2015/05/27 12:41
かつての故ジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィス、あるいはハービー・ハンコックが当時には賛否両論を集めながらも斬新なスタイルで示してきたように、新しい音楽的語法や時代感覚で奏でられ続けてきたジャズ。名門ブルーノートに在籍しながら、ジャンルを超えた支持を獲得してきた『ブラック・レディオ』によってグラミー賞R&B部門も2度制してきたロバート・グラスパー・エクスペリメントのライブは、まさにそれを2015年の今にシーンの先頭に立って実践しているのが彼らであることを確信させるものだった。
グラスパーが弾く美しいピアノのリフに、細かく鋭利なビートを刻むマーク・コレンバーグのドラム、ケーシー・ベンジャミンのボコーダーがジャム・バンド的に絡み、徐々にサビの甘美なメロディを表出させながらスリリングに幕を開けた1曲目の「Cherish The Day」は、中盤で鮮やかにリズム・チェンジしてグルーヴィーに転じ、後半にはサックスに持ち替えたケーシーがほぼドラムとのデュオでアグレッシヴなソロに突入するという変幻自在の長尺展開で冒頭から圧倒。
続いては、間もなくリリースされるトリオ編成での新作『カヴァード』(6月10日発売)に通じる叙情的なピアノが際立った楽曲を挟んで、アール・トラヴィスによる重厚なベース・ソロから転じてロック色の強い“黒っぽくない”ビートをエクスペリメント流儀で乗りこなしたナンバーや、メロウ・フュージョン的なテーマからいつの間にかジャズの定石にハマらないリズムの上でグラスパーが流麗なピアノのアドリブを炸裂させた興奮の展開など…。同時代のヒップホップ~R&Bを血肉化したジャズ・グルーヴを提示してきたエクスペリメントの切れ味に、従来からレディオヘッドなども取り上げてきたオルタナティヴ・ロック的な感覚、そして最新作におけるピアノ・トリオでの新たな到達点までもが奔放に入り乱れたアンサンブルは、グラスパーが近年の成功に安住することなくまた未開の地平へ向けて動き始めていることを示していた。
ラストは、ダブ処理やツイン・ドラム的なズレまでもひとりで表現したようなコレンバーグの強烈なドラム・ソロから、グラスパーが内包する多様なエレメントを明快な形で集約したかのようなニルヴァーナの名曲カバー「Smells Like Teen Spirit」へ。セット・リストを固定しないことで知られるエクスペリメントだけに曲目などは毎回予測不能だが、続くステージもジャンルレスに進化を遂げつつある現在進行形のジャズを語る上で避けて通ることのできない刺激的な“エクスペリエンス”となるのは間違いないだろう。
ロバート・グラスパー・エクスペリメントの来日公演は、大阪は残すところ5/28(木)までの2日間、東京は6/2(火)~5(金)の3日間。その後には、世界の舞台で活躍する指揮者・西本智実との初共演によるbillboard classics公演【Robert Glasper Experiment ×Tomomi Nishimoto Symphonic Concert】が6/8(月)東京芸術劇場コンサートホールにて開催されるので、こちらも要チェック。
Text:Hidesumi Yoshimoto
Photo:Kenju Uyama
◎公演概要
【ロバート・グラスパー・エクスペリメント】
2015年5月26日(火) ~28日(木)
会場:ビルボードライブ大阪
2015年6月2日(火) ~ 5日(金)
会場:ビルボードライブ東京
billboard classics World Premium
【Robert Glasper Experiment ×Tomomi Nishimoto Symphonic Concert】
2015年6月8日(月)19:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール(池袋)
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