2016/04/15
激動のフランス革命を舞台に、断頭台の露と消えた詩人シェニエと伯爵令嬢マッダレーナの劇的な恋物語を描いた、ウンベルト・ジョルダーノ歌劇『アンドレア・シェニエ』が新国立劇場で幕を開けた。
コンサートなどで単独で歌われることの多い名アリアが随所に散りばめられたこのオペラ、新国立劇場では2005年以来3回目の上演となる人気のプロダクションだ。「色彩の魔術師」と言われるフィリップ・アルローの演出は、全体は白を基調とし、トリコロールカラーを衣装や小道具のアクセントとしたシンプルでモダンなもの。ギロチンの歯を思わせる斜めのラインをモチーフとしたシャープなセットと、重厚でクラシカルなドレスをはじめとするリアリティのある衣装が、洗練された世界観を創り出している。
タイトルロールのシェニエを演じるのは人気テノール、カルロ・ヴェントレ。1幕の名アリア「ある日青空を眺めて」を輝かしく力強い声で歌い上げ、客席からは大きな拍手とブラヴォーが注がれていた。またもう一人の主役とも言える革命の申し子ジェラールはやわらかく知性的で深い声を持つヴィットリオ・ヴィテッリ。その苦悩と革命への情熱が、声から深く滲み出てくる熱唱を披露した。
伯爵令嬢マッダレーナはヨーロッパ各地で評判のマリア・ホセ・シーリが、2015年のトスカに引き続いての登場。1幕ではキュートなやんちゃ娘だったマッダレーナが、革命を通じて成長し、3幕では芯を持った大人の女性として「亡くなった母を」を歌う、そのコントラストを明確に感じられ、その演技力と歌唱力には心を動かされずにいられない。トスカとマッダレーナは非常によく似たシチュエーションに置かれながら、全く違う背景と結末を背負ったキャラクターだと言えるが、この希有な名女優による演じ分けを見られるのは幸運なことと言えるだろう。
オペラ全編にロマンティックで美しい名アリア、重唱を散りばめ、重厚なオーケストレーションがその壮大な物語を引き立てている『アンドレア・シェニエ』。新国立劇場では4月23日まで全4公演が行われる。text:yokano 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
◎公演概要
ウンベルト・ジョルダーノ作曲
オペラ『アンドレア・シェニエ』
会場:新国立劇場 オペラパレス
日時:
2016年4月14日(木)19:00、4月17日(日)14:00、4月20日(水)19:00、4月23日(土)14:00
More info:http://goo.gl/L1JIsd
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