2016/04/04
デビュー以来、「後世に残せる作品を録音したい」というコンセプトでアルバムを作り続けてきたヴァイオリニスト吉田恭子。3月23日にリリースしたアルバム『Romanza』も、往年のヴィルトゥオーゾ達が遺した作品にスポットを当てた一枚だ。インタビューの前編では、今回のアルバムに込めた思いを聞いた。
―今回リリースされたアルバム『Romanza』ですが、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
吉田恭子:19世紀から20世紀にかけて、クライスラーやオイストラフといった素晴らしいヴァイオリニストが活躍した時代がありました。今回は、その時代に活躍したヴァイオリニストが、自身で演奏するために作編曲したものを集めてみました。初めてクラシックを聴く方にも「この曲、聞いたことがある」とか「ロマンチックな曲だな」というように手に取っていただきやすいよう、ヴァイオリンの歌心や技巧を楽しんでいただける作品を選びました。
―シューマンの「献呈」は、とても有名な曲ですが、ヴァイオリンとピアノの編成というのは珍しいですね。
吉田:これは、ハンガリー出身のヴァイオリニストであるレオポルド・アウアー編曲によるものです。ハイフェッツの録音を聴いたことがあり、ぜひ今回のアルバムに入れたいと思ったのですが楽譜が全然見つからなくて。なので録音を聴きとって、作曲家の吉村龍太さんに助けていただきながら楽譜を作りました。他にも、ワックスマンがワーグナーの楽劇を編曲した「トリスタンとイゾルデ幻想曲」も、とても美しい作品なのですが楽譜が見つからず。ワックスマンのご子息に連絡して、楽譜を送っていただきました。あと、リスト「ワルツ・カプリース第6番<ウィーンの夜会>」は、ドイツで活躍されているヴァイオリニストの八嶋博人さんが、この曲を名古屋で演奏されるという噂を聞いて、矢嶋さんが所属されているオーケストラの方経由で連絡して、楽譜をお借りしました。
―楽譜が手に入るまでの道のりが、それぞれドラマチックですね。曲目を見ると、声楽曲やオペラ曲など歌をアレンジした作品が多いです。
吉田:ヴァイオリンは女性の声に最も近い楽器と言われています。きっと「素晴らしい歌曲を自分もヴァイオリンで弾いてみたい」と思ったヴァイオリン弾きが、たくさんいたんでしょうね。
―コルンゴルトの歌劇『死の都』の「ピエロの踊り歌」もとても綺麗でした。
吉田:この作品は、亡くなった妻を忘れられないでいる主人公が、その妻にそっくりな女性を亡き妻と思い込み、幻想の世界に入り込んでしまうというストーリー。大切な人を失った悲しみや、遺された人間はそれでも生きていかないといけないという強いメッセージが込められています。他にもシューベルトの『アヴェ・マリア』もとても有名な曲ですが、ヴァイオリンで演奏される機会は滅多にありません。こんな楽譜もあるんだよということを、お伝えしたくて選びました。今回の作品は、どれもヴァイオリンを知り尽くしたヴァイオリニストがアレンジしたものばかり。弾いていても、ヴァイオリンの良さが伝わってきます。こういった知られざる名曲を録音することで、若い方たちが、「この曲を弾いてみたい」というきっかけになれば嬉しいですね。文:高嶋直子
◎リリース情報『Romanza -ロマンツァ-』
2016/03/23 RELEASE
NYCC-27299 2,700円(tax in.)
more info:http://naxos.jp/news/nycc-27299
◎イベント情報【『Romanza-ロマンツァ-』発売記念 吉田恭子 ヴァイオリン・ミニコンサート&サイン会】
日時:5月12日(木)18:30
会場:銀座山野楽器本店 7Fイベントスペース JAM SPOT
https://www.yamano-music.co.jp/docs/event/index_honten.html
◎公演情報【吉田恭子ヴァイオリンリサイタル~名器グァルネリ・デル・ジェスで聴く『奇才プロコフィエフ』~】
5月15日(日)名古屋・宗次ホール
6月3日(金)東京・紀尾井ホール
出演:吉田恭子(ヴァイオリン)、白石光隆(ピアノ)
more info:http://www.kyokoyoshida.com/
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像