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2015/02/13 19:20

BANKS 漆黒の“女神”が初単独公演で魅せる人間味溢れるステージ

 LA出身のシンガーソングライター、BANKS(バンクス)の初となる単独来日公演が、東京・恵比寿LIQUIDROOMで2月12日に行われた。

 2014年8月に行われた【SUMMER SONIC '14】で初来日を果たし、東京では屋内最大のマウンテン・ステージに登場したBANKS。この頃は、まだデビュー・アルバム『ゴッデス』がリリースされていなかったこともあり、興味本位や初見の観客が多かっただろうが、ミニマルなステージングにも関わらず、新人とは思えぬオーラと気迫で、観客を虜にした。

 SEでは、いかにも彼女が好きそうなTLCの「Waterfalls」などが流れ、19時少し過ぎると会場が暗転。BANKSの名前をモチーフにしたバックドロップがライトで照らされ、アルバムのオープニングを飾る「Alibi」でライブがスタートする。肩に短いマントのようなジャケットをかけ、黒のシースルーのトップスに、ロングスカート姿のBANKS、そしてギター兼キーボディストとドラマーという3人編成だ。体の芯から揺さぶられる無機質なベース音に合わせ、ステージを左右前後にゆらゆらと歩き回りながら、高音もパーフェクトに歌い上げるその姿に、観客の目は釘付けに。続く「This Is What It Feels Like」の中盤では、「ジャパーン、声を聞かせて!」というBANKSに掛け声に応える大歓声とともに、観客のヴォルテージもじわじわと上がっていく。

 クールで凛とした印象の彼女だが、話し出すと極めてキュートで愛らしく、歌っている時とは正反対。ハニカミ気味に「トウキョー、ジャパン。今日は私の初めての単独公演。来てくれて、アリガトウ。みんなとっても静かね。」っと不本意ながら笑いを誘う。そして、「すべての女性はパワフル、すべての人間はパワフル。」というMCとともにアルバムのタイトル・トラック「Goddess」のイントロがスタート。曲に合わせ効果的に使われる幻想的なブルー、グリーン、ホワイトのライトの演出に加え、演奏にもよりダイナミズムと生々しさが感じられ、曲が佳境に入ると立ち上がって、力一杯にシンバルを叩くドラマーの姿にあわせ、BANKS自身が激しく体を動かす場面も。

 高校生の頃に、キーボードを用いて音楽を作り始めたBANKS。「これは私が一番最初にリリースした曲の中の一つ。」と彼女の創作スタイルの原点であるキーボードに向かい、ギタリストがアコースティック・ギターを手にすると、シンプルなアレンジが伸びやかで奥行きのある歌声を引き立てる「Fall Over」を披露。続いて、スパニッシュ・ギター風の粋なアレンジで魅せた「Warm Water」では、「みんなの声を聴かせて!」とシングアロングを求めるものの若干ハードルが高く、最初は戸惑っていた観客も後半のコーラスではそれとなく歌い、形になると、本人も嬉しそうな微笑みを浮かべる。これは曲を通じて、自分の感情を聴き手と共有し、繋がることを大切にしているBANKSらしい演出とも言えるだろう。

 ライブ後半に差しかかると、観客に向かって手を差し伸べ、触れ合う姿も。日本での初ライブ、そしてマウンテン・ステージという大舞台で、若干緊張気味だった【SUMMER SONIC '14】のステージに比べると幾分かリラックスした立ち振る舞いで、アルバムがリリースされてからライブを重ねてきたことも助け、手を掲げて観客を煽るなど、積極的にコミュニケーションを図る姿も印象的だった。

 そして、「Drowning」、「Waiting Game」とソリッドなビートに、BANKSのエモーショナルなヴォーカルが絡み合うナンバーが続き、彼女の代表曲とも言える「Begging For Thread」のイントロが始まると、この日最大の歓声が上がる。コーラスでは、所々でシングアロングが沸き起こり、オーディエンスの盛り上がりは最高潮に。そして、「みんな踊ってね~!」というBANKSの掛け声で始まったアンコール「Stick」では、うねるシンセサイザーのグルーヴに合わせ、徐に体が動いていく。終盤ではバンド・メンバーの紹介もはさみ、ロック・テイストなギターが炸裂する中、「トウキョー、本当に愛してる!」という言葉を残し、一足先にステージを後にしていった。

 1時間ぴったりという短いステージだったが、アルバム同様、一環したステージと言うよりは、BANKSの様々な面が随所に散りばめられたパーソナルで人間味溢れるステージだった。意図的なのかは分からないが、特にスローなナンバーでは完璧に歌い上げるというより、微妙な感情の揺らぎが感じ取れるようなズレたヴォーカルの取り方も印象的で、BANKSという生身のアーティスト、そして人物を感じられる、まさに“ライブ”でしか味わえないインティメイトさと憂いを帯びた一夜となった。

◎【2015.2.12 BANKS @ 恵比寿LIQUIDROOM】セットリスト
Alibi
This Is What It Feels Like
Brain
Goddess
Fuck Em Only We Know
Change
Fall Over
Warm Water
And I Drove You Crazy
Bedroom Wall
Drowning
Waiting Game
Begging For Thread

Encore:
Stick

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