2017/06/09
2014年に解散した先代BiSのメンバー、カミヤサキがGANG PARADEよりレンタル移籍という形で帰還。パン・ルナリーフィ&ももらんども新メンバーとして加わり、7人組となった新生BiSが5月30日 新体制初のワンマンライブを恵比寿リキッドルームにて開催し、満員のオーディエンスを狂乱させた。
<BiSのはじまり~学園祭とその準備期間のような日々を送っていた時代>
2011年のデビュー~2014年の解散に至るまでの先代BiSは、元々はリーダーのプー・ルイがソロ活動に苦戦し、険悪な仲であった渡辺淳之介マネージャー(現WACK社長)を困らせてやろうと勢いで立ち上げたアイドルグループであり(アイドルを選んだ理由は、高橋愛率いるプラチナ期のモーニング娘。にハマっていた為)、アイドル活動に関する一切のノウハウを持ち合わせていなかった彼女達は、自ら「可愛くもない、歌もダンスも上手くない、誇れるものは松隈さん(松隈ケンタ/サウンドプロデューサー)の音楽だけ」と口にしながら、だから他と同じ事をしても仕方ないと“悪ふざけ”とも捉えられるアプローチを次々展開。PV撮影で電車の中を勝手にデコレーションしたり、パンスト被ったり、メンバー同士でディープキスしたり、同じ曲(今やアイドルシーンのアンセム化している「nerve」)を連発したり、ステージにお客さんをどんどん上げちゃったり、挙句の果てに全裸で樹海を駆け回ったり、過激路線アイドルの草分け的存在として……なんて意識も当時はなく、ましてや「絶対に世界を変えるんだ!」なんて気概も一切なく、どちらかと言えば「これはヤバい!笑」と研究員(BiSファンの呼称)とゲラゲラ笑いながら、時に青春よろしくでぶつかり合ったりもしていたが、毎日が学園祭とその準備期間のような日々を送っていた。
<世界を変える。その言葉が次第にBiSの大きな原動力となった時代>
が、AKB48のメンバーが過呼吸で次々ぶっ倒れていくドキュメンタリー映画の上映もあったりと、アイドルシーンに「センセーション」というキーワードが飛び交い出した頃、BiSはそれまでのゲラゲラ笑える衝撃以上に「エモさ」を求め出す。メンバー間の内紛公開やそれに伴う脱退劇、過酷過ぎる24時間100kmマラソン、宿飯なしの車中泊ツアー、その果てにメンバーボイコットや乱闘騒ぎまでと、ハチャメチャのベクトルが完全にヒリヒリしたものへと変わっていった。それに伴い「primal.」や「Fly」をはじめとしたエモい楽曲たちはライブで披露される度に涙を誘うキラーチューンへと深化し、元々はみんなでバカ騒ぎする為の楽曲に過ぎなかった「レリビ」(1stアルバム収録曲)に関しては、その英語詞が実は「他の人のことなんか気にしてられなかった だって世界を変えるなんて普通じゃできるわけない 結局世の中なんてほとんどなるようにしかならないし 楽しいことばかりじゃないのもわかってる…それでも私たちはやってみせるから!」とまるでBiSのストーリーを予言していたかのような内容だったこともあり、「世界を変える」その言葉はどんなにボロボロになっても目標に向かって走り続けるメンバーの状態と相まって、次第にBiSの大きな原動力となっていく。
<BiS解散~拭えない喪失感。ダーティーヒーロー不在の時代>
そしてBiSは、訳あって日本武道館での解散ライブは実現しなかったものの、武道館以上の高みと言える横浜アリーナでの解散ライブ【BiSなりの武道館】を実現。黒人SPとオタクの激しいバトル含め、会場中がいろんな意味でぐっちゃぐちゃになるという、最後の最後まで賛否両論巻き起こる特大花火を打ち上げて、文字通りBiSは散り散りとなった。あれから約3年。歴代BiSメンバーは一般人に戻った2人以外は、今でもそれぞれに表舞台に立ち続けているし、渡辺淳之介×松隈ケンタのタッグは当時のBiS以上に老若男女から愛されるBiSHなる後続グループをブレイクさせているし、昨年の夏には再びプー・ルイと共に新しいBiSまで結成しているし、その現場には当時の客席を彩っていた研究員も再集結している。表面的には何も寂しくないというか、むしろ当時より登場人物も増えて華々しくなっている印象なのだが、どうにも拭えない喪失感。何か足りない感覚がもうずっとアイドルシーンに対してあった。
