2015/12/01
佐藤竹善によるクリスマス・アルバム第三弾『Your Christmas Day III』が、2015年12月2日にリリース。また同月4日にはビルボードライブ東京、7日にはビルボードライブ大阪にて【Your Christmas Night Again】と題したスペシャル公演も行われる。
インタビュー前編に続き、今回はいよいよ後編。今作の目玉である10分を超える大作組曲「The Lost Treasure ~The Adventures of Jaime~」、そしてその音楽観について佐藤竹善に聞いた。
◎10分を超える組曲「The Lost Treasure」とミュージカル映画
-アルバムのもう一つの大きなトピックスはラストに収録された「The Lost Treasure ~The Adventures of Jaime~」だと思うのですが、これについても詳しくうかがってもいいですか? 4つの章から構成された組曲という大作ですね。
佐藤:元々はアルバムのブックレットをケーキのカタログ本のパロディにしたいというところから始まって、そのケーキの写真を何年か前に知り合ったパティシエの小山さんにお願いしたんです。その時に小山さんから、「今度パリの大会に出品するんだけど、その背景に音楽をつけたい」と相談されて。最初は意味がわからなかったんですが(笑)、説明を聞いたらまるで『ロード・オブ・ザ・リング』のような壮大な物語があって。彼がチョコレートを作るにあたって、その背景にはどういう歴史があるのか、例えば、元は原住民が作っていたカカオをスペイン人が搾取してから始まり…などの背景から何を伝えていくのか、という気持ちとか。その情熱と掘り下げ具合に非常に感動して、引き受けることにしました。
最初は物語全体に音楽をつけるというより、そのテーマ音楽を作るイメージだったのですが、小山さんと話しているうちに、全体のストーリーをミュージカルのように展開する組曲のようなものが面白いのではないかということになり、歌詞もそのような展開でShantiと詰め、今回の形になりました。
-何か事前に参考にした作品などはありましたか?
佐藤:参考にした作品というより、参考にした世界はやっぱりミュージカルですね。それもミュージカル・シネマ。(映画の)『コーラスライン』だったり『ラ・カージュ』だったり、ああいう一連の作品が土台としてあって。最近、と言っても10年くらい前ですけど、とてもよかったのは『ムーラン・ルージュ』だったんですよ。ポリスやエルトン・ジョンの曲も全てミュージカルアレンジで、しかも映画映像ならではの編曲で組曲になっていて。イメージとしてはあれもありましたね。
幸いというか昔から、50年代や60年代の『5つの銅貨』とか『マイ・フェア・レディ』とかああいうミュージカル映画が好きだったので、そういう意味では作りやすかったかも知れないですね。
-冒頭からかなり複雑に展開する楽曲ですよね。
佐藤:結構複雑なんですよ。ただ、作っている時は、全体を俯瞰で見て起承転結を考えるというような、いわゆるクラシック的な作り方はしていなくて。時間の流れの中で、ポップスのワクワクするメロディが常に繋がって行くような作り方をしました。これはやっぱりクラシックとミュージカル音楽の大きな差だと思うので。隠し味的に、前半のフリ(のメロディ)を後半にも持ってきたり、変拍子を入れたり、キーもそれぞれ前曲比で設定してたりするんですけど、作業的にはあくまで冒頭から順番に書いてるんです。
◎音楽の持つエンターテイメントとしての力
-CDブックレットには小山さんの書いた物語も載るんですか?
