2017/04/28
ステージに照明が点くとレトロなソウル・ナンバーが流れ、その後すぐに一変して身体をダイレクトに揺さぶるサウンドが弾ける。想定外に2階の客席から降りてきたドラマーが強烈なリズムを刻み始めると、会場はいきなり沸点に達した!
まるで快楽中枢をチクチクと刺激されるように、エモーショナルでありながらスペーシーな感覚も伴ったサウンドが肌に貼り付いてくる。タキシード姿で踊るメンバー。やはり新参者とは格が違う。歌、演奏、そしてダンス――たっぷり楽しませてくれるショウの始まりだ。インカムを通して、しきりに「トーキョー!」と煽るように語りかけてくる。それにしても、この躍動感はどうだ!
ホームページにアップされた、メンバーによる麗しいコーラスを絡めたヴィデオ・メッセージ。それを見ているだけでワクワク感はすでにピークに達していたのだけど…。1週間くらい前から、部屋ではZAPPのサウンドが鳴りっぱなしだったし。
打ち込みによる弾むようなハンド・クラッピング。そしてトレードマークのヴォイス・モジュレーターを通した、美しいグラデーションが広がるヴォーカル。デジタルとアナログの音が混然一体になってブルーズ・フィーリングまで取り込んだ、タフなエレクトロ・ファンクが畳み掛けるように繰り広げられ、空間が歪んでいくようなシンセ・サウンドが、ぶっといリズムと合体しながら迫ってくる。
前半から惜しげもなく「ダンスフロア」が演奏され、否応なしにムードは最高潮に――。
力づくで踊らされているような、圧倒的なパワー。客席や階段でも当たり前のように演奏し、踊る。彼らにとってはハコ全体がステージだ。
約1年半ぶりとなる『ビルボードライブ東京』でのステージ。もちろん、悪いはずがない。ロジャー・トラウトマン亡き後も世代を超えたファミリー・グループとして、その伝統と美意識を受け継ぎながら、21世紀の新しい音楽要素も貪欲に取り込み、まさに唯一無二のスタイルを進化・確立し続けているZAPP。オハイオ州デイトンという地方都市ながらもファンク・ミュージックの聖地から、イキのいいダンスサウンドを発信し続けている彼ら。P-FUNK軍団と双璧を成すと言っても過言ではないZAPPの音楽マナーは、時空を超えて、もはや“スタンダード”になっていると言っていいだろう。
ロジャー直伝のエンタテイメント性溢れるファンク・ショウ。ほぼノンストップで繰り広げられるヒット曲のメドレーと、思わず目を奪われる激しいダンス・パフォーマンス。ツボを心得た見どころ、聴きどころ満載の、密度の濃いステージ。ソウル・リヴューの美意識が凝縮された1つのカタチだと、僕は改めて実感させられる。
途中にはクィーンの「ウイ・ウィル・ロック・ユー」のリズムが鳴り響き、観客とコール&レスポンスする場面も。常に語りかけながら進行していくステージだから、誰一人として乗り遅れることはない。踊り続け、一瞬たりとも止まることのないメンバー。疲れ知らずに躍動し続けるステージは、デトックス効果抜群だ。
中盤にはマーヴィン・ゲイの「悲しい噂」が比類なきダンスサウンドでカヴァーされる。マシンと肉体の理想的な融合を果たしたサウンドは、まさに「今」を逞しく生きる市井の人々への応援歌だ。イルミネーションを纏い、暗転したステージで幻想的なパフォーマンスを繰り広げる後半。楽しませる仕掛けが盛りだくさんのファンキー・パーティは、息つく暇もなくひたすら続く。正真正銘、プロのエンターティナーとしての仕事ぶりに、僕の胸は次第に熱くなっていく。
「もう帰る準備をしているの?」と、観客を焦らし、グイグイ盛り上げていく終盤。「コンピューター・ラヴ」が奏でられるころ、メンバーと僕たちはすっかり一体に。額には心地好い汗が滲み、爽快な気分に満たされた。「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」で再びザップ・サウンドを堪能したフィナーレ。コミカルなシーンも織り交ぜる一方、ゴスペル・フィーリングまでをも包み込んだ親近感溢れるパフォーマンスが、「カリフォルニア・ラヴ」などのアンコールを経て、90分後にようやく打ち上げられた。
時代を超え、世代を引き継いで展開されていくZAPPのエンタテイメント・ファンク・ショウは、今日(28日)も2ステージ行われる。時間が許せば両ステージ楽しんで、心地好い汗をかきたい。ゴールデン・ウィーク直前の金曜日をZAPPサウンドで盛り上げ、楽しい予定満載の連休へのプロローグにしてみてはどうだろう。チェック・イット・アウト!
◎ザップ公演情報
ビルボードライブ東京 2017年4月27日(木)~28日(金)
詳細:https://goo.gl/R8TNjb
Photo:Ayaka Matsui
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。乾いた風がサラリと肌を撫でてくれる1年で最も心地好い時季。こんな季節には、のど越しのいい軽やかなワインがうってつけ。ポルトガル産の“緑のワイン”=ヴィーニョ・ヴェルデや、ソアヴェやガヴィといったイタリアの定番ワインをキュッと冷やして、シンプルな料理といただくのが、季節と自然の恵みを実感できて、なかなかナイス。肩の力を抜いてカジュアルに、そして気軽にワインを楽しんでみて。
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