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2017/05/04

アーティストとしての成長、変化への意志を音楽が裏付けるアウスゲイル『アフターグロウ』(Album Review)

 アイスランドはレイキャビク出身のシンガーソングライター、アウスゲイルによる最新アルバム『アフターグロウ』の日本盤が、全世界に一週間先駆けてリリースされた。前作『イン・ザ・サイレンス』を携えて2014年には【FUJI ROCK FESTIVAL‘14】出演を果たしたが、今夏も新作を携えての同フェス出演が決定している。初来日となった2014年の【Hostess Club Weekender】から、ヘッドライナー・ツアーも含めて頻繁に来日公演を行ってくれることでも親しまれているアーティストだ。

 前作『イン・ザ・サイレンス』は、2012年に母国でリリースされたデビュー作を英語詞でリメイクした内容であった。日本盤の『イン・ザ・サイレンス(デラックス・エディション)』では、オリジナルのアイスランド語ヴァージョンも同梱されていた。オーガニックとエレクトロニックのサウンド成分が境目なく織り込まれ、神秘的でアーシーな、アウスゲイルの音楽風景の魅力を世界へと知らしめる素晴らしい作品であった。

 新作『アフターグロウ』は、一曲一曲がアーティストの飛躍的な成長を伝えてやまない傑作だ。『イン・ザ・サイレンス』が極めて端正な、高い完成度を誇る作品であっただけに、尚更驚かされる。洗練されたエレクトロニカ/ベース・ミュージックを用いながら、情緒的でナイーヴな歌や生ピアノ、ギターなどの演奏が伝うというアウスゲイルの表現スタイルを、丸ごと更新している。

 先行シングル曲の「Unbound」では、当て所ない場所に立ちながらもしっかりと大地を踏みしめ、自由な生き様を主張するアウスゲイルの心情が歌われる。エレクトロニックなグルーヴは有機的な響きを持ち、彼の音楽の血肉として機能しているのだ。より確かな肉体性を帯びたエレクトロニック・サウンドの素晴らしさは、アルバムの中で劇的な展開を繰り広げる「Underneath It」や、「I Know You Know」などでも確認できる。

 一方で、豊かなホーン・サウンドを絡めたアウスゲイル風のソウルと呼ぶべき「Stardust」や「Dreaming」、エモーショナルな展開が素晴らしい「Here Comes the Wave In」といった楽曲群は、独創性溢れる彼のポップ・ミュージックの広がりを伝えている。前作における高い評価がアウスゲイルに自信をもたらし、臆することなく新たなフェーズへと邁進していることが伺える。

 “夕暮れ”というタイトルどおり、この作品には絶え間なく移り変わる時間・時代の、どっちつかずな狭間の風景が浮かび上がってくる。現在が見えない未来への過程だとするならば、アウスゲイルは彼自身が抱く不安や苛立ちも引っ括めて、“変化すること”に能動的な意味を持たせることが重要なのだと主張している気がする。その主張を音楽によって裏付けた作品が、この『アフターグロウ』なのである。(Text: 小池宏和)


◎リリース情報
アルバム『アフターグロウ』
2017/4/28 RELEASE
2,490円(tax out.)

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