2016/01/29
昨年、ドクター・ドレーによる久々のアルバム『Compton』において、多数の楽曲にフィーチャーされ大活躍を見せていた、ラッパー/シンガーソングライターのアンダーソン・パーク。そんな彼が、この1月にニュー・アルバム『Malibu』をリリースした。ネオ・ソウルの息遣いと美しいコーラス、アンダーグラウンド・ビートのジャジー&スモーキーなグルーヴ、トロピカルなテイストやディスコ・チューンまでが詰め込まれた、濃密さの中でポテンシャルの高さを伝える一枚である。
アンダーソン・パークは、カリフォルニア南部の町オックスナード生まれの29歳。突然仕事を解雇され妻子と共に路頭に迷っていたところを、サーラー・クリエイティヴ・パートナーズのシャフィークに助けられ、アシスタントとして働きながら多くのことを学んだという。その時期にはブリージー・ラヴジョイ名義で活動、リリースも行った。2014年にはアンダーソン・パーク名義で、エレクトロ/トラップ色の強いアルバム『Venice』を発表している。
新作『Malibu』のテイストは到底一口には語り得ないものだが、オープニングを飾るメロウなラップ・ソウル・チューン「The Bird」をアンダーソン・パーク自身がプロデュースしているところに、彼の舵取りの確かさが伺える。その後次々に登場するプロデューサー陣の顔ぶれが豪華で、50セントやエミネムなどアフターマス関連作品を手がけてきたDJカリル、「The Water」で鋭利なビートと美しく幻惑的なサウンドの中に誘うマッドリブ、ヒップホップのクールなビートを象徴するような多作家・9thワンダー、そして先頃、ビルボードライヴで来日公演を行ったばかりのスーパードラマー/プロデューサー=クリス・デイヴetc.といった具合である。
ヴォーカルのゲストにも、スクールボーイ・Qやザ・ゲーム、タリブ・クウェリといったビッグ・ネームが招かれており、アンダーソン・パークは本作でさながら、メジャー/インディーのヒップホップ・シーンを橋渡しするキーマンのような存在感を振りまいている。2015年末にはノリッジとのユニット=ノーウォーリーズ(Nxworries)として名門インディーのストーンズ・スロウから『Link Up & Suede EP』をリリースしていたが、本作『Malibu』も以前と同様、地元のローカル・レーベルからのリリースだ。メジャーとインディーを自由に行き来し、マルチな才能で人々を惹きつける。それこそが、アンダーソン・パークの底知れない魅力なのかも知れない。
[Text:小池宏和]
◎リリース情報
『マリブ』
2016/01/27 RELEASE
Steel Wool/Empire
ERECDJ218 2,300円(tax in.)
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