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2018/10/25

『フォーエバー・ネバーランド』ムー(Album Review)

 日本ではアンドロイドのCMに使われヒットした、メジャー・レイザー&DJスネイクの「リーン・オン」(2015年 全米4位/全英2位)でメイン・ボーカルを担当し、全世界にその名を知らしめたMØ(ムー)。翌2016年には、メジャー・レイザー&ジャスティン・ビーバーとコラボした「コールド・ウオーター」(全米2位/全英1位)が大ヒットし、人気を不動のものにする。

 本作『フォーエバー・ネバーランド』は、デンマーク・チャートで最高2位をマークした、2014年のファースト・アルバム『ノー・マイソロジー・トゥ・フォロー』から、その2大ヒットを経て4年ぶりにリリースされた、彼女のセカンド・アルバム。前月にトレーラー動画を投稿し、インタールードとして収録されたピアノ・バラード「ウェスト・ハリウッド」を公開。もしや、次作はこの(生音)路線?と思いきや、やはりムーの真骨頂であるエレクトロ・ミュージックが基となっていた。

 アルバムからは、2016年5月にリリースした「ファイナル・ソング」が、デンマーク(2位)やニュージーランド(6位)でTOP10入りし、UKチャートでも最高14位のスマッシュ・ヒットを記録。オリジナル盤への収録は見送られたが、国内盤にはこの曲含め、前作以降にリリースされた「カミカゼ」と「ナイツ・ウィズ・ユー」も収録される。

 トータル・プロデュースは、デミ・ロヴァートやカーリー・レイ・ジェプセン、ザラ・ラーソンなどの人気シンガーを手掛ける、カナダ出身の音楽プロデューサー=ST!NT。その他、フランク・デュークスや ベニー・ブランコ、スターゲイト、カシミア・キャットなど、売れっ子プロデューサーたちが参加している。ディプロは、自身がゲストで参加した「サン・イン・アワー・アイズ」を手掛けている。

 その「サン・イン・アワー・アイズ」は、7月にセカンド・シングルとしてリリースされ、翌8月にはミュージック・ビデオも公開された。船の上でボーイッシュに佇み歌うムーと、サンセットのコントラストが、イイ味を出している。ディプロとのコラボ曲ではあるが、フロア映えする「リーン・オン」とは違ったカタチの、スタンダードなポップ・ソングに仕上がった。オーストラリアの女性ソングライター=サラ・アーロンズが制作に参加した「アイ・ウォント・ユー」も、その路線だ。

 一方、フロア映えするナンバーも充実。特に、間奏で篠笛のような楽器が使われている、デルフォニックスの「ララ・ミーンズ・アイ・ラヴ・ユー」(1968年)そっくりのサビがインパクト絶大の「ウェイ・ダウン」や、ラップを絡めるボーカル・ワークが聴きどころの「ノスタルジア」、L.Aのエレポップシンガー・ソングライター=エンプレス・オブとコラボした「レッド・ワイン」など、ダンスホール要素を取り入れたナンバーが、存在感を放っている。

 トロピカル・ハウスとダンスホールが融合した「ビューティフル・レック」、気だるそうに歌う「イマジナリー・フレンド」も、カリビアンな雰囲気漂うダンス・トラック。2ステップっぽい感じの「パープル・ライク・ザ・サマー・レイン」や、エレクトロ・シーンを共に牽引するチャーリーXCXとのデュエット「イフ・イッツ・オーバー」などのアップも秀逸。後者は、チャーリー“寄り”のドリーム・ポップで、声の重なりもまったく違和感なく、両者の相性の良さが伺える。

 今年の夏に来日した、オーストラリア出身のエレクトロ・ソロユニット=ホワット・ソー・ノットとのコラボ曲「マーシー」は、フロア向けの曲ではなく、聴かせるタイプのバラード。機械的な声の印象が強いムーだが、実は歌唱力もあるということを、この曲で証明した。 哀愁系ミッド・チューン「ブラー」や、大量の音を用いず、シンプルに仕上げた「トライング・トゥ・ビー・グッド」といったスロウ~バラードもいい曲が揃っている。

 2016年は<SUMMER SONIC>に出演し、2017年は水曜日のカンパネラが出演したことも話題となった来日公演も大盛況を収めたムー。本作をひっさげて、また日本ですばらしいパフォーマンスを披露してくれることも期待したい。新作『フォーエバー・ネバーランド』には、ライブで盛り上がりそうなナンバーも多数収録されている。


Text: 本家 一成

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