2016/09/24 12:00
景気のいい話が聞こえてこないのは音楽業界だけではない。テレビドラマの世界でも、低迷ぶりが甚だしい。調子がいいのはNHKの連ドラや大河ドラマくらいで、民放は軒並み大苦戦。ドラマ枠自体がどんどん縮小されているという現状だ。
ドラマのタイアップというと、フジテレビの月曜21時枠、いわゆる「月9」は、一昔前までは視聴率も安泰でヒットを保証されていた。しかし、昨今は回を重ねるごとにドラマ自体は視聴率最低記録を更新するほどパッとしない。とはいえ、主題歌に関してはなかなか健闘しているようだ。この1年を振り返っても、back number、手嶌葵、藤原さくらと、ネームバリューに頼らずにロングセラーとなるスマッシュヒットを出してきた。7月から9月のクールにおける、JY「好きな人がいること」もそんな一曲といえる(【表1】)。ドラマ自体は好調とは言い難かったが、この曲に関しては蜷川実花が手がけたミュージックビデオが公開されてすぐに動画再生数が上位に食い込み、今週も2位をキープ(赤のグラフ)。元KARAだけに、おそらく韓国からのアクセスも相当あったはずで、映像の効果は大きかったようだ。レンタルと直結したルックアップ(CD読み取り数)の急上昇も後押しし(オレンジのグラフ)、今週は3位まで上昇した。ドラマとはまた別の要素が、ヒットに加担したことは間違いないだろう。
同じクールでは、TBS系の木曜22時枠も苦戦を強いられた。松嶋菜々子主演で大々的に始まった『営業部長 吉良奈津子』は打ち切りをささやかれるほどだったようだ。しかし、主題歌となった山下達郎の「CHEER UP! THE SUMMER」は大健闘し、徐々に上昇して今週は10位に食い込んだ(【表2】)。こちらはラジオのオンエア回数が落ちること無く上位にいることからも(緑のグラフ)、往年の名曲を思わせる楽曲のパワーによるものだろう。タイアップに関係なく、きっちりとプロモーションできた賜物といえる。
ドラマのタイアップは、きっかけとしては今でも有効だが、そこだけに寄りかかっていてもヒットは生まれない。そのことを痛感させられる時代になったのだ。Text:栗本斉
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