2015/06/18
安室奈美恵の最新アルバム『_genic』が、全曲新曲&全曲ノンタイアップでありながらオリコンウィークリーランキング1位、そしてBillboard JAPANチャート“Hot Albums”(CDセールス/デジタル・ダウンロード/ルックアップ回数の3指標を合算したアルバム複合チャート)でも1位を獲得した。
安室奈美恵は、革新的で攻撃的で在り続ける。90年代、小室哲哉プロデュースのもとミリオンヒット連発、ファッションシーンでも社会現象を巻き起こしたことはあまりにも有名だが、彼女の革新的で攻撃的なアプローチは、そのムーヴメントのあとに本領発揮された。同時代のブレイクアーティストたちが流行に消費されていく一方で、彼女は自身が本当に求める音楽スタイルを追求するべくセルフプロデュースへ移行。センセーショナルで洋楽的なサウンドアプローチをガンガン試み、自ら「冒険」と口にするほどの、妥協のない、遠慮のない、振り切られた楽曲群を世間にお届けしていく。そして2007年にリリースされた『PLAY』がアルバムとして6年ぶり、2008年リリースの『60s 70s 80s』がシングルとして9年ぶりのオリコン1位を獲得し、自らの意思が純度100%で反映された音楽で全盛期を再び呼び寄せた。
この革命劇以降、2015年現在に至るまで、安室奈美恵は一瞬たりともシーンにおけるヒロインの座を他者に譲っていない。しかも一切の安定を求めない、常にファンやリスナーの想像の先を行くスタイルでもって。抑制されない音楽の破壊力を全作品で体感させてきたことは周知の通り事実だが、ツアーのセットリストひとつフォーカスしても、小室哲哉プロデュース時代の大ヒット曲を敢えて封印し、00年代のセルフプロデュース作品のみで勝負したり、アニバーサリイヤーで5大ドームツアーを大成功させたと思えば、その翌年のツアーでは00年代の楽曲も封印。2010年代のナンバーのみをノンストップで歌い踊り、あくまで最新型の安室奈美恵で日本中のオーディエンスを熱狂、魅了する。ダンススタイルもさることながら、生き様そのものが根っからのアスリート気質。他の追従を許さず、その独走ぶりを満面の笑顔で楽しむポップスター。
ゆえに新レーベル Dimension Point時代の幕開けを意味する新アルバム『_genic』においても、既視感や既聴感のあるアプローチを一切許していない。デヴィッド・ゲッタ(「What I Did For Love」)や初音ミク(「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」)とのまさかのコラボレーション、どれも話題性抜群だった映像作品の連続公開(世界初となる拡張機能を活用した「Anything」のMVや、タッチを疑似体験することができる「Golden Touch」のMV、安室奈美恵が国内最高峰のダンスパフォーマーであることを改めて痛感する「Stranger」や「Fashionista」のMV、そして自身初のバースデイソング「Birthday」のキュート過ぎる“世界を救える笑顔”満載のMV)、
「Anything」MV http://bit.ly/1Fm0oK6
「Golden Touch」MV http://bit.ly/1Q9t6nM
「Stranger」MV http://bit.ly/1eeD5MP
「Fashionista」MV http://bit.ly/1JVabO1
「Birthday」MV http://bit.ly/1Iy72Tk
そして80'sのダンスビートや90'sのR&Bグルーヴなどを取り入れながらも、レディー・ガガやセレーナ・ゴメスらの作品を手がけるJoacim Persson、Kerliやロリーンらダンス歌姫の作品を手がけるSeventyeight Productions、ビヨンセやショーン・ポールらの作品を手がける若き奇才 James“KEYZ”Foye、ディプロと共にマドンナの作品を手がけるUKアンダーグラウンド・シーンで最注目の新鋭 SOPHIE等、錚々たる豪華クリエイター陣と共に生み出した世界最先端のダンスポップチューンたち。妥協無きクリエイティブの畳み掛けは安室奈美恵のアイデンティティだが、今の日本でこれだけ革新的で攻撃的なアプローチを実現できる者は他にいないだろう。
そのアルバムが全曲新曲&全曲ノンタイアップで構成されているのも粋(いき)だし、それでヒットチャートの頂点にもちゃんと君臨しちゃうのだから、さらにはよくよく聴いたら「Fashionista」で「これが私よ」と歌っていたりして、もうほとんどアニメのヒーロー(ヒロイン)である。スタイリッシュでありながらちゃんとエモーショナルなザ・ポップスター。ネガティブな声がよく囁かれるようになってから久しい日本の音楽シーンにおいて、もはや彼女のスター性は希望そのものと言える。
テキスト:平賀哲雄
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