2018/06/07
可憐な歌声とネオソウル、フォーク、ジャズなどの要素を独自の感覚でブレンドした音楽性で、2006年のデビュー以降に世界中の音楽ファンを魅了してきたコリーヌ・ベイリー・レイ。一昨年に6年ぶりにリリースした3rdアルバム『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』では最新のR&Bサウンドに接近し、エリカ・バドゥやキングと共振するような新境地を示した彼女が、ビルボードライブ大阪に初登場。これまでの来日公演とは異なるインティメイトな音空間で繰り広げたステージは、削ぎ落とされた必要最小限のバッキングで新旧の代表曲を奏で、シンガー/ソングライターとしての求心力の高さを心地よくも濃密に浮き彫りにしてみせた、忘れがたい余韻を残す夜となった。
照明が落ちるとともにエレキ・ギター奏者とキーボード奏者の2人だけが登場し、続いてベルベット素材の濃い赤紫色の衣装をシンプルに着こなしたコリーヌがボーカル・マイクの前に現れると、幕開けは2ndアルバム収録の「Closer」を。リズム・セクション不在の編成ながら、逆にギタリストの巧みなカッティングや歌声に含まれた70年代のニューソウルへの敬愛に満ちたエッセンスが濃密に際立ち、安直なアコースティック・セットなどとは異なるスリリングさと高揚感を孕んだアンサンブルで聴く者を一気に引きつけた。続いてコリーヌもギターを手にして1stアルバムからの曲を2曲披露した後には、スピリチュアル・ジャズ調の幻想的なキーボードの前奏から、ギターを置いて手にしたチャイムを効果的に鳴らしながら最新作に収録された「Green Aphrodisiac」へ。曲の中盤から徐々にグルーヴ感を高め、客席にフィンガー・スナップとシンガロングを求めると観客もそれに応え、場内に響く合唱をバックにステージ上を左右に歩きながらオフマイクで歌い続けて一体感を高めていった。
中盤には"私のお気に入りのチャカ・カーンの曲を"と、初期のメアリー・J・ブライジもカバーした名曲「Sweet Thing」も取り上げて、最新作に顕著だった70年代メロウ・ソウルへのリスペクトもしっかりと表現すると、後半はロック色の強いギターを鳴らしながらの「Paris Nights/New York Mornings」からより変化に富んだ展開へ。キャッチーなメロディを持った「Trouble Sleeping」や「Put Your Records On」といった1stアルバム収録の人気曲も、手拍子やタンバリンも鳴らしながら変則的なトリオ編成で巧みにこなして盛り上げると、本編のラストは再びしっとりとした曲調に戻って「Like A Star」を。
アンコールでは"初めて演奏する曲"と前置きした後に、最新アルバムに収録された叙情的なバラード調の佳曲も披露して、今回ならではのスペシャルなセットで締めくくった。彼女と同じくカリビアン系の英国人ソウル・シンガーとして独自の音楽性を示したリンダ・ルイスが70年代に残した名作群を彷彿させるような、自由度が高くチャーミングな魅力に溢れた今回のステージは、8日からのビルボードライブ東京でも、改めて彼女の才の深さを印象付ける公演となるだろう。
Photo by Kenju Uyama
Text by Hidefumi Yoshimoto
◎公演情報
【コリーヌ・ベイリー・レイ】
ビルボードライブ大阪
2018年6月6日(水)※終了
ビルボードライブ東京
2018年6月8日(金)~10日(日)
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