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2016/09/21 18:05

ブレインフィーダー@ハリウッドボウルはクリエイティブなカオスだった!フライング・ロータス主宰レーベルの注目LA公演をレポート!

 フライング・ロータスが主宰して2008年にロサンゼルスで設立したインディー・レコードレーベル、ブレインフィーダー。そのレーベル・イベント【ブレインフィーダー@ハリウッドボウル】が9月17日(現地時間)に開催され、所属アーティストのラインナップが実現した。

 ガスランプ・キラー、シャバズ・パレセズ、サンダーキャット、ファンカデリック featuring ジョージ・クリントン&パーラメント、そしてフライング・ロータスという豪華な顔ぶれ。正直、このラインナップが発表された当初は「ジョージ・クリントンは異色なのでは?」と気になったが、ご存知の通り、ジョージ・クリントンの新作がブレインフィーダ―から出ることをフライング・ロータスが8月末に発表。詳細は後日、明らかになるが、現段階では願わくば来年リリースということのようだ。今回、“ブレインフィーダ―・ファミリー”を4時間にも及んで満喫したこのイベントをレポートする。

 最初のアクトとして登場したのはガスランプ・キラー。持ち時間が15分の短時間で終わりかと思ったら、シャバズ・パレセズとサンダーキャットの転換時、サンダーキャットとジョージ・クリントンの転換時も演奏。5分ほどの転換でも音を途切れずオーディエンスを楽しませてくれる構成はさすがブレインフィーダ―だ。

 続いて登場したのは、シャバズ・パレセズ。男性2人組で、カラフルな衣装に身を包み、一人はビートを中心のマルチな楽器演奏で、もう一人がヴォーカルとターンテーブル担当。大音量の低音のビートとちょっと脱力感のあるヴォーカルに実験的なサウンドという組み合わせだが、聴いているうちに癖になってくるのが面白い。どっかで聴いたことがある名前だな、と思って調べていたら、レディオヘッドの8月ロサンゼルス公演の前座をしていた! その時の会場は低音がこもっていてヴォーカルがあまり聴こえず、音のバランスが悪いという酷評もあったが、今日のライブは野外の会場で音がこもることなく、開放的に彼らのビートを楽しむことがてきた。

 ダブルギターならぬダブルベースを繊細かつ力強く演奏し、しっとりとしたヴォーカルで歌うサンダーキャットは、高速演奏が特徴的だったドラムス、キーボードを加えたトリオ編成で、エレクトロな音は控え目のジャズ色が強い構成だった。ライブ2曲目では、サンダーキャットがプロデュースしたケンドリック・ラマ―の「Complexion」をカバー。バンドメンバーがお互いにアイコンタクトで確かめ合いながら、寸分の狂いもなく演奏が進んで行った。後半では、特別ゲストとしてマイケル・マクドナルドが登場し「What a fool believes」(ドゥービー・ブラザーズ)と「Them Changes」を演奏。マイケルの最高にとろけそうなヴォーカルは確実にこの夜のハイライトの一つだった。

 トリオで演奏したサンダーキャットとは比較にならない大所帯=20人弱という編成だったファンカデリック featuring ジョージ・クリントン&パーラメント。ジョージは耳に手を当て「(声援が)聴こえない!」とばかりのジェスチャーで1曲目からオーディエンスを煽る! 独特のしわがれ声を披露しつつ、早々にマイクは若手にバトンタッチ。本人はオーディエンスの盛り上げと、バンドメンバーの進行に集中。途中ステージに座ったり、何でもありな行動だが、演奏がジョージの意思と力を帯びて前に進んでいくから凄い! そう、彼はステージにいるだけで伝説と言えるのだ。セット後半「Give Up the Funk」で会場は大歓声。この日のオーディエンスは20代が中心でかなり年齢層が若かったので、もしかするとジョージ・クリントンを生で観るのが初めて、という人が多かったかも知れない。だが、彼がいなければ、Pファンクもなかったし、Pファンクがなければ、ドクター・ドレをはじめとするGファンクもなかっただろう。そして、ドクター・ドレをはじめとするN.W.A.がいなければ、今活躍しているケンドリック・ラマ―はどうなっていたのか…想像がつかない。ただ言えることは、今夜観たジョージ・クリントンがいなければ、現在の音楽は全然違ったものになっていた可能性があるということ。本稿の冒頭で触れた来年リリース予定の新譜など、まだまだ現役活動中の彼だが、もう75歳。生のジョージ・クリントンをまだ観たことがなければ、彼が現役のうちに機会を作ってぜひ観ておいて欲しい。そして、この伝説の男から何かを感じて欲しい。この夜は、ド派手なウィッグも被らず、とても紳士的な姿でオーディエンスを楽しませているジョージ・クリントンの笑顔が印象的だった。