佐藤:はい。初回限定盤だけ付きます。でも、原作を知らなくても、曲と歌詞を見てアドベンチャーなストーリーをみんながイメージして貰えるように意識して曲を作りました。もちろん原作を知ったらより深く楽しんで貰えるんだけど。そういう関係性を作らなければいけないと思ってました。
-どちらかというと入り口の方に音楽があるような。
佐藤:そうですね。映画と原作の関係と一緒だと思います。
-やはり佐藤さんの中にご自身の作品はエンターテイメントとして届けたいという気持ちがあるんですね。
佐藤:そうですね。やっぱり音楽自体がエンターテイメントだと思うので。それは「エンターテイメント」の素材としての音楽ではなく。物語が感動がどうこうという以前に、気持ちがワクワク動くというのが音楽の力ですよね。
-なるほど。先ほど、「ラジオで掛かる曲」ということを言ってらっしゃっいましたね。
佐藤:そうですね。ラジオで掛かって欲しいですね。僕もラジオで育ちましたし。ラジオで掛かったものがテレビで掛かるというのが好きですね。
-ラジオが一歩先を行っていて。
佐藤:もちろん色んなタイプの音楽があって良いんですけどね。でも、テレビありきの音楽がラジオでも掛かるという流れは、僕はあまり興味がないですね。
-音として何か豊かなものがあって欲しいと。
佐藤:そうです。まずは音楽としての素晴らしさがあって、その上で色んな要素、ダンスとか、ルックスとかが付随するのは素晴らしいと思いますけど、それが逆転した形は、僕は興味がないですね。そういう世界も当然あっていいんですけどね。
一見そう見えるものでも、実は音楽もハイクオリティーで映像主体な音楽は世界にたくさんありますから。
-確かにラジオって一番、そういう音楽がもともと持っていたものが試されるメディアかも知れませんね。
◎日本のクリスマス・ソング
-ご自身の作ったものとは別に、何かクリスマス・アルバムでお好きなものはありますか?
佐藤:たくさんありますけど、別格なのはナット・キング・コールのものですね。あと、最近ファンクラブでも紹介したんですが、ジェイムス・テイラーの「アット・クリスマス」も歴史的な名盤で、ずっとロングセールスしてます。面白いのは今回、新装版で再発されて、新曲が2曲プラスされてるんですねよ。進化するクリスマス・アルバムなんです(笑)。
-そう考えると、クリスマス・アルバムに取り組むアーティストって、特に欧米では非常に多いですよね。
佐藤:特別な認識がやはりあるんでしょうね。日本もそういう風になったらもっと楽しいだろうなと。まあ、いずれはなると思うんですけどね。実は去年(平原)綾香ちゃんもクリスマス・アルバムを出していて。僕も去年のクリスマス・アルバムにファレル(・ウィリアムズ)の「ハッピー」を入れたんですけど、彼女もその作品にあの曲を入れていたんです。
-「ハッピー」も別にクリスマスの曲ではないですよね。
佐藤:ですよね。僕はいわば学習した結果、意識的にあえてそういう曲をクリスマス作品に入れてるんですけど、彼女は単純に「この曲もクリスマスに合うんじゃない?」という発想で入れていて。そう考えると新しい世代の発想だし、日本も欧米の成熟した形に近づいてるんだなと思います。「これはクリスマス・ソングなの?」みたいな既成概念からの発想じゃなく、クリスマス作品を楽しめている。それもあって今回デュエット相手に選んだというのもあるんです。
-なるほど。今回は基本的には全部の洋楽のカバーですが、仮に日本語で何かクリスマス・ソングを、となったら何か歌いたい曲はありますか?
佐藤:ないですねぇ。(山下)達郎さんの「クリスマス・イブ」も、カバーしたいかと言ったら、そのまま聴きたいって感じですからねえ(笑)。
-日本語であの曲以降、本当に定着したクリスマス・ソングってないですよね。
佐藤:ないですね。そのアーティストのファンの方の中ではありますけどね。でもやっぱ企画として前面に出す、クリスマスに売れるから出すぞって感じが出ているうちは、そのアーティストの外側には出て行かないと思うんですよね。大事なのは、曲自体の持つ狙って無ささというか。
-なるほど。日本でもクリスマス・ソングがより根付いてくれば、いつか次のヒットが出てくるのかも知れないですね。
佐藤:だと思いますね。それこそ綾香ちゃんの「ハッピー」の選曲じゃないですけど、若い世代で、ピュアにやっちゃう人がもっと出てくれば、いつかブロック・バスターな誰かがやると思いますよ。
***
◎リリース情報
『Your Christmas Day III』
2015/12/2 RELEASE
初回限定盤 UPCH-7076 4,320円(tax in.)
通常盤 UPCH-2059 3,240円(tax in.)
URL:http://sp.universal-music.co.jp/chikuzensato/
◎公演情報
【Your Christmas Night Again】
2015年12月4日 ビルボードライブ東京
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
2015年12月7日 ビルボードライブ大阪
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
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