2018/04/13
豊かな森が多様な木々から創られるように、多種多様な人が集まるからこそ、素晴らしい文化や音楽が生まれていく。スピッツ、sumika、SUNNY CAR WASHが創造した“音楽の森”も、それは青々と美しく生い茂り、人々の心に大きな感動をもたらした。
2018年4月9日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催された【TOKYO FM&JFN present EARTH×HEART LIVE 2018】。第1回の開催から29年目を迎えたライブイベントで、ステージの合間には進行役として『SCHOOL OF LOCK!』の“とーやま校長”こと遠山大輔(グランジ)と、フリーアナウンサーの高橋万里恵が登場。オーディエンスと共に「性別も年齢も人種も民族も越えて、みんなが活躍する豊かな世界」を森づくりから学び、今年のテーマ「ROCK THE FOREST」への造詣を深めていった。
●SUNNY CAR WASH「この星が、この地球が、ずっと元気でいられますように」
オープニングアクトとして登場したSUNNY CAR WASHは、【未確認フェスティバル2017】で審査員特別賞を受賞した平均年齢19.6歳のスリーピースバンド。登場するや否や、岩崎優也(vo,g)、羽根田剛(b)、畝狹怜汰(dr)は拳を合わせて気合を入れ、まずは<故郷へは緑を>と歌うイベントのテーマにもふさわしい「それだけ」を披露。ほとんどの楽曲が約3分というコンパクトサイズながら、芯のあるサウンドとメッセージ性の強いリリックで人々の心を揺さぶっていき、ラストは「この星が、この地球が、ずっと元気でいられますように」という岩崎の言葉から、心地よいメロディラインの際立つ「ティーンエイジブルース」を。ほろ苦くも瑞々しい風を吹かせ、メインアクトにバトンを繋いでいった。
●sumika「一ミリの嘘もなく、僕は感動してます」
続いての登場は、今一際注目を集めるsumika。バンドの頭文字「s」を象るライティングがくるくると回る中、片岡健太(vo,g)、黒田隼之介(g,cho)、荒井智之(dr,cho)、小川貴之(key,cho)は、流れていたSEをぶった切るようにポップナンバー「MAGIC」でパフォーマンスをスタートさせる。巧みに展開するリズミカルな楽曲群に加え、カラフルに染まるステージや楽しそうに演奏するメンバーの姿もフロアの熱を煽り、瞬く間にパーティ会場さながらの盛り上がりである。
最初のMCでは、「昨日の夜、僕のハートが高ぶりすぎて、一睡も出来ませんでした」とはにかむ片岡。さらに、すし詰め状態になっているオーディエンスを気遣いつつ、「元気が出る呪文がなんかあった気がするなあ。なんだっけなあ。せーの「ふっかつのじゅもん」!」と、間髪入れずにそのイントロをかき鳴らす。思わず口ずさみたくなるメロディラインと楽器の掛け合い、全員が一緒になって楽しめる定番の合いの手など、sumikaの魅力が詰まった名曲だ。メンバーもオーディエンスも満面の笑みを浮かべて体を揺らし続け、終盤に片岡はこんなジョークを飛ばしてみせる。「早いもので、残りあと36曲になりました。この計算になると、スピッツが出てくるのはだいたい25時……嫌だね(笑)。俺もスピッツ観たい」
昨年はスピッツ結成30周年に関する特別番組にもコメントを寄せるなど、スピッツには大きな影響を受けている片岡。2015年には体調不良で活動休止になるなど苦難もあったが、そこには「今日、2018年4月9日、一ミリの嘘もなく、僕は感動してます」と、心から嬉しそうに語る姿があった。ラストには、復帰後初音源となった両A面シングルの一曲であり、先ほど演奏された「Lovers」と対になる「伝言歌」を演奏。サビで歌われる<伝えたい 全部あなたに>という想いは、その場にいた全員にしっかり伝わったことだろう。
●スピッツ「古い芯だってちゃんと描けるんだぞっていう」
