2014/05/01
ピアニスト塩谷哲が、盟友のライブツアーに参加した。デビュー25周年、佐藤竹善(Vo&Key&G)、藤田千章(Key&Synth)、西村智彦(G)のメンバーが50歳を迎えたことを受けて開くSING LIKE TALKING(以下・SLT)の記念碑的ツアー。昨年4月に大阪、東京のみで総勢21人(メンバー+18人)にも及ぶミュージシャンによって開かれたスペシャルライブでの熱い反響を受け、小編成に替えて今年実現したもので、塩谷哲も昨年に続き出演。その神戸公演が行われた。
代表曲を中心にした昨年の東京、大阪公演でのプログラムとは一線を画し、過去SLTがリリースしたアルバムから「8割方網羅した」という25周年を凝縮させたコアな楽曲構成となっているのが本ツアーの大きな特徴だ。SLTの3人に、ツアー途中で急きょ不参加となったパーカッションを除き、ベース、女性コーラス、塩谷哲の計6人という編成。佐藤竹善がパーカッションを演奏しながら歌ったり、藤田千章がキーボードだけでなくドラムセットを叩いたりと、曲によって楽器のコンバート(交代)が行われるなど工夫がなされていたのも特筆もの。しかし、楽曲本来のクオリティの高さ、佐藤竹善のハイトーンを活かした歌唱表現の巧みさ、塩谷哲を筆頭にキャリアに裏打ちされたミュージシャンたちの音楽的才能の凄みも加わって、まったく音圧、音像に不足を感じさせなかったのはさすがというほかない。
スケール感漂うナンバーから、心地いいリズムで展開するファンク、珠玉のバラード、洗練されたR&Bサウンド、さらにオーガニック・テイスト溢れる楽曲まで、本編はたっぷり19曲。会場を総立ちにさせた代表曲のひとつ「Spirit Of Love」など3曲を歌ったアンコールまで、おおよそ3時間。飽きさせることなくオーディエンスを惹き付けていた。“継続は力なり”を実証するSING LIKE TALKINGと、高い演奏能力を誇るミュージシャンによる質の高いセッションは見応え聴き応え満点。ライブの醍醐味を充分堪能できた一夜だった。
第4のメンバーとも言えるミュージシャンたちはSLTのサウンドを充分に引き立てた。現在のJ-POP、J-ROCKを支える存在であり、今回のステージでもグルーヴィーなビートを刻み続けた「元ジャニーズで嵐の先輩」(佐藤)であるベースの松原秀樹。紅一点にして、「彼女のデビュー時からの付き合い」(佐藤)というコーラスの露崎春女。彼女のオリジナル曲「In This Love」での19年ぶりの披露となる佐藤竹善とのデュエットは、甘く切ない世界観を演出して感動ものだった。
中でもサポートという枠で収まらない八面六臂の活躍を見せていたのが、塩谷哲だ。1台のピアノはオーケストラに匹敵する表現力を持つと言われることを証明するように、さまざまなタッチでSLTのサウンドをより奥深いものにしていた。言うまでもなく、ジャズ、ポップス、ロック、クラシック…とジャンルを越えた幅広い演奏能力を誇るピアニストであるが、今回のステージはそれだけにとどまらない。ピアノからシンセ、キーボードという鍵盤楽器はもちろん、「Human」という楽曲ではドラムス(!)、抜群のハーモニーを聴かせたコーラス(!)まで、おそらく他では見られないパフォーマンスの披露の連続にびっくりさせられたファンも多かったはず。佐藤竹善とはユニットのSALT&SUGARで活動をしていることもあって、深い信頼関係があったからこその「ここだけの」実験的挑戦だったが、違和感なく柔軟にこなしていたのは実に見事だった。
7月には塩谷哲トリオとしてビルボードライブ大阪でのライブが控えている。さすがに今回のように異種楽器を演奏することはないだろうが、本領発揮とも言えるトリオスタイルでどんな表情を見せてくれるか、そして音空間を創造してくれるか。期待は募るばかりだ。
◎公演情報
【塩谷哲トリオ ライブ2014】
2014年7月19日(土)ビルボードライブ大阪
【佐藤竹善 × akiko Duo Live】
2014年6月22日(日)ビルボードライブ東京
info:http://www.billboard-live.com/
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