2015/09/10 10:50
ボーイ・ソプラノ。それは少年が青年に成長するまでに神が与えた、奇跡の時間。複雑な生活環境で生きてきた少年が、米国一のエリート少年合唱団で様々な出会いと試練を超え、才能を開花させ、自身の人生を切り開いていくドラマだ。
監督は映画『レッド・バイオリン』『グレン・グールドをめぐる32章』、「シルク・ドゥ・ソレイユ」演出など、ダンスや音楽を主題にした数々の作品を手がけてきたフランソワ・ジラール。また少年達を指導する厳格な教師役として登場するのは、アカデミー賞俳優ダスティン・ホフマンだ。ジャズ・ピアニストを目指しかつては音楽院に在籍し、初の映画監督作品は『カルテット!人生のオペラハウス』と、音楽との深い縁を持つ俳優でもある。
ドラマの中核を担うキャラクターや役者への注目もさることながら、ストーリーが進むにつれ少年達により演奏される、多くの合唱曲も本映画の見所のひとつ。ドラマにおける「配曲の妙」を楽しめるのが、本映画の特徴ではないだろうか。気になるソング・リストは公式サイトで見ることができる。アメリカの少年合唱団がそのドラマの舞台だけあってブリテンやヘンデルなどの英語楽曲が多く採用されているのが印象的だ。またウェールズからはアディエマスの楽曲も登場。選曲の幅広さも本作の魅力の一つと言える。
少年合唱団の登場時に演奏されるブリテン「キャロルの典礼ーーこの小さな赤ちゃんは」。その神秘的で複雑なカノンが織りなす勇ましさや勢いは、少年達の合唱に対する勢いを感じさせ、圧倒されるシーンのひとつ。また誰もが知る名曲、フォーレのレクイエム「ピエ・イエズ」が鍵となるシーンは、歌詞の内容と主人公であるステットの状況が相まって、心動かずにはいられないドラマ展開を見せる。
他、聖堂内で円陣を組んで奏されるトマス・タリスの40声のモテット『Spem in Alium 我、汝の他に望みなし』は、まさに耳福。ソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バスの5声部を1組とし、それが8組で構成されるという大曲だ。声が織りなす小宇宙の中心に体が包まれるような音響的体験が、視覚的にも聴覚的にも得られるだけに、映画館という環境で「聴いて欲しい」シーンとなっている。
映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は9月11日よりTOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー。ヒューマンドラマとしての楽しみはもちろんのこと、透き通るボーイクワイアを堪能するためにも、是非映画館に足を運んで欲しい。text:yokano
◎公開情報『ボーイ・ソプラノただひとつの歌声』
9月11日(金)、TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
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Photo (C)Myles Aronowitz 2014
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