期を知っていくれている人から、『変わっちまったな』とか、『遠くへ行ってしまったな』とか、そういうことを投げかけてもらえるたびに、悲しくなったりするんだけど、一人の音楽家として、変化していくっていうことは、まっこと一番、美しいことだと思いながら音楽をつくっていて。その信念を変えずにやってきたから、いまこういう素晴らしい空間が生まれているんだっていう実感というか、感謝というか、感激というか。本当に今日はありがとう」
そう語りかけたのち、自身もムービング・ステージの上に立つと、星空のような映像の中で「orion」を歌唱した。前回【Fogbound】でも感じたことだが、彼は“米津玄師”という存在をパフォーマンスとして可視化させるのが非常に上手い。変わっていく。遠くへ行く。それを切なく思う瞬間もあるだろう。だが、ゆっくりと高いところへ昇っていく彼の姿は確かにまばゆく、その周りを渦巻く数多の光さえ、実際より明るく輝いているように見えたのだ。
次々と燃え上がる灯火で神聖さの高まった「打上花火」、歯切れのよいトラックに日本美を感じさせるメロディと歌詞が絡み合う新曲「Flamingo」、その名声を不動のものにした「Lemon」。これら“変化”なくして生まれなかった楽曲郡も演奏し、アンコールでは、ニュー・シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』のカップリング曲で、メルヘンチックなポップ・ソング「ごめんね」から、メンバー紹介へ。小学生のときからの幼馴染、サポートギターの“なかちゃん”こと中島宏士には、先ほど演奏された「TEENAGE RIOT」の原型も聴かせていたとのことで、米津は「そのときからしたら考えられらんないよね」と笑顔。改めて会場に感謝を述べると、「音楽は死ぬまでやってくと思うんだけど、こういう美しい空間を、また、どっかのタイミングでいいから、一緒につくろうね」と投げかけた。
それからノスタルジックな雰囲気ただよう「クランベリーとパンケーキ」へと続け、幕切れを飾ったのは「灰色と青」。前回1月に行われた【Fogbound】の最終公演では、ゲストとして登場した菅田将暉と一緒に歌い、自身に「本当に唯一、音源を作っているときよりも、ライブで歌ってる方が美しい瞬間があった」と言わしめた楽曲だ。それをこの日は一人で歌い上げたわけだが、なぜだろう。始まりは青い色――この言葉が、いつもにも増して、胸に響いた。
TEXT:佐藤悠香
PHOTO:鳥居洋介 / yosuke torii & 太田好治 / yoshiharu ota
※写真素材は初日公演10月27日(土)のものです。
◎セットリスト
【米津玄師 2018 LIVE / Flamingo】
2018年10月28日(日)幕張メッセ 国際展示場ホール1~3
01. LOSER
02. 砂の惑星
03. 飛燕
04. メランコリーキッチン
05. 春雷
06. アイネクライネ
07. amen
08. Paper Flower
09. Undercover
10. 表記未対応(正式表記は、Aliceの中国語簡体字表記となります。)
11. ピースサイン
12. TEENAGE RIOT
13. orion
14. 打上花火
15. Flamingo
16. Lemon
EN1 ごめんね
EN2 クランベリーとパンケーキ
EN3 灰色と青
◎リリース情報
両A面シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』
2018/10/31 RELEASE
<フラミンゴ盤(初回限定)(CD+おまけDVD+スマホリング)>
SRCL-9959~9961 / 1,900円(tax out)
<ティーンエイジ盤(初回限定)(CD+サイコロ)>
SRCL-9962~9963 / 1,600円(tax out)
<通常盤(CD)>
SRCL-9964 / 1,000円(tax out)
◎ミュージックビデオ
「TEENAGE RIOT」:https://youtu.be/lwolyOIcCQg
「Flamingo」:https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
◎ツアー情報
【米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃】
2019年1月19日(土)徳島・アスティとくしま
2019年1月20日(日)徳島・アスティとくしま
2019年1月26日(土)神奈川・横浜アリーナ
2019年1月27日(日)神奈川・横浜アリーナ
2019年2月02日(土)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2019年2月03日(日)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2019年2月09日(土)福岡・マリンメッセ福岡
2019年2月10日(日)福岡・マリンメッセ福岡
2019年2月16日(土)北海道・北海きたえーる
2019年2月17日(日)北海道・北海きたえーる
2019年2月23日(土)福井・サンドーム福井
2019年2月24日(日)福井・サンドーム福井
2019年3月02日(土)大阪・大阪城ホール
2019年3月03日(日)大阪・大阪城ホール
2019年3月10日(日)千葉・幕張メッセ 展示ホール4~6
2019年3月11日(月)千葉・幕張メッセ 展示ホール4~6
※記事初出時に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
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