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2018/05/11

『ヴォイスノーツ』チャーリー・プース(Album Review)

 チャーリー・プースといえば、多くの人がまず最初に思い浮かべるのが、ウィズ・カリファの「シー・ユー・アゲイン」だった。映画『ワイルド・スピード7 スカイミッション』のサウンドトラックに提供した同曲は、撮影中に交通事故で死去した俳優=ポール・ウォーカーへの追悼シーン効果もあり、米ビルボード・ソング・チャート(HOT100)12週連続の1位をマークし、2015年の年間チャートで3位にランクインするモンスター・ヒットとなった。

 しかし、今はどうだろう。チャーリー・プースと聞いて、真っ先に「あぁ、シー・ユー・アゲインの人ね」と答える人は少なくなった気がする。というのも、その後「マーヴィン・ゲイfeat.メーガン・トレイナー」、「ワン・コール・アウェイ」、「ウィ・ドント・トーク・エニモアfeat.セレーナ・ゴメス」などのヒットを連発し、2016年に全米・全英チャートで最高6位をマークしたデビュー・アルバム『ナイン・トラック・マインド』も、プラチナ認定の大ヒットとなったからだ。

 輝かしいデビュー以降、勢いを落とし人気に陰りが見え始めるアーティストは数知れないが、2017年にリリースしたマイナー調のダンス・ポップ「アテンション」が、自身のシングルとしては最高の5位を記録、ファルセットを生かしたフュージョン・テイストの「ハウ・ロング」も、イギリスやベルギーでTOP10入りし、評論家からの評価も上々。チャーリー・プースは、1枚で消えていく“作られたアーティスト”ではないことを証明した。

 前作は、タイトルにも起用されたマーヴィン・ゲイや、自身が所属する<アトランティック・レコード>のソウル・シンガーを彷彿させる、70年代風のレトロなナンバーが中心のアルバムだったが、本作では、ジミー・ジャム&テリー・ルイス、テディ・ライリー、ベイビーフェイスといった、80年代後半~90年前期を代表するトラック・メイカーに影響を受けたと話している。確かに、リリース直前に発売したケラー二とのコラボ・ソング「ダン・フォー・ミー」や、ニュージャック時代を彷彿させる「ボーイ」あたり、その色が濃く出ている気も。

 その他にも、キャッチーなメロディの軽快なダンス・トラック「ザ・ウェイ・アイ・アム」や、ファンクやディスコをベースにした「スロウ・イット・ダウン」、ブルーノ・マーズの『24K・マジック』を意識したような「LA ガールズ」、バブル期の冷涼メロウっぽい「ペイシェント」など、80年代R&Bを今っぽくリメイクしたナンバーが目立つ。

 アップも完成度高いが、流行関係なく受け継がれるミディアム~スロウは、情感豊かなチャーリーのボーカルが見事に絡みあった、文句のつけようがない傑作。ジェイムス・テイラーをゲストに迎えた「チェンジ」は、アコースティック・ギターとピアノでシンプルに仕上げた心に響く良い曲だし、ボーイズIIメンがバック・コーラスとデュエット・パートナーを務めたア・カペラ「イフ・ユー・リーヴ・ミー・ナウ」と、ラストを締めくくる壮大なゴスペル・バラード「スルー・イット・オール」なんかは、ただひたすら、聴き入るしかない素晴らしさ。

 何より、ゾクっとさせる低音から、天まで届きそうなファルセットまで、どの音階でもパーフェクトなチャーリー・プースのボーカル・ワークに感服する。カルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」風の、ちょっとキツめ(?)な「サムバディ・トールド・ミー」でさえ、彼にかかればスタイリッシュで都会的。まさに、『ヴォイスノーツ』と呼ぶべくアルバムだ。

 1991年生まれ、米ニュージャージー州出身。経由は違うが、ジャスティン・ビーバーやオースティン・マホーンと同様に、YouTube動画がキッカケでデビューを果たした。そんなシンデレラ・ボーイも、昨年の12月で26歳のバースデーを迎え、アラサー男子となる。前作までは王子様のようなビジュアルだったが、本作では楽曲のみならず、ジャケットやミュージック・ビデオで披露した容姿までも、色気漂わす色男になった気がする。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ヴォイスノーツ』
チャーリー・プース
2018/5/11 RELEASE
2,376円(tax incl.)

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