2025/11/04 17:00
必然の邂逅は、このたびMUCCが主催する【Love Together EXTRA】の場にて果たされることになった。同じ釜の飯を食った仲ならぬ、同じ釜の“餅”を食った仲だというMUCCとSadie。愛の重なりあう場所で響いた、それぞれの特色にあふれた音とパフォーマンスの数々は、今宵Spotify O-EASTに集ったオーディエンスを強く惹きつけていくことになったのである。
ちなみに、今回の【Love Together EXTRA】とはMUCCが昨春に行った2マンツアー【MUCC TOUR 2024「Love Together」】から端を発しているもので、今年も11月2日から計8本にわたる【MUCC TOUR 2025「Love Together」】が決定しているため、その約1か月前に行われた本公演はつまり前倒し的な特別追加公演の意味合いを持っていたようだ。
かくして、初手を指すことになったSadieは冒頭から激烈さと壮麗さの混在する「迷彩」をブチあげて、場内をいきなり狂乱の渦へと巻き込んでいくことに。しかも、この曲ではMUCCのYUKKEいわく「ずっと生で観てみたかった」という、ベーシスト・亜季が頼もしいプレイをしていくのと同時に“例の舞い”をみせる姿まで拝むことも叶った。また、続く「under the chaos」ではドラマー・景が叩き出す鉄壁のリズムと、剣と美月がおりなすメタリーなギターアンサンブルに煽られるかたちで、1階客席フロアのみならず2階バルコニー席でもヘッドバンギングに興じる人々が続出。ヘヴィな音像を背景に真緒が多彩なヴォーカリゼイションを提示した「心眼」でも、Sadieならではの貫録ある表現を堪能することが出来たように思う。
「まずは、夢烏(=MUCCファンの総称)のみなさま。おひさしぶりでございます、という言い方がここはふさわしいかもしれません。実はMUCCと2マンをやるのはこれが初めてなんですけれども、Sadieと申します。よろしくお願いします。我々は2005年から10年間活動を続けたのちに活動停止し、復活してから約2年が経ちます。そんな中でこのたびは【Love Together EXTRA】という大きなイベントに呼んでいただき、誠に感謝しております。ありがとうございます!」(真緒)
なお、このあと真緒は「初めましての方たちもいらっしゃると思いますので…」と謙虚な前置きをしつつ、普段はまずしないというメンバー紹介を実施。あげく、自らのことを「シドのマオじゃない方の真緒です」と称して、夢烏たちからの笑いをとることに成功していてさすがの一言。やはり、20年選手の肩書きは伊達ではない。
さらに、ライブが佳境に入っていく手前のMCでは美月がMUCC・逹瑯との微笑ましい想い出を語るくだりがあり、ここで披露されたのは懐かしき【Over the Edge】における逸話だった。(※【Over the Edge】とは逹瑯が発起人となって2007年から始まり、旧渋谷公会堂の一時閉館まで続いた大晦日の年越しイベント)
「ほんま昔はよくイジメられてたんです、あの真ん中のでっかい人に(苦笑)。[Over the Edge]の時なんて、全然ライブしとる気になれなかったですもん。だって、裏で餅こねさせられとったよ。あと「大根おろし擦っとけ!」って言われたり。それも2本くらいまるごとを出番前にですよ(笑)。でも、あれから時が経ってこうしてガチンコの2マンをやらせてもらえてるなんて、本当に嬉しいです!」(美月)
こうして場内を和ませる一方、ひとたび音を出せばイカツイ圧をいかんなく発するSadieは、このあとも「クライモア」などを筆頭に彼らだからこそ体現することが出来る、濃厚にして躍動感あふれるライブを存分に見せつけてくれたのだった。
来たる12月24日には3rdセルフカバーアルバム『THE REVIVAL OF MADNESS』と、Blu-ray『Sadie 20th Anniversary Live「脈拍」』を同時リリースし、年明けからは20th Anniversary Final Phaseとなる【Sadie Tour 2026 DOUBLE DECADE -mode of madness- / -mode of decade-】を開催するというSadie。2026年3月18日にはZepp Shinjukuにて21周年を記念する【Sadie 21st Anniversary Live「BLACK FUNERAL」】も決定しているそうで、ここからの彼らの飛躍にもおおいに期待していよう。
