2016/07/03
米テネシー州マンチェスターにて2016年6月9日~12日の計4日間に渡り開催され、約9万人を動員した今年で15回目の【ボナルー・フェスティバル】。【コーチェラ】、【ロラパルーザ】と並び世界的に知られるアメリカのフェスで、700エーカー近くある巨大農場が会場となっており、観客の8割がキャンプを行う。最終日となる4日目は、フィナーレを飾るべく豪華アーティストが競演。グレイトフル・デッドとジョン・メイヤーによる伝説のスーパーバンド=デッド&カンパニーや映画『ハングオーバー!』シリーズで知られるエド・ヘルムズが、ブルーグラス・ジャムでフェスを締めくくった。
◎Kurt Vile & The Violators / カート・ヴァイル&ザ・ヴァイオレイターズ
今年10月に待望の初来日公演が予定されているフィラデルフィア出身のシンガーソングライター。ステージ前に設けられているピットエリアには少しでも近くで見ようと意気込む観客が長蛇の列を作り、ピットオープンを待っていた様子から、彼のここ近年での人気ぶりが一目で分かった。缶ビール片手にカート登場。「Jesus Fever」、「KV Crimes」、「Wakin on a Pretty Day」や彼の人気を確かなものにした「Pretty Pimpin」などヒット・チューンを演奏。完璧なギター・ジャムを見せつけられた最終日の午後であった。
◎Father John Misty / ファーザー・ジョン・ミスティ
まったりとした午後の雰囲気に合わせてショウの中判は、曲をスローなテンポにし演奏。かと思えば、フロントマンのジョシュアが「Bored in USA」の演奏後「ボナルー!今夜は何をして楽しもう?テーム・インパラはいつも紙吹雪を使うけど、君らは知ってる。この曲でそれは起こりえないってことをね。」とジョークを言い「Holy Shit」を演奏。この曲の後半からは想像がつかないノイズが演奏される。それはまるでウィルコの「Via Chicago」のようでもある。その後アップテンポの「The Ideal Husband」を演奏しマイク・スタンドを叩きつけてショウが終了。190センチ以上のモデル体型の彼が華麗にステップ踏んだり、腰をくねらせセクシーに踊る姿、彼の言葉、振る舞い全てがジョークの一環で全て計算されたものだ。音楽的才能とユーモアの才能にその場にいた皆が魅了される。彼は新たなロックスターの定義を作った。この天才のステージを1日でも早く日本で見れる日が来ることを願う。
◎Jason Isbell / ジェイソン・イズベル
アラバマ出身の【グラミー賞】受賞シンガーソングライター。前日に起こったフロリダ・オーランドで起きた銃乱射事件のことを誰もが心痛めていた。この日の午前にプレス用に設けられたアーティストの記者会見でもジェイソンやサード・アイ・ブラインドのスティーブンがこの事件やアメリカの銃規制問題について自らの意見を語っていた。ステージに現れたジェイソンは演奏を前に「僕の心は世界で起きてるひどい事件に君たちと同様落ち込んでいる。人間は誰だって善人であると思うし、この事態を把握できる能力を持っている。最近起こっているメチャクチャな事態に一刻も早く終止符を打つことと、平和とともに生きれることを願う。それは一つのトリックであると思う。トリックとは思いやりと共感だ。それは僕が学んだ唯一の事なんだ」と語った。
◎Sunflower Bean / サンフラワー・ビーン
【SUMMER SONIC 2016】で初来日する3ピースながらも重厚なサウンド、シンガーでベーシストのジュリアの圧倒的なカリスマ性に誰もが一瞬で魅了されてしまう。長身のジュリアとギタリストのニックがかけあう様は一番小さなステージ出演だったが、演奏技術の高さ、ビジュアル、カリスマ性と全てを併せ持つ彼らが近い将来メイン・ステージ級のアーティストになるであろうと確信した。サマソニで絶対に見逃せないアーティストの一つである。
◎Swim Deep / スイム・ディープ
UKのインディ・ロック・バンド。サード・アイ・ブラインドやウィーンと同時刻のステージだったが、彼らのサイケデリックなシューゲイザー・サウンドに足を止めその場に留まる人が多数いた。
◎Third Eye Bling / サード・アイ・ブラインド
【SUMMER SONIC 2016】で再来日が決定しているオルタナティブ・ロック・バンド。90年代にヒットしたバンドが、畑違いとも言われていたボナルーの地で大歓声で迎え入れられた。フロントマンのスティーブンとギターのクリス・リードとの掛け合いは、剛柔・躁鬱など双曲の個性を上手く調和している。ビヨンセの「Mine」やプリンスの「I Would Die 4 U」をカバー。そして、前日オーランドで起きた銃乱射事件のために「みんな オーランドのことを想おう」と「Jumper」を演奏。 「君がその絶壁から戻ってくれるといいんだけど」、 「僕なら理解してあげられるよ」と歌詞にあるように、その場にいた誰もが同じ気持ちで歌い祈りを捧げた。それはボナルーで一番と言ってもいいほど美しい光景だった。
◎Death Cab For Cutie / デス・キャブ・フォー・キューティー
再来日が待望されるバンドの一つであるとも言えるデスキャブ。ここ数年でヘッドライナー級のアーティストへと躍進を遂げた。フロントマンのベン・ギバードのウィスパー・ヴォイスにセンチメンタルな曲はステージ上ではパワルフルなロックへと一転する。ステージで演奏されるほとんどの曲はスタジオ・バージョンではなく、「Transatlanticism」での彼のヘッドバンギングなどもライブでしか体験できない。
◎The Bluegrass Situation Super Jam feat. Ed Helms and Friends / ザ・ブルーグラス・シチュエーション スーパージャム feat. エド・ヘルムズ
映画『ハングオーバー!』シリーズに出演していたことでも知られる俳優のエド・ヘルムズがキュレーションを務めるザ・ブルーグラス・シチュエーションは毎年ボナルーの伝統的なものになりつつあるとも言える。去年、ロンサム・トリオとしてセルフ・タイトルのブルーグラス・アルバムを発表。エドもまたオーランドの事件の犠牲者の遺族に敬意を払い静かな曲調でスタート。のちにサラ&ショーン・ワトキンズをフィーチャーし、会場は一気に盛り上がった。エドは歌以外にもバンジョー、ギターとピアノを演奏。他にはラングホーン・スリム、サム・ブッシュ、アマンダ・シャイアズ、ザ・シークレット・シスターズなどが共演。ステージ脇にはジェイソン・イズベルが、去年9月に誕生した娘を連れ、妻(アマンダ)の立つステージを楽しんでいた。
◎Dead & Company / デッド&カンパニー
アメリカの伝説的バンド、グレイトフル・デッドのメンバーであるボブ・ウィアー、ビル・クルーツマ、とミッキー・ハートに加え、オールマン・ブラザーズ・バンドのオテイル・バーブリッジ、ラットドッグのジェフ・キメンティに、現代の三大ギタリストとして知られるシンガーソングライターのジョン・メイヤーが豪華競演を果たすスペシャル・バンド。ステージは、前編と後編に別れたスペシャルな2部構成。
しょっぱなから、ジョンとボブのギター・ジャムがスタート。ボブの伸縮自在なリズムギターに、ジョンのストラトキャスターの持ち味を最大限に引き出したプレイの競演はまさに伝説的瞬間であった。3時間強のステージは花火と共に幕を閉じた。
Photo & Text: ERINA UEMURA
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