2016/05/30 22:15
2016年5月27日、東京・原宿アストロホールにてカジヒデキが主催するイベント【BLUE BOYS CLUB】が開催され、カジヒデキ(BAND SET)の他、KONCOS、ザ・なつやすみバンド、ayU tokiOがライブ出演。そして小西康陽、KINK、カジがDJとして出演した。
【BLUE BOYS CLUB】(以下BBC)はカジヒデキが2008年から開催するイベント。今回はアストロホールの16周年、そして、カジヒデキの新作アルバム『THE BLUE BOY』のリリース、さらにカジヒデキのソロ・デビュー20周年という3つの記念すべきタイミングを祝して行われた。そんな経緯もあってか、イベントは若手とベテランのミュージシャン/DJが混じり合い、その音楽愛を分かちあうような祝祭感のあるものになった。
アストロホールのステージとフロアに設置したDJブースで交互にパフォーマンスが行われたこの日。カジヒデキのオープニングMCに続いてトップバッターとしてステージに登場したのはayU tokiO。先日、こちらも新作1stアルバム『新たなる解』をリリースしたの彼は、この日は自身のエレキギターとキーボードの二人編成で出演。その新作からMVを公開したばかり「米農家の娘だから」や、2014年に発表した「恋する団地」等を演奏。ミニマルなアンサンブルを起点に、フロントマンの猪爪東風のほんのりサイケデリックなギター演奏がフォーキーに美しく展開していく。独特の甘さを漂わせた猪爪の歌声も相まって、一番手に相応しい爽やかな感触を残した。
“クラブ”と銘打ったイベントであることからも分かる通り、DJタイムはイベントの重要な楽しみでもある。ayU tokiOに代わってDJを開始したKINKは、ムードをガラリと変えてパンクやニューウェーブを中心としたアグレッシブな選曲で盛り上げる。曲をプレイしながら楽しげに踊るKINKに合わせてフロアもより熱気を帯びてきた。
その熱を直に吸収するかのように激しいステージングを見せたのが、この日2組目のライブアクトとなったKONCOSだ。カジヒデキの新作でも重要な役割を果たした佐藤寛(Vocal, Guitar)と古川太一(Keyboard, Vocal)、そしてドラムの紺野清志の3人に、サポートのギター奏者とサックス奏者が加わった5人編成でステージに現れたKONCOS。その音楽性は、佐藤のカッティング・ギターが先導する鋭角的なポスト・パンク・サウンドと、バレアリックやハウス/ガラージといったダンス・ミュージックのサウンドを力強くマッシュアップしたミュータント・パンク。そこに佐藤と古川のダブル・ヴォーカルがポップスのエッセンスをドバドバと注ぎこむ。古川はステージ全体を使って全力で歌い踊り走る強烈なパフォーマンスで視覚的にも盛り上げた。ラストではザ・なつやすみバンドのMC Sirafuがトランペットで合流、更にカオティックなステージ模様となったことも印象的だった。
KONCOSのライブ後、DJに登場したのはカジヒデキ(HIDEKI KAJI)。ストーン・ローゼスやザ・スミスなど、“インディ・クラシック”ともいうべき、このBBCというイベントのスピリットを感じさせる選曲でリスナーを楽しませた。続いてステージに登場したのはザ・なつやすみバンド。新作『THE BLUE BOY』にMC Sirafu、そして中川理沙が参加したことがきっかけとなったBBCのニューフェイスだ。キーボードとドラムス、ベースの3楽器にMC Sirafuのスティール・パンとトランペットがオンするバンド・サウンドは、ギターが中心となった前二組とは全く印象が異なる。「自転車」「パラード」など既発の楽曲に加え、この日は7月20日にリリースする新作アルバム『PHANTASIA』からの新曲の披露。MC Sirafuの「レコーディングが終わったからってライブで演奏出来るわけじゃないんだぞ!」という名言で喝采を浴びつつ、ネオ・ソウル風のリズム・セクションがバンドの新たな洗練を感じさせる曲もあり、今後の展開がますます楽しみになるステージだった。
カジヒデキのステージの直前にDJブースに入ったのは小西康陽。ザ・ビートルズ「I Saw Her Standing There」やリッキー・マーティンの「Livin' La Vida Loca」(!)等、総じてロックンロールと呼びたくなる曲の数々を、矢継ぎ早に7インチで掛け、この日、KONCOSの古川、そしてこの後のカジと並んで、最も激しいパフォーマンスとなった。そのプレイ自体の素晴らしさはもちろん、爆音でロックンロールの7インチの数々を聴ける、ファンにとっては堪らないひと時となったのではないだろうか。
そんな最高のお膳立てを受けて、この日、最後に登場したのがカジヒデキ BAND SET。KONCOSの佐藤(ギター)と古川(ここではドラムスを担当)、そしてカジがベースを持ち3ピースでの演奏となった。ポップスのソングライティングの粋とも言えるカジの楽曲を、ソリッドでささくれだったアンサンブルで聴かせる、そのユニークなバランス感もとても魅力的。前作『ICE CREAM MAN』からの「TROPICAL GIRL」、そして「甘い恋人」等の代表曲も、3ピースのパワフルな演奏とヴォーカルで聴かせていく。中盤ではMC Sirafuと中川理沙が登場して新作から「ヒーローは君と僕」を披露。その後のトークで、同曲のMVを千葉・一番星★ヴィレッジでドローン撮影したエピソードから、自身がキュレーターをつとめる8月の【PEANUTS CAMP】の告知に繋げるという場面もあった。始まりから終わりまで全体に目を配りながら、半ばDIYとも言える形でイベントを成立させ、自身のライブでは、出演者の誰よりも精一杯の演奏を見せる。そんな姿に、ミュージシャンとしてだけではなく、イベントの主催者としての頼もしさも感じるようなパフォーマンスだった。
その他にも、時にバンドメンバー自身が物販の手売りを行うなど、気の置けない距離感が随所に感じられるところも嬉しいポイント。一方で、カジヒデキと言えば、その20年のキャリアが証明するように、J-POPの歴史に大きな足跡を残して来た先駆者でもある。6月14日と16日のビルボードライブ東京・大阪公演は、そんな彼が積み上げて来たものを、あくまで気の置けない仲間の一人として楽しむ絶好の機会となるのではないか。そして、8月の【PEANUTS CAMP】は、またカジのDIYな頼もしさが感じられる一幕になるだろう。これから更にギアを上げて続くカジヒデキの20周年に、ぜひ注目して欲しい。
◎公演情報
【ASTRO HALL 16th Anniversary BLUE BOYS CLUB“THE BLUE BOY”release party】
2016年5月27日(金)<終了>
【カジヒデキ “GOOD FELLOWS” 20th Anniversary Billboard Special】
ビルボードライブ東京
2016年6月14日(火)
1st 開場17:30/開演19:00
2nd 開場20:45/開演21:30
詳細:http://bit.ly/1TOc0U0
ビルボードライブ大阪
2016年6月16日(木)
1st 開場17:30/開演18:30
2nd 開場20:30/開演21:30
詳細:http://bit.ly/25vWbXx
【PEANUTS CAMP】
千葉・一番星★ヴィレッジ(市原市オートキャンプ場)
2016年8月20日(土)駐車場開場 8:00/開場 10:00/開演 12:00/終演 21:00(予定)
2016年8月21日(日)駐車場開場 6:00/開場 8:00/開演 10:00/終演 19:00(予定)
◎リリース情報
『THE BLUE BOY』
2016/05/25 RELEASE
DDCB-12088 3,024円(tax in.)
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