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2018/03/31

『ザ・ワールド・イズ・ユアーズ』リッチ・ザ・キッド(Album Review)

 【ブリット・アワード2018】でリリースを発表した、リッチ・ザ・キッド初のスタジオ・アルバム『ザ・ワールド・イズ・ユアーズ』が遂に完成。本作からは、2ndシングルとして発売1か月前にリリースされた「プラグ・ウォーク」が全米ソング・チャート(HOT100)で23位、R&B/ラップ・チャートでは14位まで上昇、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした1stシングル「ニュー・フリーザー」もスマッシュ・ヒットを記録している。

 ケンドリック・ラマーの他、フューチャーやミーゴス、スワエ・リーといった現在のヒップホップ・シーンを代表する面々から、米オハイオ州出身の期待の新星=トリッピー・レッド~リックロスやリル・ウェインといった、新旧織り交ぜたラッパー達が参加している。プロデュースは、DJマスタードやメトロ・ブーミン、ハリー・フロード、Tマイナスなどの売れっ子を中心に、無名のアーティストまで幅広く起用。当然、リッチ・ザ・キッド自身も全曲制作に携わっている。

 前述の「ニュー・フリーザー」や「リッスン・アップ」は、 ケンドリック・ラマーの『DAMN.』を意識したような作りで、トラップからの脱却を伺わせる。オフセットとクエヴォが参加したミーゴスまんまの「ロスト・イット」 や、不気味なバックサウンドが響く「ノー・クエスチョン」 など、スタンダードなトラップもあるが、前者の方が圧倒的にいい。リル・ウェインっぽいチキチキ系の「エンド・オブ・ディスカッション」や、ゲーム・ミュージックのような 「アーリー・モーニング・トラッピン」 あたりのユニークなトラップは、 面白いけど若干お粗末。

 リッチ・ザ・キッドが愛聴していたという、90年代に回帰したような横ノリ の「プラグ・ウォーク」や「スモール・シングス」、 ドラム・ベースだけでラップする冒頭に相応しい 「ワールド・イズ・ユアーズ」 あたりは絶品。男臭さが濃密に漂う 「ガーゴイル」や、ズッシリ腹に響く 「デッド・フレンズ」などのヘヴィなナンバーもかっこいい。 カリードが雄々しくラップとボーカルを絡ませる 「メイド・イット」と、ポップさを取っ払った クリス・ブラウンの ボーカルが映える 「ドリッピン」 は、アーティスト本来の良さがフィーチャーされていて、聴き応え抜群。

 NYクイーンズ生まれ、アトランタ出身。ナズやジェイ・Zといった90年代を代表するラッパーを愛聴し、どんな音楽も好きなら受け入れ、嫌いなら聴かなければいいという、芯の強さを武器に人気を博している、リッチ・ザ・キッド。ディスられてもサラっと受け流せる許容の広さも、他の若手とはひと味違う。ちなみに、この若さで既に妻も子供もいるとか……。才能、人間性含め、今後に大きな期待がもてそうなアーティストである。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ザ・ワールド・イズ・ユアーズ』
リッチ・ザ・キッド
2018/3/30 RELEASE

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