対して、後攻となった[Love Together EXTRA]の主催者・MUCCはといえば。最新アルバム『1997』収録の「invader」で切れ味鋭いバンドサウンドを場内へ撃ち込むことからライブを始める形になったのだが、この曲を演奏し終わったところで逹瑯の発した言葉が実に小粋で素晴らしかった。
「ヴィジュアル系の正解のあとに、ヴィジュアル系の不正解でお楽しみください」(逹瑯)
音の面でも視覚的な面でもある意味ヴィジュアル系の王道メソッドを貫いているSadieを“正解”と賞賛しながら、MUCCはMUCCでMUCCにしか立てない立ち位置を陣取ったうえで、唯一無二な活動を続けて来ている様を逹瑯は敢えて“不正解”としたのだろう。両者に関するこの対比はとても興味深く、本来的には似ても似つかないバンド同士が同じ界隈で切磋琢磨しているところは、きっとこのシーンの面白さのひとつでもある。
曲タイトルのごとく“殺しにかかるような勢い”を持った、ミヤの弾く完全無欠なギターソロに呼応してサークルピットがフロアに出現した「KILLER」。重めな音像と逹瑯の卓越したヴォーカル技術が見事に融合し、ドラマティックな光景が生み出された「蜻蛉と時計」。90年代日本製ミクスチャーロックの雰囲気を、YUKKEのドライブするベースプレイが絶妙に醸し出していた「Boys be an Vicious」など。ひとしきり場が盛り上がったところで、逹瑯は先ほどの一言にくわえてさらにSadieを意識した言葉をここでまた発することになったので、それについても書き記しておきたい。
「俺はいつのまにか、ちょっと天狗になってたかもしれない。そりゃそうだよな、この中にはSadieのお客さんだっているんだし。MUCCのメンバーの名前を知らない人がいるかもしれないから、今日はメンバー紹介をしようかな」(逹瑯)
サポートドラマーのAllenと、YUKKEまではいわゆる普通のメンバー紹介がされるも、ミヤのターンでは逹瑯から切り出される前に「ギターのSUGIZOです」というリスペクト的自己紹介ボケが繰り出されたほか、逹瑯からは「山下じゃない方の逹瑯です!」と完全に真緒にかぶせた大ボケまでが発されてしまい、場内は大ウケ。人がとった笑いでさらに笑いをとるという狡猾な…もとい、高度な逹瑯の話術が光る一幕となった(笑)
そして、その後には春だけでなく秋にも咲く花の歌「ガーベラ」で今頃にぴったりな季節感を味わったり、かと思えば80年代の空気を内包した「LIP STICK」でレトロ感を楽しんだり。それこそ、MUCCの楽曲はヴィジュアル系の枠組みからみればド真ん中にはあたらないものもそこそこ多いのかもしれないが、さまざまなカラーを持った楽曲たちで彼らは我々を魅了してくれたと言える。ひたすらにサビのメロディが綺麗で切ない「流星」や、観衆がこぞってシンガロングしたくなる「ニルヴァーナ」など、つくづくMUCCは心にしみる良曲が多いと再確認。ワンマンには及ばない15曲程度の尺のライブでも、MUCCはそれを感じさせてくれるバンドなのだ。
とはいえ、ライブ終盤ともなればいよいよ駄目押しに近い猛攻が始まるのはもはや定番の流れ。むしろ、これがなければしっくり来ないところもあるわけで、派手なメタメタしいノリがたまらない「Mr.Liar」、MUCCのライブには欠かすことが出来ない「蘭鋳」、豪快なクラウドサーフをする観客まで現われた「Daydream Believer」までを全てやり切り、MUCCは今回もまた最高のライブ空間を我々に供してくれたのではなかろうか。
「凄く良いライブになりました。ありがとうございます!(中略)ここからはセッションなんで、仲間たちと一緒に遊びます!!」(逹瑯)
ということで、場内に響きわたった熱烈なる声に応えてのアンコールは今や【Love Together】名物となっているお待ちかねのセッション大会。
「どの曲がいい?って訊いたら、今回はけっこう意外な曲が上がってきました」(逹瑯)
「この曲をやろうって言われたことなかったから、嬉しかったなぁ」(ミヤ)
