2015/08/11
最新アルバム『LOVE TRiCKY』をひっさげ、今年6月より【大塚 愛 LOVE TRiCKY LIVE TOUR 2015~ヘルシーミュージックで体重減るしー~】を開催した大塚 愛。恵比寿LIQUIDROOMでの千秋楽まで前代未聞の挑戦を敢行し、クリエイターとしての素顔を露わにした。
<デビュー当時は「オシャレは大衆性ではない」っていう判断だったんです>
世間の大塚 愛のイメージは「さくらんぼ」や「SMILY」等に象徴される、明るく楽しい陽気なポップシンガー。もしくは「プラネタリウム」や「恋愛写真」等に象徴される、泣けるバラードを歌うポップシンガー。もうちょい踏み込んで聴いている人なら「黒毛和牛上塩タン焼680円」や「CHU-LIP」等に象徴される、ふざけ……コミカルな音楽で楽しませてくれるポップシンガー。いずれにしてもいくつものポップス、リスナーがカラオケで歌いたくなるようなポップミュージックを発信してきた歌手と捉えている人がほとんどだろう。
もちろんそれは大塚 愛のミュージックヒストリーを語る上で欠かせない要素だし、いずれの楽曲も全身全霊を込めて生み出してきたものであることは間違いないのだが、彼女は最新アルバム『LOVE TRiCKY』のような“いわゆるカラオケで歌う系の曲じゃないもの”やエレクトロ基調の音楽を実はデビュー当時から表現したがっていた。
以下、本人へのインタビュー(http://bit.ly/1DgPYvD)より。「デビュー当時は「オシャレは大衆性ではない」っていう判断だったんですよ。日本ではオシャレが大衆向きではなくて、カラオケで歌いやすいものだったり、当時はまだまだ歌手優勢の時代だったので、シンガーソングライターというより歌手が歌っているものをみんなでカラオケで歌う時代に思えて。そこで私がオシャレ系の曲でデビューしたところで、聴いてもらえる機会はおそらく少ないだろうと。で、当時はとにかく売れることが一番の目標だったので、そっち系の曲はとりかえず1回置いておいて、カラオケで歌えるもの。いわゆるJ-POP、王道をやるって選択したんですよね。」
<Perfumeが同じようなことをやって爆発的に売れちゃって……>
彼女はその一方で、自分の求める音楽性はアルバム等に少しずつ散りばめ、なるべく反対側に移行できるようにゆっくりゆっくりと計画を進める。また、別名義でエレクトロの曲を出したこともあったが、その最中であの3人組が大ブレイクしてしまう。「それをやってたら、Perfumeが同じようなことをやって爆発的に売れちゃって、「あ、私、これまたパクりみたいに言われるな」と思ってすぐやめたんです(笑)」まさか大塚 愛の音楽人生をPerfumeや中田ヤスタカの台頭が狂わせていたとは。
しかし彼女は諦めない。「自分の声を変えずにエレクトロで成立させられる方法をずっと模索はしていて、Rabbitっていう集団に参加したときに、エレクトロに自分の声をどう遊ばせて乗せることができるかっていうことに挑戦したら、自分の中では上手くいったんです。「これは出来るな!」っていうところで、それを一緒に創ってくれる人を探して、今回の『LOVE TRiCKY』が出来たっていう」ここに辿り着くまで、なんと12年。ようやく出逢えたキーパーソン、STUDIO APARTMENT阿部登と共同で「改めて聴く音楽について掘り下げたい」と、これまでのイメージを一新する勝負作を完成させたのである。
<エレクトロ=ダイエットになると定義するエンターテイナーぶり>
そのアルバムを引っ提げた全国ツアー【大塚 愛 LOVE TRiCKY LIVE TOUR 2015~ヘルシーミュージックで体重減るしー~】は、音楽は自由だからこそ楽しい。そのことを大塚 愛自身が全力で楽しむことで発信していくような内容だった。アルバム『LOVE TRiCKY』はもちろん、前述した「さくらんぼ」や「SMILY」等のポップナンバーもエレクトロミュージックにリアレンジし、音の海の中を泳ぎ、揺れ動き、ダンスすることの心地良さを教えていく。
