2017/11/01
2017年4月29日、「今秋のコンサートツアーをもってモーニング娘。'17及びハロー!プロジェクトを卒業する」と発表した工藤遥。モーニング娘。が20周年を迎えた年に旅立ちを決めた彼女は、この決断に至るまでどんな想いを胸に活動していたのだろうか。
<「LOVEマシーン」発売後に生まれた女の子の黒歴史!?>
工藤遥は、1999年10月27日に埼玉県で誕生。モーニング娘。の代表曲「LOVEマシーン」リリース後に生まれた女の子であるが、2010年に「昔からモーニング娘。が好きで応援していて。お父さんとお母さんがファンで、その影響で好きになったんです。で、歌手を目指したいと突然思うようになって、ハロー!プロジェクトにモーニング娘。が所属していることを知って、オーディションを受けたんですよ。でも緊張して自分のことを全然アピールできなくて。ただ、私は何の力を持っているか分からないんですけど「無理だな」って思うと、意外と受かってるんですよ」との理由と経緯でハロプロエッグに加入。
そして、同年8月の【モーニング娘。9期メンバーオーディション】に落選するも、翌年【モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション】に合格し、本人いわく「みんな、2年、3年、4年とエッグで活動してからデビューなんですよ。でも私は入って1年ぐらいだし、エッグの中でも一番下だったし、経験も浅いし、モーニング娘。に入ることが決まってすぐは「いいのかな?」って思ったりしたんですけど、選ばれたからにはしっかりやらなきゃ」と小学6年生という幼さでモーニング娘。の新時代を築いていく一員となった。加入当初の印象は小6と思えない分析力に加え、とにかく怖いもの知らずな自信に満ち溢れており、時には先輩相手に説教を始めることも。
「【ステーシーズ】のときにふくちゃん(譜久村聖/9期)から「9期、10期の間でいろいろあるんですけど、私もどうしていいか分かんないです」って相談されたので、「みんなで話し合おう」ってみんなを集めたんですよ。それで「10期は先輩の9期にいろいろ言いづらいだろうから、この話し合いの場では先輩後輩なしで喋ろう」って言ったら、10期が責めまくるんですよ! それが最高で! もう9期はタジタジ。工藤は「つーか、ここはこうで、あそこはああじゃないといけないと思うんスよ!」みたいな。立ち振る舞いも凄くて、座り方なんてお父さん座りなんですよ! もう笑いを堪えるのが大変で。」(モーニング娘。6期 田中れいな)
<仲間の為に本気で泣ける、本気で怒れる、本気で笑えるメンバー>
工藤本人はこの時代のことを「黒歴史」と称しているが、この生意気さこそが当時の工藤遥の持ち味であり、もっと言えば9期と10期の壁を壊した要因でもある。今現在のモーニング娘。は、それまでのタテ社会イメージに比べると対等な人間関係を自然と重んじるグループへと移行しており、その基盤はこの時期に出来上がっていたと言っても過言ではないだろう。そして、その変化は工藤遥自身の人格も大きく成長させていった。新人教育係に任命されるほどの面倒見の良さ(これは工藤に甘えたがる同期のまーちゃん(佐藤優樹)によって育まれた部分もあると思うが)や、バラエティ番組で理不尽なゲームをやらされて「真面目にお仕事してるのに!」と泣きながら怒り出したエピソードでも知られる仕事への真面目さ、そして何よりも周りのメンバーを気遣える心=やさしさ。
工藤のやさしさを物語るエピソードは数多く存在するが、その中でもファンの心に強く焼き付いているであろう感涙エピソードをひとつ挙げると、田中れいな卒業ツアーとなった【モーニング娘。コンサートツアー2013春 ミチシゲ☆イレブンSOUL】の座間公演。体調不調で一時離脱することになった田中の代役を本番中に石田亜佑美(10期)が急遽務めることになった際、その背中へステージ袖から何度も「あゆみん頑張れ! あゆみん頑張れ!」と工藤は全力で叫び続けていた。こんなことを書くと本人は「褒めすぎですよ!」と恥ずかしがりそうだが、余裕のなさや夢を叶えたい気持ちの強さゆえ誰もが自分のことばかり考えてしまいがちなアイドルという仕事において、工藤は自分のことより仲間の為に本気で泣ける、本気で怒れる、本気で笑える、本気で応援できる稀有なメンバーだ。
工藤には女性ファンが多い。ハロー!プロジェクトの中にも彼女を慕うアイドルは後を絶たない。その理由は【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-】で演じたファルスなど役どころのイメージから築き上げられたイケメンキャラによるところも大きいと思うが、最大の要因はやはりこの他者を思いやれるハートと言える。
<「アイドルでしか見せられない姿ってあると思うんです」>
そして、ここまで記してきた性格がすべて反映されたパフォーマンス。圧倒的な歌唱力やダンススキルを持つ者をはじめ、多種多様に優れた能力を持つメンバーばかりのモーニング娘。において、工藤遥の特性を挙げるならやはり数々の舞台で見せてきた演技力になるだろうし、ゆえに彼女も卒業後は女優の道へと歩んでいく決意をしたのだと思うが、工藤遥はパフォーマーとしてもアイドルシーントップクラスの実力派であった。歌もダンスもメインパフォーマンスは他のメンバーに譲ることが多かったものの、どんな環境や構成であっても自分の立ち位置=役どころを完璧に見極め、モーニング娘。のステージを「個性のぶつかり合いの総合芸術」と言えるまでの次元へと高めたバランサー=立役者になっていたことは間違いない。これは彼女が仲間を気遣える心=やさしさの持ち主でありながら、役者としての才能を誰よりも開花させた者だからこそ。
そんな工藤遥に、モーニング娘。'17工藤遥ラスト写真集『Kudo Haruka』発売記念イベントの囲み取材で話を聞くチャンスに恵まれた。「卒業前に10期同士で遊びに行きたいところは?」という問いには「同期とは特に(笑)。いつも一緒にいて、いつも仲が良いので(卒業するからと言って)そんなに「コレ!」っていうのはないかもしれないです」と返答。そして、12月11日 日本武道館にて開催される【モーニング娘。誕生20周年記念コンサートツアー2017秋~We are MORNING MUSUME。~工藤遥卒業スペシャル】をどんな1日にしたいか。この質問には「アイドルでしか見せられない姿ってあると思うんです。女優になるとその役を好きになって頂くことはあっても、工藤遥そのものを好きになって頂く機会は減るかなと思うので、アイドルのうちに素の、そのままの私を好きになって愛して頂けたらなと思いますし、こうして「イケメンだ」とかキャーキャー言ってもらえるのはアイドルのうちだけだと思っているので(笑)、そこは全うしたいと思っています」と答えてくれた。
工藤遥がアイドル=モーニング娘。での活動を全うして卒業するまで、あと40日。この日々が彼女自身にとってはもちろん、モーニング娘。やファンにとって忘れられない特別な期間になることは間違いない。モーニング娘。20周年のタイミングで卒業していくメンバーの生き様、ぜひその目と耳と心に焼き付けてほしいと思う。なお、ビルボードジャパン.comでは、工藤遥への卒業インタビューを近日公開予定。こちらもぜひチェックしてみてほしい。
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada
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