2015/11/06
沁みる“インディ”アルバムだ。野田努が書くように「インディ・キッズっていうのは(略)平日ひとりで屋上に上がること」なのだとしたら、筆者のような三十路過ぎはどうしたら良いインディ中年になれるだろうか。夜にひとりでうなぎとピーナッツをアルコールで流しこむのはそれに準ずるだろうか…。
カーネーションの直枝政広と、ワールドスタンダードなどで活動する鈴木惣一朗によるSoggy Cheerios。ともにベテランといえる2人がユニットを組み、おたがいの生まれ年をタイトルに冠したデビュー・アルバムをリリースしたのが2013年。本作はそんな彼らの2作目にあたる。
既に自分の音楽性を確立した音楽家同士のユニットに当てるにはむずかしい言葉であるが、こう聴きかえしても『EELS & PEANUTS』はまぎれもないインディ・アルバムだ。洗練されているようで、ボリュームを上げればどこまでも生々しい楽器のひびきが飛びこんでくるそのサウンドは、完全にインディのそれ。あるいは、直枝と鈴木、それぞれのヴォーカル曲を聴きくらべれば、いやというほど両者の音楽面での個性のちがいが伝わってくるアルバムの作りも、完全にインディ・レコード的だといえるだろう。
第一、1曲目の「あたらしいともだち」の歌いだしからして〈土の上で寝転がって/星を探そうよ/夜を吸い込んで/夜を吸い込んで〉と来る。50を過ぎた2人の作品の歌いだしとしては、ロマンチック過ぎるとあなたが感じるとしたら、それは間違っている。大人だろうが、こどもだろうが、何も変わらない。何物(者)にも自分の世界は変えられたりしないのだと知っていること。それがインディということだ。
〈Nothing's gonna change my world〉と歌ったのはジョン・レノン。そういえばSoggy Cheeriosのインタビューで話された、直枝が何枚も『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を買ってしまうというエピソードも最高だった。かくして、本作の「うつくしいとしること」は、あの「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」のように、次々と移ろいゆく美しいメロディを持っている。直枝と鈴木による、大人のレノン&マッカートニーは全然大人じゃない。それは今だからこそ/今もなお、あなたがこのアルバムを聴くべき理由だと思う。
そんな2人(とサポートメンバー)による、新しいSoggy Cheeriosのライブ。最も近い日どりは11月9日に下北沢GARDENにて。おそらくはよりビターで、よりスリリングなライブになるはずだ。学割もあるので若い人は早めの準備がオススメです。
文:佐藤優太
◎リリース情報
『EELS & PEANUTS』
2015/10/14 RELEASE
P-VINE RECORDS
PCD-18799 2,778円(tax out.)
◎公演情報
【『EELS & PEANUTS』アルバム発売記念コンサートツアー 】
2015年11月9日(月) 東京・下北沢GARDEN
OPEN:18:30 START:19:30
前売:4,500円 当日:5,000円 (1ドリンク別)
学割:2,500円(予約フォーム:http://soggycheerios1109.peatix.com)
◎「あたらしいともだち」MV
https://youtu.be/txYQ6etqjzY
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