2015/03/08 16:00
スマッシング・パンプキンズ通算8枚目のフル・アルバム『Monuments to an Elegy』は、正直に言えば説明するのに少々手間がかかるアルバムだ。確かに、前作『Oceania』から2年振りのアルバムではあるのだけれども、それ以前に彼らは『Teargarden by Kaleidyscope』というシリーズ作品を発表しており、このシリーズは全44曲で完成されるものとしてアナウンスされている。今回の『Monuments to an Elegy』と、近く予定されている次回作をもって、『Teargarden by Kaleidyscope』シリーズは完結するのではないか、と見られているのだ。
更に言うと、前作アルバム『Oceania』は、シリーズの断片というよりも一枚の重厚なアルバム作品として、極めて完成度の高い内容であった。2009年にスタートしたシリーズ大作の完結がいよいよ見え始めている今、およそ33分というややコンパクトな収録時間となった『Monuments to an Elegy』は、完結編となるはずの次回作を聴かずしてはどうしても語り切ることが難しい、そんなアルバムと言えるのである。
ヴォーカリストにして今やたった一人のオリジナル・メンバーとなったビリー・コーガン(『Oceania』期からはマイク・バーン(Dr)とニコール・フィオレンティーノ(Ba)が脱退し、現在のバンドはジェフ・シュローダーとの2人体制)は、本作に『哀歌の記念碑』という、とても彼らしく感傷的なタイトルを付けている。90年代前半のスマパンを彷彿とさせる、ヘヴィなグランジ・シンフォニーの「Tiberius」に始まり、美しく壮大な視界が広がる「Being Beigh」、ニューウェーヴ感覚の狂おしいラヴ・ソング「Anaise!」、そして流麗なエレクトロ・ポップ「Run2Me」といったふうに、アルバム全体はコンパクトでありながらも曲調は多彩だ。20年以上に渡って愛に彷徨し、リスナーの胸を焦がして来たビリー・コーガンが、バンド・サウンドの歴史を走馬灯のように見せてゆく感覚である。
愛を求め続ける旅のイメージをとりわけ強く駆り立てるのは、シングルとしても発表された「Drum+Fife」だろう。表題どおりに哀愁を誘うフォーキーな笛の音と、それでも力強く歩を進めるように響くドラム。一瞬一瞬に激しい情熱を燃やしながら生きていても、その情景は音楽として記録され、足跡に余韻を残してしまう。本作でドラムスを受け持っているのは、ビリーが90年代初頭から交流を持っていたというモトリー・クルーのトミー・リーだ。ただ力強さだけでなく、味わい深いドラム・プレイで多彩な『記念碑』を刻み付けている(なおツアーでは、ベースにザ・キラーズのマーク・ストーマー、ドラムスにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/オーディオスレイヴのブラッド・ウィルクをサポートに迎えた)。
『Monuments to an elegy』は、いびつでスリリングなギター・リフを焦げ付かせるラヴ・ソング「Anti-Hero」で幕を閉じる。変わらず不器用なまま愛を求めてゆくビリー・コーガンのロックは、どんな光景に辿り着くのだろう。果たして次回作では、それが明らかになるのだろうか。本作を聴けば聴くほど、それが気掛かりである。
Text:小池宏和
◎リリース情報
『モニュメンツ・トゥ・アン・エレジー』
2015/02/25 RELEASE
SICP-4373 2,400円(tax out.)
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