2014/11/09
UK発の新世代ピアノ・マンにしてエンターテイナー、ジェイミー・カラムは、2013年の『Momentum』に至るまで、自主リリース含めて6作のアルバムを精力的に発表して来た。ジャズの素養を活かしながら、近年はオリジナルのレパートリーも数多く手掛けて創作にライヴにと打ち込んで来たジェイミーだが、そんな彼の新作は、音楽的なバックグラウンドとしてあるスタンダード・ジャズの名曲などをカヴァーした作品集である。
何と言ってもアルバム・タイトルが秀逸で、音楽では間奏曲を意味するインタールードという語が、ジェイミーのオリジナル・ディスコグラフィーにちょっとしたアクセントをもたらすような意図を感じさせる。また、ディジー・ガレスピー作「A Night In Tunigia(チュニジアの夜)」に歌詞をつけたスタンダード・ソング(サラ・ヴォーンの歌唱が有名)こそが「Interlude」であり、ジェイミーはアルバムの冒頭にこのナンバーを配することで、新作の方向性をバシッと提示しているわけだ。
ジェイミーは、キャリアの初期にもジャズ・トリオの編成でスタンダードの数々を披露するアルバム『Heard It All Before』(1999)をリリースしている。その頃にはすでに高度な表現力を見せているのだが、その後シーンの第一線で磨き上げられたスキルと、どこか余裕を感じさせる遊び心、ここぞというところで発揮される本気度の高さと言った点で、『Interlude』には確かな成長が感じられる。
『Interlude』では、賑々しいビッグ・バンド・サウンドで繰り広げられる「Don’t You Know」(レイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーのレコーディングでも知られる)、ジェイミーの滋味深いヴォーカルがローラ・マヴーラとデュエットを繰り広げる「Good Morning Heartache」(ビリー・ホリデイやサム・クック、アリシア・キーズ)、スウィング感たっぷりにプレイされる「Lovesick Blues」(ハンク・ウィリアムスやリアン・ライムス)リード曲として紹介されているのはグレゴリー・ポーターとコラボした“Don’t Let Me Be Misunderstood”で、また人々に長く親しまれて来た楽曲のみならず、ランディ・ニューマンの近作「Losing You」や、スフィアン・スティーヴンスの「The Seers Tower」といった2000年代の名曲も取り上げていて面白い。
本格指向の活躍を見せるホーン・セクション、大仰ではないが鮮やかな響きを残すストリングスなど、レコーディングそのものは僅か3日間で完遂されたにも関わらず、アレンジと演奏も全編に渡って素晴らしい作品だ。ジェイミーは、この『Interlude』リリース直後の絶好のタイミングに、2014年2度目となる来日公演をビルボードライブ東京で行う(11/18(水)及び19(木)・各日2公演)。本作のぐっとジェントルでクラッシーな作風が、ステージにどのようなムードを呼び込むのか。はたまた、やはりジェイミーらしい熱くエキサイティングなパフォーマンスとなるのか。俄然楽しみだ。
Text:小池宏和
◎リリース情報
『インタールード』
2014/10/15 RELASE
UICI-1133 2,646円(tax in.)
◎来日情報
2014年11月18日(火)~19日(水) ビルボードライブ東京
Info: http://www.billboard-live.com/
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