2018/11/02
喧騒から少し離れた渋谷の一角に【F / T 秘密基地】が現れたのは、約2週間前のことである。2018年10月31日にリリースとなった両A面シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』の世界観をイメージして、松本千広をはじめとした美術チームにより作られたこの空間は、10月16日、17日の2日間限定でポップアップとしてオープンし、1階は「TEENAGE RIOT」、2階は「Flamingo」と、それぞれを多角的に表現した場となった。
●「TEENAGE RIOT」
薄闇の中でまず目を引いたのは、絡まり合った大量のギターのシールドだった。室内を区切るように天井から床まで垂れていて、そこには様々な種類のギターやヘッドホンも多く括りつけられており、足元にはテレビが置かれている。ディストピア的な、廃墟のような場。BGMもなく、上階からノイズ混じりの音楽がかすかに漏れてくるだけである。少し戸惑いながら、適当なヘッドホンを手に取ったとき、コードが音楽プレーヤーへ繋がっていることに気がついた。再生ボタンを押す。すると、自分の耳に直接「TEENAGE RIOT」が鳴り響き始めるのだった。
▼米津玄師 MV「TEENAGE RIOT」
https://youtu.be/lwolyOIcCQg
音楽再生機器は、現代の主流であるiPhoneから、iPod、CDウォークマン、MD、CDコンポ、カセット・プレーヤーなど様々な種類が用意されており、音楽の在り方が時と共に変化してきたことを示唆しているよう。米津は常々「オリジナリティ」という言葉への疑問を呈し、自らが既存の音楽から影響を受けていること、過去が現在・未来を形づくっていることを強く意識している。そういった想いが、彼の「音楽はつづく」という言葉に繋がっているのだろう。そもそも「TEENAGE RIOT」の原型は、彼が中学生のころにつくった楽曲だ。そして、このタイトルとオルタナティブ・サウンドを聞けば、否応なしにソニック・ユースが思い浮かぶ。音楽はつづいている。
また、米津が「自分にとって音楽っていうのはパソコンとかイヤホンから流れてくるものだった」と語っていたことを考えると、人が集まる場で新曲の試聴を実施しながら、個々人へ届けるような方式をとったのにも意があるように思えた。その瞬間、自分だけに鳴り響く音楽。自分ひとりで聴き入りながら、改めて周りを辺りをよく見渡して、納得した。コンバースのハイカット、煙草の空箱や吸殻に、複数のサイコロ。CDジャケットや歌詞などに出てくる「TEENAGE RIOT」のモチーフが、そこらじゅうに散りばめられている。
●「Flamingo」
階段を上がると情景は一転、室内はピンクのベルベットカーテンで華やかに装飾されていた。フラミンゴを象った色鮮やかな花々と、煌びやかな化粧台、その上に乗せられたアンティークの香水瓶や羽ペン、テーブルに乗せられたピンク色のカクテル。仄かに甘い香りも立ち込めており、先ほどとの対比が際立つが、複数人で順番に通される奥のスペースはまたも暗い。突き当たりには複数のテレビがランダムに積み重なっている。そこに放映されるのが、現在YouTubeで1000万再生を超えている「Flamingo」のMVだ。
▼米津玄師 MV「Flamingo」
https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
かつて「LOSER」のMVでダンスを初披露してからというもの、数々のライブをはじめ、最近では自身初出演となったワイヤレスイヤホン『WF-SP900』のCMでも踊っているが、その進化をより明確に知ることができるのも、今回のMVの特徴である。空間【F / T 秘密基地】に訪れた人は、一足先に音源と映像の片鱗を味わうことになったのだが、ここにはユニークな仕掛けが隠されていた。案内人の女性による「近づきすぎるとフラミンゴが逃げてしまうかもしれません」という言葉の示唆する通り、誰かがテレビへ歩み寄ると画面にノイズが入り、その距離の縮まるほど激しくなるため、近づきすぎると映像が完全に見えなくなってしまう。1階でも聞こえていたノイズ音の正体だった。
届きそうで届かない。触れられそうで触れられない。掴めそうで掴めない。捉えがたいものを追い求めるのは、あまりにもどかしく、けれどもとても美しい。消えてしまうとしても近づくか、消えないように離れるか。あるいは、ときに近づき、ときに離れながら、様子を伺うことも出来るだろう。私たちは短い時間で選択が迫られたわけである。MVを放映しておきながら、MVを消す選択肢が用意されたのには驚いたが、これは米津が与えてくれた「Flamingo」の大きなヒントになったのと同時に、自らの無意識的な行動から我が身を省みるきっかけにもなった。
聴覚・視覚、そして触覚・嗅覚を刺激し、体験としても音楽を掘り下げて、来場者自身の生き様にも迫った【F / T 秘密基地】。この空間で表現された「Flamingo」と「TEENAGE RIOT」は、10月27日と28日に幕張メッセで開催された【米津玄師2018 LIVE / Flamingo】で初披露となった。自身最大規模、計4万人を動員した本公演。ライブ・レポートも追って掲載予定である。
TEXT:佐藤悠香
◎リリース情報
両A面シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』
2018/10/31 RELEASE
<フラミンゴ盤(初回限定)(CD+おまけDVD+スマホリング)>
SRCL-9959~9961 / 1,900円(tax out)
<ティーンエイジ盤(初回限定)(CD+サイコロ)>
SRCL-9962~9963 / 1,600円(tax out)
<通常盤(CD)>
SRCL-9964 / 1,000円(tax out)
◎ミュージックビデオ
「TEENAGE RIOT」:https://youtu.be/lwolyOIcCQg
「Flamingo」:https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
◎ツアー情報
【米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃】
2019年1月19日(土)徳島・アスティとくしま
2019年1月20日(日)徳島・アスティとくしま
2019年1月26日(土)神奈川・横浜アリーナ
2019年1月27日(日)神奈川・横浜アリーナ
2019年2月02日(土)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2019年2月03日(日)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2019年2月09日(土)福岡・マリンメッセ福岡
2019年2月10日(日)福岡・マリンメッセ福岡
2019年2月16日(土)北海道・北海きたえーる
2019年2月17日(日)北海道・北海きたえーる
2019年2月23日(土)福井・サンドーム福井
2019年2月24日(日)福井・サンドーム福井
2019年3月02日(土)大阪・大阪城ホール
2019年3月03日(日)大阪・大阪城ホール
2019年3月10日(日)千葉・幕張メッセ 展示ホール4~6
2019年3月11日(月)千葉・幕張メッセ 展示ホール4~6
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