神聖かまってちゃんのの子は「今はみんなクールですよね。そこらへんはちょっと疑問には思ってます。今のシーンに対してもバンドに対しても「おまえら、そこまでクールになっちゃってんの? なんなの?」って」「もっとみんなクリーンになっていくのかな。バンドシーンも音楽業界も何もかも。なので「どっかでぶっ壊れないかなぁ?」と思ったりもするんですけど、現実はそうもいかないのかなって」と現在のバンドシーンに疑問を抱いていたけれども、近い状況がアイドルシーンにもあり、それは2014年7月8日以降、多くの者がかつてのBiSのようにあらゆる手段で辿り着こうとするも、かつてのBiSのように君臨することが出来なかったポジション。昨年夏に復活した5人の新生BiSですら返り咲くことの出来なかった場所。そこでこそ輝けるダーティーヒーローの消失であった。しかし長い時間はかかったけれども、かつてのBiSが荊の道を突き進むことになった名所・恵比寿リキッドルームにて、7人のアイドルは当時目にした色とはまた違う、悪の華を芽吹かせた。
<新体制のBiS~個の立った無邪気な悪魔たちがどんな物語を紡ぐのか>
前述した通り、かつてのBiSはスペシャリストの集団ではなかった。アイドルとしては足りないものだらけ。スキャンダラスな展開で話題は常にさらっていたものの、ステージに立てば歌もダンスもビジュアルも含め実力では共演者に劣った。てか、いろいろヘタクソだった。それでも個の存在感は尋常でなく、誰ひとりキャラのかぶるメンバーがおらず、そのキャラは誰もがアイドルシーン屈指の際立ちよう。で、謎の自信。決して実力や練習量に裏付けされたものではない、謎の凄みがあり、BiSの出演するアイドルイベントはいつだってBiSが最大の注目を集めた。ファンもアンチも褒め称えなかったとしてもBiSを意識せずにいられなかった。そんな先代BiSに溢れていた根拠なき凄み。あれを新体制のBiSは彷彿させながらも、決して懐古的にはさせない新鮮な衝撃も与えてきた。アレンジや振り付けが変わったとは言え、セットリストには「Nerve」「パプリカ」「Give me your love全部」「My lxxx」「太陽のじゅもん」「IDOL」「BiS」「primal.」と旧譜も満載。そのすべてが7人のこの瞬間を駆け抜けんとする意思でもって今の歌となる。
また、単純に7人というBiS史上最大人数ゆえの迫力に加え、白塗りのデーモン閣下×マリリン・マンソン÷2みたいなビジュアルのキカ・フロント・フロンタールや、ピンク色の坊主頭のカミヤサキというキラーコンテンツはもちろん、そもそも居るだけで異端の存在感を誇るプー・ルイ、天才肌のムードメイカーであるペリ・ウブ、多くは語らずとも時に狂気が滲み出るゴ・ジーラ、そして小さい声と体ながらもCHANGE the WORLD担当を担うももらんどと、自分がスペシャルでないことを力に変えていくという「This is BiS」を先天的に体現できているパン・ルナリーフィ。このてんでバラバラなキャラをそれぞれに際立たせる7人の姿は、一時たりとも観る者を飽きさせず、常に狂乱の渦を巻き起こしていく。同時に、これだけ個の立った無邪気な悪魔たちがここからどんな物語を紡ぐのか、その夢想に大いに心も躍った。スクワットをし続ける「パプリカ」で「もうここで倒れちゃうんじゃないか?」と心配させる新メンバーの必死さも、歌もダンスも個性の爆発でありながら絶妙な一体感を見せるフォーメーションも、弱者であろうとも世界を変えたいと声を震わせるMCも、何もかもが狂乱の糧になるこのメカニズム。これこそがBiS最大の武器であったことを再認識させるライブがこの日は繰り広げられていた。
<「すべてはこれからかなって思います」悪の華を芽吹かせた夜、体現>
事前のインタビュー(http://bit.ly/2t1OoQ5)で7人は各々の悪い奴エピソードを語ってくれた。そしてプー・ルイは「ももも道歩いてて「死ね、死ね」って思うぐらいには反骨精神を持っているし、パンも欲しいものは学校の備品だろが何だろうがすべて奪い取る悪い奴だし……どっちも今日初めて知ったんですけど(笑)、これから立派な悪になっていきたいと思ってます。実際は「悪になりたい善人」なんですけど! でも「負けない」という気持ちがやっとみんなの中に出てきたと思うので、すべてはこれからかなって思います」と語っていたが、この日のライブは「すべてはこれから」をまさしく体現するもので、彼女たちが目指さんとする道が悪の道だとするならば、悪の華を芽吹かせた夜と言える。その肥料が今回は何になるのか現時点では分からないが、いずれにしても「世界を変える」という言葉は先代同様、もしかしたらそれ以上に彼女たちを突き動かす糧となるだろう。そう感じさせた(プー・ルイの涙をも誘った)新メンバーのMCを最後に記しておきたい。
