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2018/04/19 12:00

「ナイス・フォー・ホワット」ドレイク(Song Review)

 米ビルボード・アルバム・チャートで通算12週の首位を記録した『ヴューズ』(2016年4月)から2年振り、5作目のスタジオ・アルバム『スコーピオン』を2018年6月にリリースすると発表したドレイク。本作からの先行シングルとしてサプライズ・リリースした「ナイス・フォー・ホワット」は、発売翌週に早速米ビルボード・ソング・チャート(HOT100)初登場1位に輝いた。

 制作/プロデュースは、『ヴューズ』収録の「ウィズ・ユー」や、前作『モア・ライフ』の「ポートランド」等を担当したマーダー・ビーツ、前曲「ゴッズ・プラン」を手掛けた同郷トロントの音楽プロデューサー=ノア“40”シェビブが担当。

 同曲には、ローリン・ヒルの「エックス・ファクター」がサンプリングされていて、メインフレーズの“Care for me, care for me I know you care for me~”にドレイクが巧みなラップを重ねる。原曲の早回しやラップの手法含め、初期のカニエ・ウェストを彷彿させる。ちなみに、このボーカルを担当したのは、ビヨンセのヒット曲「フォーメーション」(2016年)のミュージック・ビデオの参加で注目された、“バウンスの女王”ことビッグ・フリーダ。

 「ナイス・フォー・ホワット」と同じタイミングでリリースされた、フィーメール・ラッパー=カーディ・Bの新曲「ビー・ケアフル」にも使用されたことから、サンプリング・ソースである「エックス・ファクター」も再燃している。この曲が収録されたローリン・ヒルのソロ・デビュー作『ミスエデュケーション』は発売から20周年を迎え、アルバムの記念ツアーを開催すると先日発表されたばかり。以前は「ドゥー・ワップ」をサンプリングしたこともあり、このタイミングで使ったのは彼女へのリスペクトか。

 ドレイク節全開の歌モノ「ホットライン・ブリング」(2015年)とも、「ワン・ダンス」(2016年)や「パッションフルーツ」(2017年)といったトロピカル・チューンとも違う、2000年代初めのバウンス的要素を含む「ナイス・フォー・ホワット」。ドレイクがリスナーに飽きられないのは、サウンドやラップ(ボーカル)が常に進化し続けるからだろう。音楽評論家も、「サンプリングが上手く使われている」、「女性へのアプローチも完璧」などと絶賛。ローリンの名曲が使われていることもあり、馴染み難い日本の女性リスナーも聴きやすいトラックに仕上がっている。

 発売同日に公開されたミュージック・ビデオも面白い。子役時代から活躍するヤラ・シャヒディや、コメディアンとしても高い人気を誇るティファニー・ハディッシュ、人気ドラマ『インセキュア』でブレイクしたイッサ・レイなどの女優が出演し、様々なシーンで活躍する女性に焦点を当てている。ドレイクはあくまで“サブ”という、控え目な姿勢にも好感が持てるし、計算高いともいえる展開・完成度の高さには感服する。

 この曲の2か月前にリリースした「ゴッズ・プラン」は、「ナイス・フォー・ホワット」が初登場1位にデビューする前週まで通算11週の首位マークし、ワン・ツー・フィニッシュを飾った。初登場の楽曲による首位の入れ替わりは歴代初で、その他にも25曲目のTOP10入りを果たし男性ソロ・アーティストでは歴代4位に輝くなどの快挙を達成しているドレイク。衰え知らずのこの人気に、カニエやジェイ・Zも(セールス面では)敵わない。まさに、キング・オブ・ヒップホップ!


Text: 本家 一成

◎リリース情報
「ナイス・フォー・ホワット」
ドレイク
2018/4/6 RELEASE

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