人々が期待に胸を膨らます中で流れ出したのは、自身の楽曲「SUGINAMI MELODY」のストリングスアレンジ。ここ数年SEとして使用されている音源である。そして、スピッツが姿を現すと大歓声が上がり、この季節を彩る「春の歌」でステージは幕を開ける。近年は武道館やアリーナなどでもライブを行うことが増えたスピッツだが、現在も比較的小さな箱での活動が精力的であり、この日のZepp DiverCity(TOKYO)でも、草野マサムネ(vo,g)、三輪テツヤ(g)、田村明浩(b)、崎山龍男(dr)、サポートメンバーであるクジヒロコ(key)の織り成す重厚なバンドサウンドが際立った。
いつものように田村がベースを振り回す「8823」など、序盤はライブの定番曲を中心に演奏し、甘酸っぱいポップナンバー「初恋クレイジー」では草野がハーモニカを吹く。これが上手くいかなかったと本人は笑いつつ、この日の意気込みをロケットペンシルを例に語り出した。「SUNNY CAR WASHっていう新しい芯が入ってきて、sumikaっていう新しい芯が入ってきて、スピッツという古い芯がポロっと落ちるような。でも古い芯だってちゃんと描けるんだぞっていう、そんな気持ちで頑張って最後まで演奏します」。相変わらずの謙虚さであるが、いわずと知れた名曲「チェリー」から、長く軽快なイントロとスキャットが特徴の「ウサギのバイク」など、色とりどりのナンバーで人々の胸を打っていく。
ここでイベントに沿った話題をと、「森に生かされてるんだよね、きっとね」と草野が呟けば、すかさず「生かされてるよ!」と口を挟む三輪。さらには独自のエコトークなども繰り広げ、田村が「さわって・変わって」の野太いビートを刻めばオーディエンスは大喜び。草野の伸びやかな歌声は皆の知る通りだが、ロックナンバー「トンガリ'95」では三輪のギターソロが光り、演奏後には崎山が激しいドラムソロを展開するなど、ライブで観られるのはパブリックイメージとは少し違った本来の力強い姿である。なお、スピッツは既存曲を幅広く披露してくれるバンドでもあるが、この日はファンも驚きのレア曲が。先ほどの「ウサギのバイク」もさることながら、アンコール一曲目の「仲良し」は、草野曰く「15年ぶりくらい」とのこと。この楽曲をフェイバリットソングとして挙げたこともあるsumikaの片岡は、イベント後に自身のTwitterにてその感動を綴っていたほどである。
そして、ラスト一曲を前に、草野はアンプ内蔵型のギターZO-3をステージへ。TOKYO FM/JFNで放送されている自身の番組『ロック大陸漫遊記』で使用しているものだが、ステージで鳴らし「ここで出すと音ちっちぇーのな!」と驚きつつメンバー紹介。パフォーマンスを彼らのロックとシュールが詰まった「Na・de・Na・de ボーイ」で締めくくり、光と熱気に溢れるステージをあとにした。
なお、このイベントはTOKYO FMをはじめとするJFN38局により、毎年「アースデー」である4月22日に世界に向けて放送されているが、今年も同日19時より放送される。
※崎山龍男:正式表記は「崎」が立つ崎(たつさき)。
TEXT:佐藤悠香
◎セットリスト
【TOKYO FM&JFN present EARTH×HEART LIVE 2018】
2018年4月9日(月)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
▼SUNNY CAR WASH
01.それだけ
02.ラブソング
03.カーステレオ
04.キルミー
05. ティーンエイジブルース
▼sumika
01.MAGIC
02.Lovers
03.ふっかつのじゅもん
04.Summer Vacation
05.「伝言歌」
▼スピッツ
01.春の歌
02.醒めない
03.8823
04.初恋クレイジー
05.チェリー
06.愛のことば
07.ウサギのバイク
08.さわって・変わって
09.スパイダー
10.トンガリ'95
EN1. 仲良し
EN2. Na・de・Na・de ボーイ
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