パン・ルナリーフィ「今日からBiSに入ったパン・ルナリーフィです。2か月前にオーディションがあって、そこから2か月間、この7人でいろいろな準備をしてきました。BiSにももちゃんと2人で入って……みんな、ももちゃんのことを見ていると思います。……でも、それで私は2か月間、自分が何をすればいいのか、自分にしか出来ないことは何かないかってずっと探してきました。でも2か月間では見つからなくて、今はもらえた歌割りとか踊りとかを1つ1つ自分のものに出来るように、1つ1つにかけてやろうと思っています。……新メンバーとしていろいろ考えることはあるんですけど、今は踊りや歌に一生懸命で、全て完璧にしなければならなくて……こういうことを言える状況かは分からないんですけど、私はいつかBiSの中でエースを獲れるようになりたいです。今はメンバーの背中を追いかけているだけなんですけど、今日からBiSになったので自分も全力でみんなに追いついて、しっかりとやらなければいけないことをやって「パンちゃんが入ってよかった」って全員に言ってもらえるように頑張るので、これから応援よろしくお願いします」
ももらんど「えっと………私は、人と話したりするのが苦手で「自分を変えたい」ってずっと思ってて。でも思っているだけで……。この世界「変えたいとか変わりたい」とか思っている人いっぱいいると思うんですけど(私は)オーディションを受けて、自分自身が変われて今ここにいるんですけど、でもそれは私1人の力だけじゃなくて、オーディションを一緒に過ごした仲間や……メンバーが助けてくれたからで。だから「自分のこと嫌い」とか「イヤとか」思っている人いると思うんですけど、大丈夫。……諦めなければ絶対出来るから。……合宿でニコ生を見ていた人は分かると思うんですけど、「レリビ」のフリが1人だけ出来なくて、申し訳なくて……多分迷惑かけちゃってて。後ろのほうで1人で練習していたらプーちゃんが教えてくれたりしたんですけど、それでも合宿のときは出来なかったんですよ……。でも、最近練習していると自然に出来るようになってて。……だから何でもやれば出来るから「頑張って」って伝えたい、みんなに。これからはBiSとして「またライブに来たいな」と思ってもらえるようにしたいです。BiSは1人1人すごくキラキラしてて……キラキラしてるから。良い人たちだから(涙ぐむ)……BiSは本当にすごいから。それを伝えたい。2か月で、ちょっとだけだけど私は変われたので、みんなとだったら世界を変えれると思うから、世界変えようと思う。あの……バカとか言われるかもしれないけど、絶対にやってみせるから……見ていてください!!」
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada
◎ライブ【BiS BAD SOCiAL TOUR】
2017年05月30日(火)恵比寿リキッドルーム セットリスト:
01.Nerve
02.パプリカ
03.Give me your love全部
04.My lxxx
05.太陽のじゅもん
06.Human after all
07.IDOL
08.ロミオの心臓
09.ぎぶみあちょこれいと
10.BiS
11.primal.
12.Never Starting Song
13.SAY YES
14.Not Special
15.NOT the END
16.gives
17.CHANGE the WORLD
18.BiSBiS
En1.NAKODUB
En2..SOCiALiSM
En3.レリビ
◎ライブ情報
【IDOL is DEAD】
2017年8月6日(日)東京・赤坂BLITZ
Open17:00/Start18:00
<チケット>
■「ALMOST DEADチケット」15,000円(tax in.)
※お土産付き
※LIVE音源フリーダウンロードチケット付き
■「通常チケット」3,500円(tax in.)
全席種
※オールスタンディング
※入場整理番号付
※入場時にドリンク代別途必要
※未就学児童入場不可
■「ALMOST DEADチケット」「通常チケット」抽選先行
受付期間:2017年6月5日(月)18:00~6月12日(月)23:00
■「通常チケット」プレリザーブ
受付期間:2017年6月13日(火)12:00~6月18日(日)23:00
URL:http://w.pia.jp/t/bis/
■一般発売日
2017年6月24日(土)AM10:00~
◎リリース情報
ワンコインシングル『I can't say NO!!!!!!!』
2017/08/16 RELEASE
500円(tax in.)
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