2014/10/31 17:24
高すぎず低すぎず、まろやかに、柔らかく、時に荒々しく、力強く、包み込むように響く暖かな音色。夏の盛りが過ぎた頃から冬の寒さにかけてのグラデーションのように、その繊細な襞を魅せてくれるのが中低音の魅力だろう。弦楽器パートからはチェロ、声楽からコントラルト、木管楽器からクラリネット、そして金管セクションからはホルン。暮れゆく秋の夜、その豊かな響きに浸り、余韻に酔える、素晴らしいアーティスト達が揃った。
イタリア人として初めてチャイコフスキー国際コンクールに優勝し、世界屈指のチェリストとして活躍を続けるマリオ・ブルネロ。この秋の来日公演の中では「無伴奏チェロ・リサイタル」というシンプルなタイトルで開催されるたった2回のコンサートが、ひときわアグレッシブなプログラムだ。テレマン、バッハといった「定番」だけでなく、イザイの、そしてヴァインベルクの無伴奏チェロ・ソナタ、更には五重奏のピアソラ「コントラバヒッシモ」を、エフェクターを利用して演奏するなどチャレンジングな内容。古典から現代までを多彩なチャレンジで一気に駆け抜ける、魅力的な一夜になることは間違いないだろう。
ビロードのようになめらかで暖かく、深く豊かな声で、聴く者を常に魅了し続けてきた、コントラルトのナタリー・シュトゥッツマン。今回はドイツ歌曲だけでなく、フランス歌曲のリサイタルが各地で開催される。ショーソン、グノー、ドビュッシー、フォーレ、プーランク……自身の母語であるフランス語の、やわらかで色彩豊かな情景描写は、他の追随を許さない上品さと洗練性と、漂う芳香を兼ね備えている。幼いころからピアノ、バスーン、室内楽全般、指揮を学び、2009年には自ら、室内オーケストラを創設。指揮者としても活動するようになったシュトゥッツマンの、更に深まった音楽性を堪能出来る、またとない機会となるはずだ。
シュヴェンク&セゲルケ社のクラリネットといえば、その深く輝かしい音色でファンも多く、超絶技巧で知られるシャーリー・ブリルの使用楽器としても有名だ。古楽器の復元から製作技法の歴史の検証を経て楽器製作に取り組むヨッヘン・セゲルケ氏は、クラリネット古楽器アンサンブル「クラリモニア」を主宰。モーツァルトが愛してやまなかった当時のクラリネットの響きから現代のクラリネットまで、その発展の歴史を伝えるワークショップやコンサートを行っている。今年も東京会場では無料の特別講演会を開催。その素朴な木の持つ音色を、知識と共に吸収できるチャンスを逃さないようにしよう。
ミュンヘン国際コンクールで優勝し「完璧な演奏」と言われる、元ベルリン・フィル首席のホルン奏者ラデク・バボラークが、クリスマスを迎える時期にスペシャルなコンサートを開催する。バッハのコラールを始め、ブルックナー、サン=サーンス、そして沢山のクリスマス・キャロルなど、輝かしく豪華なプログラムを、響き渡る高らかなホルンの音色で楽しめる。「人の声で歌うように吹く」というのがチェコ・ホルンの伝統だと言うバボラーク。ギネスに「世界で一番難しい金管楽器」と掲載された楽器ホルンが歌い上げる、繊細で美しく柔らかい音色を聴くとき、まさに奇跡に触れる思いがするに違いない。text:yokano
◎公演概要
マリオ・ブルネロ 無伴奏チェロ・リサイタル
2014年11月12日(水) 三鷹市芸術文化センター 風のホール
http://goo.gl/tuWEaG
2014年11月15日(土) 長野・八ヶ岳高原音楽堂
http://goo.gl/LlAfkV
ナタリー・シュトゥツマン フランス歌曲リサイタル
2014年11月18日(火) 奈良・秋篠音楽堂
http://goo.gl/WRW4uH
2014年11月22日(土) 神奈川・神奈川県立音楽堂 木のホール
http://goo.gl/BhaKkW
2014年11月26日(水) 東京・トッパンホール
http://goo.gl/5C7h5n
クラリモニア&ヨッヘン・セゲルケ
2014年11月1日(土) 東京・石森管楽器地下イベントスペース
http://goo.gl/2fut4i
2014年11月3日(月) 京都 JEUGIA
http://goo.gl/gtrllx
ラデク・バボラーク(ホルン)
2014年12月8日(月) 水戸芸術館
http://goo.gl/ALuKHl
2014年12月14日(日) 札幌・コンサートホールKitara大ホール
http://goo.gl/XiSrLq
2014年12月16日(月) 東京芸術劇場
http://goo.gl/z7Xu0Y
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