デス・フロム・アバヴ 1979とブラック･レベル･モーターサイクル･クラブのダブルヘッドライナーツアーが実現。北米の33箇所をめぐるツアーにはDFA 1979とBRMCに加え、前半にAWOLNATIONが、後半にDEAP VALLYがサポートとして加わり、前代未聞の骨太ロックツアーが開催された。ツアー終盤のカリフォルニア・オレンジカウンティでのショウをリポートをお届けする。

デス・フロム・アバヴ 1979（Death From Above 1979）
カナダ・トロント出身のシンガー兼ドラムのセバスチャン・グレインジャーとベースのジェシー・F・キーラーからなるギターレスロックユニット。
2004年にリリースした1stアルバム『You’re a Woman, I’m a Machine,』は世界的なヒットとなり、同年に来日公演も行なった。その後バンドは2006年に解散するも2011年に再結成し、2枚目となるアルバム『The Physical World』を2014年にリリースする。
バンドの再結成する過程を追ったドキュメンタリーフィルム『Life After Death from Above 1979』ではバンド結成当時のライブシーンや、ツアー中のバンド内の不破を語る２人、解散から再結成する前の様子、そして再結成発表直後に行ったゲリラライブ(SXSW)やコーチェラの舞台裏など貴重な映像が観られる。

再結成後はツアーをコンスタントにこなしつつ、個々の活動も行なっている彼らが
今年行なったBRMCとのツアーは彼らにとって再結成後の最も重要なツアーになったのではないだろうか。

再結成直後からは少し落ち着いたがそれでも観客は熱狂的に彼らの登場を待っていて、中にはカナダフラッグを持つ観客もいてDFAコールで彼らを迎える。
ジェシーはブラックのシャツにブラックデニム、セバスチャンは白地に”Don’t Shun The World”と書かれたTシャツを着て登場。セバスチャンのTシャツはあのカニエ・ウェストも着ていたのと同じ物だ。
照明が落とされ、ステージバックにあるバンドのキャラクターの目が赤く光り『Always On』でスタートした。
のっけから２人の超高速ハードコアの連続に観客が必死に食らいついていく。
間髪入れずに『Right On, Frankenstein!』でセバスチャンがフロアタムを叩き、ジェシーが体を仰け反りベースをかき鳴らす。
スポットライト無しのほぼ真っ暗なステージにフラッシュライトが照らされ、2人の凄技を撮影するのも至難の技だ。息つく間もなくステージ上のアンプからはベース＆ドラムのみとは思えないほどの爆音が炸裂する。
バンド・観客・撮影者の三位一体がこんなにもエキサイトするステージは滅多にない。
彼らの想像を絶する唯一無二のプレイスタイルと、生と動を巧みに使い分けるアレンジメントの高質な骨太サウンドが体の奥まで痺れさせる。　
ジェシーのベースは重低音で多様なコードのストロークでギターに近いプレイをする。セバスチャンの超高速ドラムプレイとバンドの爆音に負けないパワフルなボーカルは2人編成とは思えないヘヴィなサウンドで、男気をこれでもかと言うほど撒き散らし、始終圧倒されるステージであった。

2人は日本でプレイするのを心待ちにしているそうなので、来年日本で観れることを祈る。

Black Rebel Motorcycle Club
サンフランシスコ出身3ピースロックバンド。メンバーはボーカル&ギターのピーター・ヘイズ、ボーカル&ギター&ベースのロバート・レヴォン・ビーン、ドラムのリア・シャピロ。旧メンバーのニック・ジャゴーが脱退した後加入したリアは2014年に脳の奇形の一種であるキアリ奇形の為に脳外科手術を受けたが見事成功しバンドに復帰した。
今ツアーは3人での新たな出発となる記念すべきツアーである。

ステージの両脇から放射線状に光が放たれロバートとピーターを照らす。
ロバートのギターが低く重いキーを出し、ピーターがじっと時を待つ。そしてリアがドラムスティックでカウントし、今年発表された新曲『Bandung Hum』でスタートした。

ロバートは何度もフロア最前列にあるバリケートの上に立ち、観客の間近でギターを弾く。ギターのヘッドを観客の方へ向け高い位置にボディを構えじっとフロアを見つめる。その様子はハンターが獲物を狙うようだ。
一方でピーターは始終クールにフレージングながら、精巧で魂のこもったブルースを奏でる。
2人はまさに静と動である。
そしてリアの華奢な腕から想像しがたい骨太のロックビートが叩き出される。
『Ain’t No Easy Way』では両者が床を足で鳴らし観客も手拍子でリズムをとる。ピーターのハーモニカとリアのビートの掛け合いはこの上なく極上のブルースを聴かせてくれる。

と、ここまで息つく間もないくらいのスピード感溢れるハードグルーブでぶっ飛ばし、
ラストもやっぱりこの曲『Whatever Happened to My Rock ’n’ Roll (Punk Song)』で。ロバートがステージから飛び降り観客の中でプレイする。観客と共にも会場内のセキュリティまでもが歌っている。
タイトル通りロックンロールに何が起こったのかと言いたくなるくらいパンクでロックな幕引きだった。

Deap Vally
ロサンゼルス発ガールズ・パンクロックデュオ。メンバーはシンガー＆ギターのリンジー・トロイとドラムのジュリー・エドワーズで、今年Yeah Yeah Yeah’sのニック・ジナーと共同プロデュースで２枚目となるアルバム”Femejism”をリリース。

レオパード柄のジャンプスーツで登場した２人。リンジーはステージ上ではいつも裸足だ。その足でエフェクトペダルのセッティングを確かめる彼女。そしてジュリーが髪をかきあげスティックを鳴らしショウのスタートだ。
リンジーのシャウトはハスキーボイスにハイトーンとチェストボイスがミックスされ曲のアグレッシヴさを際立たせる。
そしてジュリーのドラムテクはパワフルだけでなくテクニックも美しさも兼ね備える。特に彼女のシングルストロークが素晴らしい。
ヒットチューン『Grunge Bond』ではリンジーのアップストローク＆スライドとギターテクを見せつけた。ドラムのジュリーは腕を大きく振り女性らしからぬ骨太のロックビートをきざみ出すが、彼女のカーリーヘアがビートと共に前後左右に揺れる様はうっとりするほど美しい。曲中の２人の掛け声と共に観客は拳を突き上げる。
最前列にいた一人の観客がリンジーの足を掴んだ。その手をするりとかわし「お前らロックが足りないね！」と喝を入れるとフロアから地鳴りのような歓声が沸きサークルモッシュが起こった。
その直後の新曲『Royal Jelly』での爆音フィードバックはクィーン・ビー（女王蜂）そのもので観客に一撃を食らわせたのだった。

Photo & Text: ERINA UEMURA