2015/01/23
新春を祝うにふさわしいオペレッタ『こうもり』の稽古が新国立劇場で始まった。ウィーン独特のウィットと機知に富んだドタバタ劇は、大晦日の夜の物語。誰もが聴いたことのある「序曲」「シャンパンの歌(乾杯の歌)」を始め、有名曲がたっぷりの傑作だ。
物語の発端は3年前。ファルケ博士と銀行家アイゼンシュタインは共に仮面舞踏会に出かけるが、酔いつぶれたファルケを置いてアイゼンシュタインは1人で帰宅してしまう。真っ昼間にこうもりの扮装をしたまま帰宅する羽目に陥ったファルケは「こうもり博士」という変なあだ名をつけられてしまい、いつかこの復讐をせんと心に誓っていた。そんな「こうもり博士」の意趣返しに、今宵のジルベスターは、まさにうってつけ。ロシア貴族のオルロフスキー伯爵邸で開かれる大規模な仮面舞踏会にアイゼンシュタインを誘い出す。周囲の人物たちも思い思いに豪華に着飾って登場し、ウィンナ・ワルツの調べにのせ、踊り、そしてそれぞの思惑をのせて歌うのだ。
『こうもり』は、オペラではなく、オペレッタ。オペラの歌い手や合唱はもちろんのこと、ストレートプレイのみの役者や、ダンサーも出演する「全部入り」のエンタテインメントだ。公演を間近に控え、新国立劇場ではスタッフ、キャスト共に来日して連日稽古を詰んでいる。歌や芝居はもちろんのこと、オペレッタの見所の一つである「お笑い要素」は台本には無く、この舞台のために作り出される。客席を笑いで満たすために、歌い手も役者も様々な工夫を試行錯誤している真っ最中である。
そしてもちろん、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウスII世が作り出した宝石箱のように華やかで色彩豊かな音楽も魅力のひとつ。トムとジェリーの『星空の音楽会』で誰もがご存じの「序曲」は、物語を彩る華やかなメロディーが見事に次々とコラージュされており、途中で鳴る6つの鐘も劇中のシーンで「ある時間」を知らせるサインに使われているもの。どの部分がどの幕に配されているか探す楽しみも。
ウィーンを知り尽くした歌手陣の繰り広げる今回の舞台。演出は、ウィーン宮廷歌手の称号を持つ名テノール、ハインツ・ツェドニク。ウィーンの気質を熟知し、作品を深く理解している演出家による、小粋でエレガントなプロダクションだ。まるでシャンパンの泡のように華やかで小粋、ほのかに甘く苦く、お洒落に楽しめるこの公演は、1月29日(木)より、初台・新国立劇場オペラパレスにて全5公演。 text:yokano
◎公演情報
オペレッタ『こうもり』全3幕〈ドイツ語上演/字幕付〉
2015年1月29日(木)~2月8日(日)全5公演
新国立劇場 オペラパレス
http://goo.gl/gyQDW7
舞台写真 撮影:三枝 近志/提供:新国立劇場
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