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2018/03/28

【K STORM】“飾らないリアル”をラップするシンガーソングライター、Heize(ヘイズ)躍進の理由…日韓音楽コミュニケーター筧真帆が韓国音楽の新鋭を紹介

 “K-POP”のメインストリームとは一歩離れた地点から、音楽シーンを更新する、韓国音楽の新たな才能を紹介する連載企画【K STORM】。HYUKOH(ヒョゴ/第一回)、DEAN(ディーン/第二回)に続き、第三回では女性ラッパー/シンガーのHeize(ヘイズ)を紹介する。

【K STORM】バンド音楽で異例の躍進を遂げたHYUKOH(ヒョゴ)とは?
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/59251

【K STORM】韓国と世界をコネクトするR&B界の若き異才、DEAN(ディーン)の視線
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/60300

 この3月に、4thミニアルバム『風(Wind)』をリリースしたばかりのHeize。その音楽的な特徴は、ポップでメロウな曲も多い中、シンガーソングライターとしての内省的な世界観も大切にしているということだろう。ラッパーというと、パーティー向けのダンス・チューンが主戦場になる場面も多いが、むしろHeizeの曲にはセンチメンタルな感触を残すものが多い。詳しくは下記の本文に譲るが、こうした絶妙な表現を得意とするアーティストがヒットを記録しているということは、その国のシーンにラップ・ミュージックが深く根付いていることの証明でもあるだろう。

 今回も取材と文章は、日韓音楽コミュニケーターの筧真帆氏。本人の発言は、全て筆者の取材によるものとなる。柔らかにラップ表現の可能性を模索するHeizeの才能に、ぜひ注目して欲しい。(以下、文:筧 真帆)

〈“飾らない自分”をラップで表現するSSW、Heize(ヘイズ)が躍進する理由〉

 お洒落Tシャツにキャップ姿のラフないで立ちで現れたHeize(ヘイズ/26歳)は、イントネーションの強い韓国南部の方言で、感情豊かに自身の想いを喋り始めた。
「私の音楽はすべて私の話。私の音楽と私自身に、距離感が無ければうれしい」
今月8日にリリースした4thミニアルバム『風(Wind)』は、国内主要配信サイトの1つBUGSのアルバムチャートで3週連続首位を独走中だ。女性ラッパーでシンガーソングライターのHeizeは、独自の道で成功を見せている。

「Jenga」(Feat.Gaeko) <4thミニアルバム『風(Wind)』より>
https://youtu.be/uw_HR9jIJww

 韓国の第三都市の大邱(テグ)市で生まれ、小学生の頃はチェロとピアノを習うクラシック好きだった。ヒップホップに目覚めたのは、中3のときに聴いた韓国男性ヒップホップ・デュオ、Free Styleの「そしてその後」だった。
「ピアノのメロディアスな旋律に、心地よいラップが乗った素敵な曲。それまで怖い印象しか無かったヒップホップの認識が変わって、この曲が私の音楽カラーを築いてくれた」
ドレイク、ジェイ・コール、m-floなどの海外ヒップホップから、シン・スンフンなど国内のバラード音楽も好んで聴いた。高校生から家でひとり歌詞や歌も作るようになり、大学は釜山の経営学科に進学しつつも、趣味の音楽作りに没頭。講義中にこっそり歌詞を書いていたところ、教授にばれて呼び出されることに。
「怒られる覚悟で曲作りが趣味だと話したら、“勉強は年をとっても出来るけれど、音楽はまた後で始めることは難しい。今やるべきだ”と言われて。教授の一言で音楽を本格的にやろうと決心した。それが大学2年の春。けっこう遅いでしょ」

 ところが父親に反対されたことから、猛勉強をして“主席”という結果を出し、大学を休学してソウルへ上京。バイトを掛け持ちしながら全て自費で、デジタル音源を発表した。1年後には大学へ復学したものの音楽を諦めきれず、再び1年間ソウルへ。両親に「最後のチャンス」と言われたが思うように結果が出せず、帰郷を決めたところへ人生の転機が訪れた。
 現在の韓国ヒップホップブームの火付け役となった、ラッパーたちのバトル型オーディション番組『SHOW ME THE MONEY』の女性版『Unpretty Rapstar2』の出演が決まった。攻撃的なラップが目立つ中で、自身の話を流れるようなフロウに乗せるラップや、着飾らない性格も支持されて、セミファイナルまで上り詰めた。
「音楽をあきらめて地元に帰ろうと思っていたから失うものが無かった。全力でやりたいことをやったら…まさか、こんなに上手く行くなんて」
2016年の春に発表した、メロウ・ヒップホップの「帰ってこないで」(feat. ヨン・ジュンヒョン of BEAST)は日を重ねるごとにチャートの順位を上げ、1年2カ月後に1億ストリーミング超え。シングル「あの星」は発表直後に各配信チャートで初の1位独占、3rdミニアルバム『///(あなた 暗雲 雨)』は、リード曲の「Don't know you」と「rainin' with u」2曲ともに首位を獲得。デジタルシーンで結果を残すHeizeは“音源クィーン”と称されるようになる。

「Don't know you」<3rdミニアルバム『///(あなた 暗雲 雨)』より>
https://youtu.be/vvkWaI91mLM

「会話のようにラップをする、歌とラップの間の音楽が好き。高校のときから日記がわりに歌詞を書いていたから、私の歌詞はカッコつけたりしない自分に正直な話。メロディはたくさん録りだめている中から、時間が経ってもしっかり記憶しているメロディを完成させてゆく。ラップやヒップホップにこだわらず、歌詞に合うメロディを作る。そんな私の音楽に、多くの人が共感してくれていることが幸せ」
現在の韓国音楽界では、ダンスグループのメンバーがソロとしても活躍するケースが多く、女性シンガーソングライターで人気を確立するケースは多くない。テレビに大量露出するアイドルよりも、デジタルシーンで上位をゆく“音源キラー”達の躍進が見られるのが、先月紹介したDEANをはじめ最近のチャート傾向のひとつだ。

 ちなみに昨年初頭にテレビ朝日の音楽番組『関ジャム~完全燃SHOW』の中で、日本人DJのtofubeatsが選ぶ「2016年のベスト10」の1曲として、Heizeの「Shut Up & Groove」を紹介していたことを伝えると、目を輝かせて答えた。
「私の音楽って日本で好まれるスタイルなのかな?多くは無いけど韓国まで見に来てくれる日本人のファンがいるので、その人たちが苦労せず私の音楽に触れられるように、日本へ行くチャンスを増やしたい」

「Shut Up & Groove」(Feat.DEAN)
https://bit.ly/1Y9RjBN

文:日韓音楽コミュニケーター 筧 真帆


◎Heizeバイオグラフィー
1991年、韓国大邱(テグ)市生まれ。本名チャン・ダへ。アーティスト名のHeize(ヘイズ)は、アメリカの女性ラッパーAngel hazeの名前にあやかり、発音はそのままに表記を変えて命名した。2014年1月デジタルシングル「もう少しさまよって」でデビュー。2015年秋に『Unpretty Rapstar2』に出演しブレイク、番組が放送されたm.netの親会社CJ E&Mとマネジメント契約。EXOのチェン、現HIGHLIGHT(コラボ時はBEAST)のヨン・ジュンヒョン、DEAN、ダイナミックデュオのGaekoなど多彩な人気アーティストとのコラボ曲多数。2018年4月13・14・15日開催のK-Cultureフェスティバル『KCON 2018 JAPAN』に参加が決定している。

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