「ほんと、今までセッションではやってないもんね」(YUKKE)
「これ、ツインギターでやってみたかったんだよ。ありがとう」(ミヤ)
なんと、ここで美月と真緒からのリクエストで演奏することになったのは2009年発表のアルバム『球体』に収録されている「咆哮」。
「MUCCの曲をやるなら、絶対これ!ってずーっと思ってましたもん。頑張ってハモります!」(美月)
その宣言通りにミヤと美月がレアなツインギターぶりをみせながら、いつもとは一味もふた味も違う「咆哮」を彼らが聴かせてくれたのは言うまでもない。さらには、剣、亜季、景もまじえたこの日の参加者全員での「大嫌い」がいかにもセッションらしい大変なワチャワチャぶりで、これまたこの場に集った人々をよりいっそうのテンアゲ状態へと誘ってくれた次第だ。(※このとき景の着ていたTシャツの背中には“大スキ”の文字が書かれていたのも高ポイント)
さて。必然の邂逅が見事に果たされたこの【Love Together EXTRA】を経たMUCCが次に向かうのは、11月2日から始まる【MUCC TOUR 2025「Love Together」】の旅路となる。摩天楼オペラ、RAZOR、梟、メリー、XANVALA、nurié、MAMA.、CHAQLA.。後輩やら同期やら日によって対戦相手は様々だが、いずれにしても全カードが体験すべき一夜となるのは間違いないはず。あらたにLoveをTogetherしていくことで創りだされる、素敵な未来がやって来る日は近い。
Text:杉江由紀
Photos:冨田味我
◎公演情報
【Love Together EXTRA】
2025年10月8日(水)東京・Spotify O-EAST
<Sadie SETLIST>
01. 迷彩
02. under the chaos
03. 心眼
04. Ice Romancer
05. Rosario-ロザリオ-
06. アゲハの亡骸
07. ドレス
08. Grieving the dead soul
09. HOWLING
10. クライモア
11. 陽炎
<MUCC SETLIST>
SE. Daydream
01. invader
02. KILLER
03. G.G.
04. 蜻蛉と時計
05. Boys be an Vicious
06. Round & Round
07. ガーベラ
08. LIP STICK
09. 不死鳥
10. 流星
11. ニルヴァーナ
12. ファズ
13. Mr.Liar
14. 蘭鋳
15. Daydream Believer
EN1. 咆哮
EN2. 大嫌い
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
1
【ビルボード 2025年 年間Top Lyricists】大森元貴が史上初となる3年連続1位 前年に続き5指標を制する(コメントあり)
2
【ビルボード 2025年 年間Artist 100】Mrs. GREEN APPLEが史上初の2連覇を達成(コメントあり)
3
【ビルボード 2025年 年間Top Albums Sales】Snow Manがミリオンを2作叩き出し、1位&2位を独占(コメントあり)
4
【ビルボード 2025年 年間Top Singles Sales】初週120万枚突破の快挙、INI『THE WINTER MAGIC』が自身初の年間首位(コメントあり)
5
<年間チャート首位記念インタビュー>Mrs. GREEN APPLEと振り返る、感謝と愛に溢れた濃厚な2025年 「ライラック」から始まった“思い出の宝庫”
インタビュー・タイムマシン







注目の画像







MUCCの”幻影バンド“La'Mucc、初音源『Eyes』を11/5にライブ会場で発売
MUCC、12/10にニュー・シングル『Never Evergreen』リリース決定 最新ビジュアルも公開
MUCC主催イベント【LuV Together 2025】公式レポ到着 先輩、初共演、後輩、盟友がステージに刻んだ愛
MUCC、6/9“MUCCの日”に開催したリクエストライブのオフィシャルレポート到着
MUCC、『1997』リリースツアー完走 ツアーファイナル川崎公演のレポ到着










