2014/04/15
不朽の名画『砂の器』のテーマ音楽「ピアノと管弦楽のための組曲『宿命』」が、3月30日東京芸術劇場にて、約40年ぶりに全曲再演された。
指揮は「中学生の頃に映画を観て号泣した」と話す西本智実、ピアノは映画の主役・加藤剛を彷彿させる外山啓介、そして邦人作品に実績ある日本フィルと、演奏者も本公演に相応しい顔ぶれ。会場は超満員で、開演前から熱気と期待感に溢れていた。今回のプログラムのポイントは、「宿命」に関連した作品が前半に置かれている点だ。まず外山啓介のソロで、「宿命」の構造や旋律に影響を与えたラフマニノフのピアノ曲が3曲披露された。冒頭の「ヴォカリーズ」では、歌うように紡がれるロマンティックな旋律が、「宿命」の前段に即した雰囲気を醸し出していた。2曲目の「前奏曲 作品23-4」はノクターン風の味わいが美しく、最後の「前奏曲 作品3-2『鐘』」では外山が大きな抑揚で緊迫感を創出し、後半との関連性を暗示した。続いて、「宿命」の監修者である芥川也寸志の「弦楽のための三楽章」。これも第1楽章の引き締まった響きから既に「宿命」を想起させる。第2楽章はデリケートに綾を成し、第3楽章の変拍子リズムが、ここでも緊迫感を盛り上げる。同曲は芥川の作品の中でもより、当日のプログラムに合った作品であるのを強く実感させられた。
休憩を挟んでいよいよ菅野光亮の「宿命」。Part1、2に分かれた40分ほどの大曲だが、長さを全く感じさせない音楽であり演奏でもあった。Part1の冒頭からドラマティックなオーケストラと熱のこもったピアノの協奏が展開。事件を示す不協和音や哀切な部分などの場面変化も的確に成され、テーマ旋律が効果的にクローズアップされる。Part2は、前半のシリアスな場面が緊張感をもって奏され、白眉となるラストシーンでは、ダイナミックなピアノと濃密なオーケストラが互いを引き立てながら、豊麗なクライマックスが構築された。ホルンのソロをはじめ日本フィルの豊潤なサウンドも大いに貢献した。
なお同曲は、オーケストラがピアノを包むように配置されていた。西本によると「リハーサルの最初は、ピアノを前に出す通常の協奏曲スタイルにしていたが、オーケストラと分離するので、全体が交わるよう中に入れた」とのこと。外山も「この配置でより一体感を感じた」と話していた通り、楽曲の特徴が明快に打ち出される好結果を生んでいた。司会や映像を入れることなく、全編通じて演奏のみで構成されたことで、より音楽のもつ雄弁な力を感じさせてくれた本公演は、6月22日に大阪公演も決定している。
◎公演情報【billboard classics 西本智実指揮「宿命」】
東京公演
日程:3月30日(日)
会場:東京芸術劇場コンサートホール
指揮:西本智実
ピアノ:外山啓介
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
大阪公演
日程:6月22日
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:西本智実
ピアノ:外山啓介
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
More info
http://billboard-cc.com/classics/2014/03/billboardclassics-40.html
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