2017/09/20 11:35
30年ぶりのロックンロール・サーカス――。
骨太のリズムと共振するR&Bをベースとした男臭くタフなヴォーカル。毎夜、場末のBARで繰り広げられるソウルフルなライブ・ショウ。まさに、そんな“現場”で鍛え上げられてきた筋肉質のロックンローラー=サウスサイド・ジョニーがジ・アズベリー・ジュークスと共にステージに登場した。
ブルース・スプリングスティーン、スティーヴン・ヴァンザント、ジョン・ボン・ジョヴィといった筋金入りのロックンローラーを輩出している米国・ニュージャージー。その“顔役”とも言える存在がサウスサイド・ジョニーだ。ソウルやR&Bといった黒人音楽にも愛着を示す彼の音楽性は、一筋縄ではいかない圧倒的なパッションとエネルギーに裏打ちされた無敵のアメリカン・ロック。彼らのサウンドには何のギミックもトリックもない。ステージの上での閃きに従いながら本能的に繰り出してくるナンバーは、どこを切っても飛びきりのチューンで溢れている。躍動的で引き締まったヴァイブは、一切のクレームを寄せ付けない確信に満ちているのだ。
87年以来となる再来日。まるで不意打ちを食らったような、突然のインフォメーションに舞い上がったロックンロール・フリークが大挙して押し掛けた今宵。熱い空気が充満したフロアには開演前から異常なテンションが溢れていたけれど、バスドラの音が床を揺らし、ギターがラウドに響いた瞬間から、観客はフル・スロットルで疾走し始めたバンドと一体となり、ゴキゲンな“サーカス会場”のVIPとなる。矢継ぎ早に楽曲が弾き出され、雪崩の如く歓声が広がっていった。
呼び出しの声に促されるようにステージに上がった7人のバンドとサウスサイド。酔いどれのピアノともつれ合いながら、ユーモラスな振る舞いも交え、塩辛い声で「次の酒場への道を教えてくれ…」と歌い掛け、ハーモニカでひしゃげた音をまき散らす。その後ろでホーン・セクションは陽気に踊り、ステージの袖からは気合の入ったスタッフの声が飛び交う。全員が一丸となってのショウには、旧き佳きアメリカの田舎を巡業するサーカス小屋や移動式遊園地の光景が重なる。アップ・ビートのナンバーにはモータウンやスタックスのリズムが躍動し、スロウな曲には哀愁がよぎる。どの曲の後ろにもディープな“物語り”が透けて見えてくるのだ。
強面だけど人懐っこいジュークスは豪華客船をも飲み込む荒海のように豪快なうねりを吐き出し、ダイナミックにグルーヴしていく。決して力業だけではない、懐の深いバンド・サウンドが鳴らされ、その上にサウスサイドのコクのある声が力強く舞う。ステージの上で炸裂しているのは、いささかの迷いもない“確信の音”だ。
観客をステージに上げて“ヒーロー”に仕立てたり、エッジまで身を乗り出し、唾が飛んできそうなところまでにじり寄りながらシャウトしたり。あるいは観客のリクエストに応えて、ロックやソウルのクラシックスを歌い出したり…。BARというリアルな空間で培ってきたステージ・マナーを全身に纏いながら、フィジカルなパフォーマンスが繰り広げられていく。ロックンロール・ショウという、ある種の本能に根差した“悦楽のサーカス”が目の前で展開されていく奇跡――そう、2017年の今、バーボンのように強力で芳醇な薫りを放つロックを、六本木で聴けるという奇跡が起こったのだ。これは「事件」といっても過言ではないだろう。
決して揺らぐことのないスタイルを持ち、グルーヴし続ける鋼のロックンロール・バンドが弾き出すサウンドに聴き手は鼓舞され、一心不乱に手を叩き、足を鳴らす。ステージと客席は一体となり、男臭い汗とガッツと哀愁が滲むパフォーマンスに会場は激しく揺れた。オリジナルはもちろん、誰もが熱くなるソウル・ナンバーも歌い上げるサウスサイド・ジョニーの疲れを知らないパフォーマンスは必見・必聴と断言する。ロック・ファンを自覚しているのであれば、絶対に見逃せないライブであることは間違いない。用意はいいかい?
17日には大阪で極上のライブを繰り広げてきただけに、バンドのコンディションもグッド。加えてサウスサイドの喉が好調なのも心強く、嬉しい限りだ。20世紀に始まる米国発の輝かしいカルチャーである「ロックンロール」を威風堂々と体現しているサウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス。東京では今日(20日)も目撃することができるのだから、この“奇跡”を大阪のファンや昨日の東京で体験した僕たちと、ぜひとも共有して欲しい。
◎公演情報
【サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス】
ビルボードライブ大阪 <終了>
2017年9月17日(日)
1st 開場15:30/開演16:30
2nd 開場18:30/開場19:30
ビルボードライブ東京
2017年9月19日(火)~20日(水)
1st 開場17:30/開演19:00
2nd 開場21:45/開場21:30
詳細:http://www.billboard-live.com/
Photo: Masanori Naruse
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。蝉からコオロギに鳴き声の主役が交代する時期。これからは熟成したワインをじっくりと味わいたい季節だ。まずは、カリフォルニアのジンファンデルからスタートしてみるのも一興。『フロッグスリープ』や『リッジ』『レイヴンズ・ウッズ』といったメーカーからリリースされるフラッグシップ・シリーズは、近年、古木になって深みとコクが増してきたブドウから造られ、芳醇な味わいが素晴らしい。牛肉のグリルとなら間違いのないマリアージュが満喫できるし、ナッツやハード系のチーズと共に楽しむのも格別。たまにはワインをメインにした嗜み方もエクセレント!
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