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2015/05/03

Album Review:タイラー・ザ・クリエイター 最新作から見えるスリリングな生活風景とプロデューサーとしての懐の深さ

 前作『Wolf』(2012)で自身のレーベルごとメジャーとの協力体制を敷き、狂騒にまみれながらスター街道を邁進しているタイラー・ザ・クリエイターのニュー・アルバム『Cherry Bomb』が、この4月にリリースされた。Billboard 200では初登場4位、デジタルのアルバム・チャートでは2位を記録している。

 かつてはLAアンダーグラウンドのヒップ・ホップ・コレクティヴ=オッド・フューチャーの首謀者として話題を集め、同時に多彩な才能の持ち主を世に紹介して来たタイラーだが、現在はレーベルの運営を堅持しつつ、率先してメジャーなフィールドに身を晒すことで、リーダーシップを発揮している。『Cherry Bomb』では、前作に引き続き登場のファレルや、カニエ・ウェストら、タイラー自身がリスペクトを寄せるトップ・アーティストも招かれた一枚だ。

 リード曲のひとつとして発表された「Deathcamp」は、かつてのN.E.R.D.を彷彿とさせる鋭角なロック・リフが轟く中で、トップ・スターのパラノイアが爆発するタイラー節だ。続く「Buffalo」は憤りに満ちたヘヴィな楽曲で、こちらは近年のカニエを思い起こさせる。ただ、こんなふうにソリッドな楽曲ばかりではないところが、タイラーのプロデューサーとしての懐の深さであり、奔放な魅力にも繋がっている。

 例えば、乱気流に揉まれるような激しいサウンドを用い、あたかもシーンのリーダーとして重責を吐き出すように<俺はパイロットだ。もう墜落したくねえんだよ>とラップする「Pilot」があれば、メロウ&ジャジーなトラックで<自分自身の翼を見つけろよ。この大空こそがお前の居場所で、そこには際限などありはしないのさ>と優しく語りかける「Find Your Wings」もある。一体どっちだよ、と思わずツッコミたくもなるが、心情が急激に変化してゆくこの作風こそ、今のタイラーに見えているスリリングな生活風景なのだろう。

 まだ20代前半のタイラーが、6つ年下の女の子と恋に落ちてしまうという危ういロマンスを描いた「F×××××g Young」~「Perfect」のメドレーで活躍するカリ・ウチスや、オッド・フューチャーの盟友でもあるザ・インターネットのシドら、女性ヴォーカル陣の豊かなコーラス・ワークがアルバム全編にふくよかさをもたらしている点も、『Cherry Bomb』の大きな魅力だ。またタイラーは9月14日に、東京・LIQUIDROOM ebisuで来日公演を行う予定。一夜限りのショウではあるが、アルバム・リリースのたびにきっちりと来日し、日本のファンを前にパフォーマンスを見せてくれるところも嬉しい限りである。

text:小池宏和

◎リリース情報
『Cherry Bomb』
2015/04/15 RELEASE
1,600円(tax in.)
iTunes:http://apple.co/1DAETsG

◎ライブ情報
2015年9月14日(月)東京・LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET 7,000円(税込/All Standing/1Drink別)
詳細URL:http://bit.ly/1JCUbOv

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