 そして、本日のヘッドライナーでありレーベルを主宰するフライング・ロータスが登場。この日のセットはDJ卓の前にスクリーンが一枚、そしてDJ卓の後ろにさらにスクリーンが一枚と、本人がサンドイッチされるようにスクリーンが配置されていた。さらに前面のスクリーンのフレームにはLEDの棒状のライトが設置。サングラスを掛けておらず、直ぐに本人とは気づかなかったが、ステージ下手から歩いて立ち位置に移動。不意打ちとも言える登場だったが、いきなりの映像美に圧倒される。スクリーン2枚と、LEDのフレーム以外に、ステージ後方の照明、そしてハリウッドボウルステージ全体にも映像を映し出すというスケールの大きさ。未来的な映像や、アニメからの影響が強そうな映像、はたまた自然的でオーガニックなものまで、映像美といってもそのテーマは多種多様で飽きることがない。そうした視覚面が先なのか、それとも聴覚面が先なのか判断はできないが、知らぬうちにフライング・ロータスの世界観にどっぷりと引き込まれていた。以前フェスティバルで彼のパフォーマンスを観た時はMCをしていた記憶がないのだが、この日は曲間で「こっちからは見えないんだけど、ちゃんと映像うまく映ってる?」とオーディエンスに確認したかと思えば、次の曲ではオーディンス側にある花道を歩いて、そこから映像を確認したり、非常にリラックスした雰囲気だった。プロモーターが主催するフェスティバルへの出演や、ブッキングされた公演のヘッドライナーを務めるよりも、自身が主宰するレーベルのイベントで17,500人収容の会場で演奏する方がプレッシャーは大きいことは間違いないだろう。だからなのか、今日ここにたくさんのオーディエンスが集まってくれたことが本当に嬉しそうだったし、それが彼のミッションだと言っていた。セット後半はケンドリック・ラマ―の「King Kunta」をカバー。オーディエンスの歌える比率が異様に高い! ケンドリック・ラマーからもう1曲「Wesley’s Theory」、そして自作でケンドリックをフィーチャーした「Never Catch Me」の演奏でイベントは終了した。サンダーキャットもそうだが、ブレインフィーダ―の音楽、そして今のLAの音楽シーンにおいてのケンドリック・ラマ―の位置がいかに重要かがわかるセットリストだった。

 ビートミュージックのevolution【進化】とrevolution【革命】を体感した4時間でもあり、ジョージ・クリントンからマイケル・マクドナルドという大御所から最新の音楽を代表するフライング・ロータスやサンダーキャット。そして、実験的な音楽で未来を示したシャバズ・パレセズ。過去の音楽が多くのアーティストやユーザーに影響を及ぼし、現在の音楽シーンを作り上げ、さらに未来へと向かっていくエネルギーを感じた夜だった。

 欲を言うならば、ここに2015~2016年、ブレインフィーダーのみならず音楽シーンを代表する存在とも言えるカマシ・ワシントンが加わっていれば、また違う盛り上がり方をしたのかも知れない。エネルギーは増大していたのは間違いないだろう。これからもブレインフィーダーのアクションが楽しみだ。

◎公演概要
【ブレインフィーダー@ハリウッドボウル】
2016年9月17日(土) ロスアンゼルス・ハリウッドボウル

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