過去の大塚 愛を好む人にはアレルギー反応が出てもおかしくないチャレンジだったと思うが、開演前から「BABASHIのテーマ」新バージョンをエンドレスリピートしたり、照明を駆使しまくった視覚効果でも感動や興奮を与えたり、大塚さんがこれまでにないぐらい妖艶な動きを見せたり、「ラーメン3分クッキング」でコール&レスポンスを繰り広げたり、オープニングを再度……ちょっとしたトラブルも嬉しい演出に昇華したり、ツアータイトルに【ヘルシーミュージックで体重減るしー】と入れて“エレクトロ=ダイエット”と定義してみせていることも含め、それこそ12年にわたってエンターテイナーを務めてきた大塚 愛ならではのフックが満載であり、新境地を共に楽しんでもらいたい意識が反映されたそれらは、すべて功を奏していた。
<“歌う喜び”より“創る喜び”「クリエイティブなことを続けていきたい」>
ツアーファイナル公演、アンコールで再登場した彼女はこう語った。「幸せです。今回のアルバムは私の好きなものをやったったアルバムで。「やっぱり自分は歌手じゃないんだな」ってこれを創りながら本当に思ったんですけど……というのは、私は歌をうたう人が歌手だとは思ってなくてね。歌を極めている、「歌で勝負してんだ!」っていう人が歌手だと思っているので、今回の『LOVE TRiCKY』みたいなアルバムでは、私は声は一部の楽器というか、他のギターとかドラムと同じように楽器として、なんかそこらへんで遊んでいるみたいな立ち位置で歌を入れて。やっぱり私は“歌う喜び”というよりかは“創る喜び”がすごく大きいんですね。創っているときの幸せというか、湧き上がるワクワク。「あ、自分はやっぱりクリエイターなんだな」とすごく確認したアルバムにもなりました。これからもですね、何かクリエイティブなことを続けていきたいなと思っているので、ぜひ皆さんよろしかったら聴いてください」
ようやく露わにすることができた素顔。この先の大塚 愛はどんなクリエイティブなことを提示してくれるのか? ……さんざ踊り倒して汗だくの状態でふと思い出した、彼女の言葉。「ここから先4年ぐらいのシナリオはもう書きました。デビュー前から計画は立ててきたんですけど、今回も「これかな?」っていう感じで定まってきたので、あとはもう当てはめるだけかなっていう感じです。欲しい食材を揃えて、最後にでっかい料理を出す!みたいな流れになるのかなって。」……このインタビューでの言葉を素直に信じるなら、今回の『LOVE TRiCKY』に関する一連のプロジェクトも“でっかい料理”の一要素に過ぎないと捉えることができる。
彼女の頭の中には今どんなヴィジョンが描かれているのだろう? その答えを知りたい人は、少なくともこの先4年ぐらいは大塚 愛の音楽を聴き続け、ライブにも足を運び続け、その動向から目を離さないように。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎【大塚 愛 LOVE TRiCKY LIVE TOUR 2015~ヘルシーミュージックで体重減るしー~】
07月29日(水)恵比寿LIQUIDROOM セットリスト:
01.I'm lonely
02.パラレルワールド
03.SMILY
04.ユメクイ
05.busy lady
06.shooting star
07.laugh
08.affair
09.羽ありたまご―エスプレッソ―
10.reach for the moon
11.MOONLIGHT
12.summer lovely days
13.フフフ
14.Is
15.ラーメン3分クッキング
16.5:09a.m.―トニック―
17.さくらんぼ
18.未来タクシー
19.タイムマシーン
En1.end and and~10,000 hearts~
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