2017/06/09
ボリショイ・バレエ、全2幕のグリゴローヴィチ版「白鳥の湖」が6月7日に開幕した。オデット/オディールにはオルガ・スミルノワ、王子役はセミョーン・チュージン、ロッドバルト役ではイーゴリ・ツヴィルコが出演した。
成人の誕生日を祝福され、花嫁を選ぶよう求められている王子ジークフリートが、ある湖畔で出会った白鳥の姫オデットと恋に落ちる。悪魔ロッドバルトの呪いで白鳥に変えられたことを知り、王子は永遠の愛を誓う。しかし王子は花嫁選びの舞踏会で、ロッドバルトに連れられて登場する、オデットによく似た黒鳥の姫オディールに愛を誓ってしまう。
様々な「白鳥の湖」の演出、振り付けがある中でも、ロッドバルト役の意味付けや、その悲劇的なエンディングなどが今もって斬新なグリゴローヴィチ版は、物語のあらすじに必要なことのみを残し、音楽の求めるエッセンス全てを振り付けに投影したとも思える密度の高い全2幕だ。必要不可欠にしてシンプルな舞台装置により、幕間なしの舞台転換が行われ、観客は現世から湖の異世界へと知らずのうちに導かれる。
ボリショイ・バレエの分厚いダンサー層ありきでの演出は、ロッドバルトや道化、各国の姫君たちなど、主役以外のソリスト級が何人もいなくては成り立たない贅沢なもの。また奇跡的なまでに整った動きのコールド・バレエが舞台に描く模様は、パ・ドゥ・ドゥやソロの間も自在に姿を変え、夢幻の世界を体験できるだろう。連日の公演では、トップダンサー達がダブル・キャスト、トリプル・キャストで主役を踊る。ファンはこの貴重な機会に、様々な公演を見比べるという楽しみ方もできそうだ。
今年はボリショイ・バレエ初来日から60年という節目、そしてロシアが世界各国で文化行事を開催していく『ロシアの季節』最初の開催地としての来日公演でもある。舞踊監督として最初のシーズンを迎えるマハールベク・ワジーエフ氏ダンサー、オーケストラ、舞台スタッフ総勢230名が来日し、「白鳥の湖」そして続く「パリの炎」でも、ボリショイ・バレエの真髄を感じさせてくれる公演となりそうだ。 text by yokano
◎公演概要【ボリショイ・バレエ日本公演「白鳥の湖」】
2017年6月7日(水)~6月12日(月)
東京文化会館
photo by (C)Damir Yusupov
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