2016/12/19
今年もまた、この季節がやってきた。
イルミネーション、キャンドルライト、そしてザ・スタイリスティックス――。
街中が煌びやかなページェントで彩られる。誰だってロマンティックな気分に浸りたいシーズン。ここ数年、そんな時期の東京をムーディに演出してくれている彼ら。その圧倒的な美意識に裏打ちされたステージが、今宵も会場に足を運んだカップルたちに親密な時間を提供してくれた。
1970年代から都会的で洗練されたフィラデルフィア・ソウルをベースにした、麗しいコーラスで多くのファンを獲得してきたスタイリスティックス。「愛がすべて」「誓い」「ハーレムの薔薇」「16小節の恋」「ユー・アー・エヴリシング」「ベッチャ・バイ・ゴーリー・ワウ」など数多のヒット曲を持ち、そのどれもが21世紀の今もエヴァーグリーンな輝きを放っている。彼らのように長く音楽ファンから愛され続けているグループは、そうはいないだろう。
バンドが演奏する「ソウルトレインのテーマ」に押し出されるかのようにステージに上がった4人は、軽快なナンバーに続き、いきなり「16小節の恋」を歌い始める。まるでシルクのようにソフトな肌ざわりと深い艶を備えた歌声が、会場をしっとりとした雰囲気に塗り替える。
ステージはもはや確立されたワン・アンド・オンリーのマナーに貫かれた、黒人コーラスの美学を解き放つようなパフォーマンス。ゆったりしたリズムと鉄壁のコーラス・ワークが会場にロマンティックなムードを振りまく。どこまでもピュアで美しいファルセット・ヴォイス。そして一糸乱れぬスタンド・アップ・パフォーマンス。彼らの声が響いた瞬間から、間違いなく“特別な時間”が始まる。深い余韻を湛えた“大人のロマンティシズム”。いつの時代にも変わることのない、普遍的な愛の世界が美しく、そして切々と歌い上げられていく。
前半はダンサブルなナンバーも交え、中盤には“ディスコティック・コーナー”で沸き立つナンバーを絡めていく。会場に詰めかけたオーディエンスは、彼らのコーラスにうっとりし、ソウル・リヴューのダンスに刺激されて躍動する。メロウで麗しい歌声がカップルの間を行き交う。そして音が細かな粒子になって、会場の隅々まで浸透していく。
そして、終盤は怒涛のバラード攻勢。「今日、来てくれているすべての女性に捧げます」というナレイションと共に「誓い」のイントロが奏でられた瞬間、会場全体から溜息交じりの声が漏れてくる。最後は名刺代わりの1曲「ハーレムの薔薇」。もはや100%展開は読めているのに、それでも目の前で歌われると、まるでミラクルのような空間の中で、熱い想いがグッと胸に込み上げてくる。
アンコールではステージ後方のカーテンが開かれ、煌めくイルミネーションの海をバックに、ストゥールに腰かけた4人がクリスマス・ソングをメドレーで聴かせる。これ以上のシチュエイションは考えられないほど、パーフェクトなパフォーマンス。果てしなく、いつまでも途切れることなく続いてほしいと心底感じる夢見心地な80分。ミラーボールの煌きもどこか懐かしく、フラッシュバックする追憶感覚が理屈抜きに心地好い。こんな美しいステージが、今年は1週間も繰り広げられるのだ。底冷えする寒さのクリスマスに、大切な人と温もりを感じられる時間を過ごしたいなら、ぜひともスタイリスティックスのライブに足を運んでほしい。
彼らのステージは今日(19日)と明日だけでなく、24日~24日と26日の“クリスマス・ウイーク”にも体験することができる。爽やかでノーブルなシャンパンのグラスを傾けながら、あるいはほっこりしたホット・ワインで両手を温めながら、彼らのパフォーマンスを満喫したい。
◎スタイリスティックス公演情報
ビルボードライブ大阪 2016年12月12日(月)~14日(水)・16日(金)※終了
ビルボードライブ東京 2016年12月18日(日)~20日(火)・22日(木)~24日(土)・26日(月)
公演詳細:https://goo.gl/ur1PZ9
Photo: Yuma Totsuka
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。街はトゥインクルな光に包まれ、クリスマス一色。こんな時期は、今年の労をねぎらいながら、親密なパートナーと濃厚でコクのある赤ワイン、アマローネをぜひとも楽しみたい。北イタリア・ヴェネト州のヴァルボリチェッラ地区で造られる、紛うことなきイタリア・ワインの完成型の1つ。2人への“ご褒美”として、いかがですか?
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像