2016/05/30
デビュー当時は「新世代ブルース」を奏でるシンガーソングライターとして、そして21世紀に入ってからはサーフ・ミュージックを支える存在、そして最近では再びブルースと向き合い円熟かつエキサイティングなサウンドを発信。時代とともに進化している、G・ラヴ。デビューから20年以上、実は彼の初となる日本でのソロ公演が、5月29日、東京・渋谷クラブクアトロにて開催された。
日曜の夕方スタートの公演ということもあってか、会場はすでにいい感じにお酒の入った観客たちが、それぞれに会話を楽しみながら、主役の登場を待っていたようなリラックスした空間。そこにピース・サインを掲げ、フラッとアコースティックギターを抱えて登場したG・ラヴ。「コンバンワ!」と日本語で挨拶をすると、椅子に腰掛け、昨年末にリリースされた最新アルバム『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』に収録されている「ニューヨーク・シティ」をパフォーマンスする。ギターにブルースハープ、さらにフットドラムを駆使しながら、奏でる圧倒的なブルースからは、ニューヨークの喧噪が見えてきたのはもちろん、彼の長いキャリアのなかで培ってきた渋味も響いてきた。その後も、最新作に収録された失恋ソングという「バック・トゥ・ボストン」をカラッとしたサウンドで響かせ、ブッカ・ホワイトのカバーで11年に発表したアルバムのタイトル曲である「フィクスィン・トゥ・ダイ」を再構築して披露。さらに途中でミスタッチをして「やっちまった」という声も出すのだが、それも楽曲のフレーズにしてしまうという即興をみせる場面もあるなど、ソロ・パフォーマンスだからこそ聴くことのできたグルーヴが満載だった。
彼が所属するレーベル<ブラッシュファイアー>の主催者であり盟友でもあるジャック・ジョンソンとのコラボ曲「レインボー」(2004年『シッカー・ザン・ウォーター』サントラ盤に収録)や、「ロデオ・クラウンズ」(1999年『フィラデルフォニック』に収録)も披露するなど、過去を振り返る場面もあったステージ。実はここ渋谷クラブクアトロは、彼が1995年6月に初めて来日公演をおこなった“思い出の地”。初来日公演は、共に“ブルース四天王”と評された、ザ・ジョン・スペンサー・ブルースエクスプロージョンとのスプリット公演で、当時のことを鮮明に記憶していたらしい彼は「あれから20年経つんだ」と、ちょっと感慨深げだった。また「あの公演に来ていた人はいる?」と問いかけると、フロアから手を上げる人が続々。それを見ると「おー!ブラザー」と笑顔を浮かべ、あの当時のフレッシュな気持ちを思い返すように、94年にリリースされたデビュー盤から「ベイビーズ・ゴット・ソース」をパフォーマンス。軽快な「ラグ・モップ(ヒップホップとブルースをミックスさせたG・ラヴ開発のサウンド)」を轟かせ、会場を20年前にタイムスリップさせた。
アンコールでは、ファンからのリクエストに応じる形で3曲を披露。なかでも観客からの要望が高かった「ステッピン・ストーンズ」(1997年『イェー、イッツ・ザット・イージー』収録)は、最初どう演奏するのか忘れてしまった演技をし、観客をやきもきさせる場面もあったりなど、茶目っ気もみせてくれたG・ラヴ(しかし演奏は、当時の軽快さを残しつつも、深みのあるブルースを漂わせるもので、G・ラヴや楽曲が良い流れで進化・成長している姿がわかる素晴らしいパフォーマンスだった)。MCでは「今年は大好きな日本に2度も来られる機会を作ってもらってうれしいよ。1回目が今回で、次が7月のフジロック。今度は最高のプレイヤーである(スペシャル・ソースのメンバーの)ジミー・“ジャズ”・プレスコット(b) 、ジェフリー・“ハウスマン”・クレメンス(dr)と一緒に、今日とは違うパフォーマンスするよ。また苗場で会おう!」と語っていたが、今年で20周年を迎えるフジロック・フェスティバルのステージに、5年ぶりに登場することが決定している。そこでは、今回とはひと味異なるスリルと興奮、そしてピースとラヴを吸い込むことができることは確実。さらに夏が待ちきれなくなったライヴになった。
Text by:Takahisa Matsunaga
Photo:Yoshika Horita
◎公演情報
2016年5月29日 東京・渋谷クラブクアトロ
◎リリース情報
G・ラヴ&スペシャル・ソース
『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』
発売中
SICX-16 2,400円(tax out.)
※ボーナス・トラック2曲収録
iTune:http://apple.co/1XZjovK
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