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2018/04/23 15:25

ACID ANDROID“yukihiro”が“yukihiro”を使いその世界観を表現! 2018年初ライブのレポート到着

 L'Arc~en~CielのドラマーyukihiroのソロプロジェクトACID ANDROIDが、2018年4月20日にに渋谷WWW Xにて【ACID ANDROID LIVE 2018 #1】の東京公演を開催。このオフィシャルレポートが到着した。

 【ACID ANDROID LIVE 2018 #1】と題された2018年最初のライヴ。配信先行で発表されていたアルバム『GARDEN』が、ニュー・ミックスを加え2枚組CDとしてリリースされ、そのレコ発ライヴという位置づけである。会場は東京・渋谷のWWW Xである。昨年に続き2度目の同会場でのライヴだが、私はこの会場でACID ANDROIDを見るのは初めてだ。People In The Boxの山口大吾がドラムス、THE NOVEMBERSの小林祐介がギター、そしてyukihiroがヴォーカルという、ここ最近ではお馴染みの布陣である。

 一聴して気づくのは音の良さ。WWW Xの木の床を伝って重低音が地鳴りのようにカラダを揺らしマッサージしていく。yukihiroによれば、前回WWW Xでやった時に、ローが膨らみがちな同会場の音響特性を把握し、それを念頭に入れて音を作っていったという。

 音はクリアで各楽器の分離も抜群。それでいて少しも耳触りでない。なのでアレンジのディテールが手に取るようにわかる。予め打ち込まれたギターの音に小林が、丁寧な手つきで音を重ねていく。小林は完全に黒衣の役割に徹していて、ヴィジュアル面でも演奏面でも決して悪目立ちはしない。だが彼のプレイが、この音数の少ないストイックなユニットのサウンドに、非常にデリケートで細やかな変化をつけていくのが、この音響だとよくわかるのである。それは山口のドラム・プレイも同じで、手堅いが躍動的なプレイでダナミックなグルーヴをバンドにもたらしているのが体感できる。山口のTwitterによれば「今日は少し邪念が入っていた」ということだが、もちん客席で聞いている分にはまったくわからない。

 そして主役のyukihiroである。だがこの日のライヴを見て、はたして「ACID ANDROIDのライヴの主役はyukihiroである」と言い切っていいのかどうか、少し自信がなくなってきた。もちろんACID ANDROIDの楽曲はすべてyukihiroが作っているし、そのサウンドもパフォーマンスも、すべての世界は彼の管理下にある。その意味ではACID ANDROIDの主役はもちろんyukihiroである。

 だが僕からすれば、ACID ANDROIDのライヴの主役は、「ACID ANDROIDという世界観」なのであって、決してyukihiro個人ではないと思うのだ。ACID ANDROIDというクールでモダンでフューチャリスティックな世界観がしっかりとあって、その中ではyukihiroという個人は、小林祐介や山口大吾同様に、世界を構成するピースのひとつに過ぎないとでもいおうか。

 今回のACID ANDROIDのライヴは映像がないぶん、非常に細やかで丁寧な照明による明暗のグラデーションで世界を作っていくが、決してフロントマンであるyukihiro個人をシンボリックに際立たせるようなものではない。そしてyukihiroはこの日も一言もステージ上で喋らなかった。細身のカラダを躍動させながらクールなヴォーカルを披露してはいたが、yukihiroという個人のキャラクターを強調するような振る舞いは一切見せなかったのである。観客に共感と共有を求め親しみを抱かせることがライヴ盛り上がりの必須条件みたいになっている現状(だからこそ、巷の多くのライヴの予定調和的・画一的盛り上がりにはうんざりさせられる)では異例というしかない。つまりyukihiro個人のキャラクターや存在を強調することは、ACID ANDROIDの世界観を表す際には不要であると、ほかならぬyukihiro本人が判断しているのだと思う。つまりyukihiroというプロデューサー/アーティストが、yukihiroという個性的なヴォーカリスト/パフォーマーをコマとして使い、ACID ANDROIDの世界観をステージ上で完璧に表現してみせた。そう僕には見えたのである。

 もちろん非常に寡黙で謙虚なyukihiroの性格が、そうしたステージ上での振る舞いや表現にまったく関係がないとは言えないだろう。クリアで見晴らしのいい、過去最高とも思える会場の音響で、万全の状態のACID ANDROIDのライヴを堪能したことで、このバンド(ユニット)の、非常に特異なあり方のようなものを再認識したことは確かだった。

 コンサートはMCもなく淡々と進行し、アンコールもなく1時間半弱で終了。いつものことだが、物足りなさなど一切ない。僕は非常に堪能した。終了後の観客の表情も、どこか満ち足りていたように見えたのは、僕の思い込みだけではないと思う。

PHOTO:岡田貴之
TEXT:小野島大

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