2014/11/30
昨年、アルバム『Now, Then & Forever』リリースを目前に【SUMMER SONIC 2013】の出演を果たした名ファンク/ディスコ・バンド=アース・ウインド&ファイアー(以下EWF)が、早くも次なる新作『Holiday』をリリースしている。実に40年を越えるバンドのキャリアにおいて、初のクリスマス・アルバムだ。かつては、神秘的なインスピレーションと無限に広がる想像力を糧に数々の名曲を生み出して来たバンドだが、そこはさすがEWF、アップリフティングで楽しい、ファンタジーのようなファンキー・クリスマスを描き出してくれている。
『Now, Then & Forever』同様、アルバム制作の中核を担っているのはフィリップ・ベイリー親子のようだ。冒頭を飾る「Joy to the World」(もろびとこぞりて)の大胆なアレンジや、EWFのクリスマス・ソングとしてドンピシャリで嵌る「Winter Wonderland」といったふうに、伝統的なキャロルや、ポピュラーなクリスマス・ソングの数々をEWFでしかありえないサウンドに仕立て上げている「O Come All Ye Faithful」(神のみ子は今宵しも)や「Away In a Manger」(まぶねの中に)といった賛美歌は、豊かなコーラス・ワークで厳かなムードを演出。賑やかな曲も落ち着いた曲も、ラテン/カリビアン・ミュージックの隠し味が効かせてある点が心憎い。
まるで往年の名チューン「Fantasy」を彷彿とさせるアレンジになってしまった「What Child Is This?」(御使いうたいて)や、クリスマス・シーズンにお馴染みの「Sleigh Ride」(そりすべり)がほっこりトロピカルに鳴り響いてしまうなど、とにかく遊び心が満載の『Holiday』。中でも、日本のEWFファンなら誰でも嬉しくなってしまうのが、“雪やこんこ”でお馴染みの童謡「雪」の、日本語コーラスを交えつつ独自に解釈した「Snow」だろう。ファンキーなクリスマスに、敢えてこのオリエンタルな風味を持ち込むアイデアは、元々ユニバーサルな表現視点を誇るEWFならではだ。
そしてアルバムの最終トラックに堂々収まっているのは、誰しもが知るスーパー・ヒット「September」の歌詞を少々改変して披露される「December」。元々は、12月に9月の夜を思い出す、という歌詞なのだが、今回は<12月21日の夜を覚えているかい?>と歌い出されている。もはや、笑いながらズルい、と漏らすしかない出オチ感である。しかしここに、長く闘病中のモーリス・ホワイトの歌声が、オリジナル音源からの引用で差し込まれると、やはりグッとくるものがある。新ヴォーカル・パートとの間にも違和感を抱かせない仕上がりになっていて見事だ。名曲なのに、これまで聴いたことがない。そんなファンタジーの中へと誘う、EWFのクリスマスに触れてみて欲しい。
Text:小池宏和
◎リリース情報
アース・ウインド&ファイアー『ホリデイ』
2014/11/05 RELASE
<トラックリスト>
01.ジョイ・トゥ・ザ・ワールド (Joy to the World)
02.ハッピー・シーズン (Happy Seasons)
03.オー・カム・オール・イ・フェイスフル (Oh Come All Ye Faithful)
04.ウィンター・ワンダーランド (Winter Wonderland)
05.ホワット・チャイルド・イズ・ディス (What Child Is This?)
06.まぶねの中で (Away In a Manger)
07.リトル・ドラマー・ボーイ (The Little Drummer Boy)
08.エヴリデイ・イズ・クリスマス (Every Day Is Like Christmas)
09.ファースト・ノエル (The First Noel)
10.そりすべり (Sleigh Ride)
11.スノー (Snow)
12.ジングル・ベル・ロック (Jingle Bell Rock)
13.ディセンバー (December)
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