2016/11/27
今年で15回目を迎えたテキサス州オースティンにて開催されている音楽フェスACL (オースティンシティリミッツフェスティバル)が、9月30日から10月2日、10月7日から9日の計6日間開催された。市内にある350エーカー規模の公園ジルカーパークが会場となっており、2013年から2週連続開催で出演するアーティストはジャンルを問わず、大小7つのステージと子供も楽しめるキッズエリアもあり、海外からも多くのオーディエンスを集めている。
今年は、ヘッドライナーにRadiohead, Kendrick Lamar, Mumford & Sonを迎え、計157組のアーティストが出演し、2週間で45万人を動員した巨大フェスの模様を数々の写真とともにレポートする。
- Weekend 2-DAY 1 October 7th (Fri) -
Awolnation / エイウォルネイション
フロントマンのアーロンを中心としLAで結成されたエレクトロニックロックバンド、エイウォルネイション。彼らの曲のリリックは一般的なロックバンドの甘いラブソングなどではなく、絶望や孤独、精神疾患など。それらの歌詞は多くの現代社会の生きづらさを痛感する人々の共感を得て支持されている。アーロンのそれらの歌詞を直接訴えるようなエネルギー溢れるパフォーマンスは観客の感情を揺さぶり熱くする。ラストはやはり「Sail」で幕を閉じた。
Prinze George / プリンズ・ジョージ
「ステージ前はいつもナーバスになるの。ACLは私たちにとってビッグステージだから特にね。でも先週はうまくやれた。観客にもそれが伝わっていれば嬉しい。今週はもっとうまくやれると思うよ」と出演前に語っていたシンガーのナオミ。
彼らが出演するテントステージには先週より明らかに多くの観客で埋め尽くされていた。ナオミの容姿は可憐で透明感が高く少女の様で、その美しさは人形のようでもあるが、ステージでは一転し意志の強い大人の女性に変身する。多くの観客が彼らの代表曲「Wait Up」や「Freeze Up」を一緒に口ずさんでいる。ナオミがギター&キーボードプレイヤーのケニーと見つめ合い手を取り歌ったり、ドラムのイザベルの横で歌ったりと前週では見られなかった彼らの生き生きとしたパフォーマンスを観ることができた。テントを埋め尽くした観客を見て三人は手を取り「オースティンありがとう!また必ずここに戻ってきます!」とステージを後にした。
Bear Hands / ベア・ハンズ
ブルックリン発インディロックバンド。今年の4月に3枚目となるアルバム『You Will Pay For This』を発表。精力的にツアーをこなし各地でファンを増やし、ここ最近ではCage the ElephantやFoalsなどと一緒にツアーを回り、より多くのファンを獲得している。
ファンがフェンスを揺らし彼らの登場を待っていた。フロントマンのディランは長い髪をバッサリスキンヘッドにしアナーキールックで登場。「Winner’s Circle」ではサークルモッシュ、「2AM」で一旦緩い流線状の曲で余裕と隙を与える。「I Won’t Pay」ではディランがステージになだれ込み倒れたまま歌う。
午後の早い時間の出演にもかかわらずメインステージ級の最高なパフォーマンスをした彼ら。近年のポストパンクバンドの代表的存在に彼らがなる日はそう遠くないだろう。
Max Jury / マックス・ジュリー
今年6月にセルフタイトルのデビューアルバムを発表したアイオワ州出身23歳のシンガーソングライター。ニール・ヤングやウィリー・ネルソン、ウィルコなどに影響を受けカントリーやフォーク、ソウルなどを聴いて育った彼は後にエリオット・スミスに出会ったことからインディ・ロックも聴くようになり彼の一つのジャンルにとらわれないスタイルを確立させていった。
少年のようなあどけなくそして甘いマスクからは想像しにくいパワフルでソウルフルな歌声に、キーボードやフォークギターを演奏。バックバンドメンバーには女性コーラス。そのステージからジェイミー・カラムを思い出したが、マックスはよりフォーク色が強いが、若い彼なりに今風にフォークがアレンジされている。要注目のアーティストの一人である。
Foals / フォールズ
30度を超える気温。彼らはどんな条件の中でもいつも最高のパフォーマンスで観客を熱くしてくれる。フロントマンのヤニスが「オースティン 俺らと盛り上がる用意はできてるか?」と叫び「Snake Oil」で幕を開けた。「A Knife in the Ocean」では完全無垢で複雑なギターリフがジャックの精巧なドラムへ導く。「What Went Down」ではヤニスはステージを降りて観客と一緒に叫ぶ。彼らは多くのフォトグラファーが、今最も撮りたいアーティストでありフォトジェニックであると口を揃えた。
M83 / エムエイトスリー
ACLで最もカラフルなステージの一つはM83によるものだった。
「Midnight City」月明かりの会場にステージセットの照明が花火のように円を描いて照らされ、アンソニー・ゴンザレスによって創られた空想的なポップトラックはギタリスト ヨルダンとドラマーのロイックによって完璧なものとなり、観衆は「Road Blaster」と「Go!」、「We Own the Sky」で神秘的な空間にトリップした。
Flying Lotus / フライング・ロータス
最前列は”Happy Birthday Steven”とボードを掲げたファンが待つ中誕生日をACLで迎えたFlying Lotus登場。ラップトップにある彼のプロダクションカタログからトラックをリミックス。「俺はこのShit(クソ)をプロデュースしたんだ!」と言い、「Wesley’s Theory」からケンドリック・ラマーの「To Pimp a Butterfly」をプレイ。
彼がステージで作り出す未来的で実験的なJazzとヒップホップの高密度なユニゾンは音楽の創造性は無限であると実感した。
Radiohead / レディオヘッド
オープニングソングは「Burn the Witch」血のように赤いライトでステージは照らされ、ステージ上にあるスクリーンは方向感覚を失わせる。そして観客を狂気=狂喜の世界へと誘う。
それは恐慌を押し進めて不確かなパニックの世界で群衆を包み込んでいくように見える。
2時間のセットで23曲を演奏。「All I Need」、「Pyramid Song」の深く静かな瞬間の後に訪れる「Identikit」の殺気立ったストロボライトと電子音の波の中ジョニー・グリーンウッドのギターによって冒頭の狂気の不安の毒気が舞い戻る。
アンコールは30分以上に及び、ラテンジャズリズムの「Present Tense」から「Reckoner」でトムは月明かりの下で舞い続ける。
その場にいた誰もがこの瞬間が終わりが近づくのを感じると同時に、時が止まって欲しいと願っていた。照明が落とされ暗く静かな闇に向かう。RadioheadはACLで最も忘れがたく美しい瞬間の一つを送り届けるため「Fake Plastic Trees」を演奏し幕を閉じた。
この日Flying Lotusと同じくトム・ヨークのバースデーでもあり観客はバースデーソングを歌い彼らの登場を出迎えた。トムは何度も会釈し観客に感謝の意を伝えた。「My Iron Lung」と「The National Anthem」の後、トムはこう述べた「もしあなたが怯えているのなら、それは持続してしまう。人は誰しも何かしら恐れを持っていて、それは続いている。でもそれを”失せろ”と望むなら、そうすることができるんだ」と伝えた。
Text & Photo:ERINA UEMURA
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