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2025/11/05 18:00

<インタビュー>誠実さが歌になるとき:WINNERカン・スンユンの次章

 「『この曲、プレイリストに追加するね』って言ってもらえるのが本当に嬉しいんです。そう言われる瞬間が一番幸せですね。」数えきれないほどのヒット曲を生み出し、多くの人に歌われてきたカン・スンユンだが、彼にとって何よりの喜びは“誰かが自分の音楽を聞いてくれること”にある。初のソロアルバムから4年半――彼は今、『PAGE 2』を携えて帰ってきた。誠実で繊細に編み込まれた13曲は、まるで私たち一人ひとりへの贈り物のようだ。

――昨年12月に兵役を終え、そして新しいアルバムの準備を進めながら、今年はWINNERのコンサートを通してファンとの再会を果たしましたね。韓国だけでなく、マカオ、台北、ジャカルタ、香港、東京、神戸など海外でも公演がありました。長い時間を経て再びステージに立ったとき、どんな気持ちでしたか?

スンユン:最初はメンバーも僕もかなり緊張していました。パンデミックもあって、さらに僕たちの兵役期間も重なり、海外のファンの中には5~6年もの間、待っていてくれた方も多かったんです。だから正直、「まだ僕たちを待っていてくれるのかな?」と不安もありました。でも、いざステージに立った瞬間、その心配は一気に消えました。客席からあふれる愛に圧倒されて、最初は2日間の予定だった公演が3日間に延長されるほどでした。

――2021年4月に1stフルソロアルバム『PAGE』をリリースし、2025年11月3日に『PAGE 2』を発表されました。長い時間を経ても、まだ“PAGE”というタイトルのもとで伝えたいことがあったのでしょうか?

スンユン:実は僕は、アルバムを作るときに明確なテーマやコンセプトを最初から決めているわけではないんです。僕にとってアルバムというのは、これまで少しずつ作ってきた曲や物語がひとつにまとまる“作品集”のようなもの。だから“PAGE(ページ)”という言葉を選びました。ページって、折り重なっていく中で新しい面を見せることができるし、それが僕自身の多面的な姿を表しているように思うんです。今回のアルバムには、1stソロアルバムから4年半という時間の中で僕が感じた感情や経験した瞬間が詰まっています。聞く人たちには、この楽曲たちをその時間を埋めた“ページ”として感じてもらえたら嬉しいです。

――アルバム紹介文の中で、13曲それぞれに「欲望」「苦悩」「執着」「虚無」「断念」「貪欲」などの感情のキーワードが結びつけられています。こうして感情に名前をつけることは、音楽やストーリーテリングを形成する上で役立ちましたか?

スンユン:アルバムを準備しながら、ずっと自問していたんです。「この曲たちを本当にひとつに結びつけるものは何だろう?」「自分はどんな音楽を作るべきなんだろう?」と。1枚目のアルバムのときは、とにかく“自分の名前でフルアルバムを出すこと”が最優先でした。でも今回は、「自分は何を見せたいのか」を本気で考える必要があったんです。同時に、「カン・スンユンの音楽とはこういうものだ」という世の中のイメージや期待もある。だからこそ最終的に気づいたのは、このアルバムは「そのすべてが僕自身である」と聞く人に宣言し、納得してもらえる作品でなければならないということでした。

そこでテーマになったのが“多面性”です。曲を書いた瞬間の感情をそのまま見せたい、自分のいろんな側面を出したいと思いました。ロックでもダンスでもバラードでも、ジャンルを超えて“カン・スンユン”という人間そのものを感じてもらうことが目標でした。その過程で自分自身の理解もより深まった気がします。

――アーティストとして、さまざまな感情と向き合うことは重要なことですか?

スンユン:普段の生活の中では、自分の感情をまっすぐ見つめるのが得意なほうではありません。でもアルバム制作というきっかけがあると、それが変わるんです。音楽に向き合っていると、自分でも気づいていなかった感情が突然メロディーや歌詞になって現れてくる。その過程を通して、「ああ、自分は本当はこう感じていたんだな」と振り返ることができるんです。時にはステージで実際に歌って初めて「この感情は本当に自分のものだったんだ」と気づくこともあります。日常の中で薄れてしまったと思っていた感情も、曲が世の中に出て、自分がそれを歌うことで、突然涙が込み上げてくることがある。例えば、1枚目のアルバムに収録されている「BRUISE」は、今でも歌うたびに喉が詰まるんです。

――タイトル曲「ME(美)」は、青春の一瞬を切り取ったような楽曲ですね。キャリアのこのタイミングで青春をテーマにしたのはなぜでしょう?

スンユン:僕は、どんな年齢でも何かをやりたいという情熱と意志があるなら、人はいつだって青春だと思うんです。同時に、“ユースカルチャー”と呼ばれる音楽を作ることに、どこか違和感を覚える瞬間がいつか訪れるとも感じています。だからこそ、今この瞬間――自分がまだ若く、エネルギーに満ちているうちに、その“青春”をきちんと形に残しておきたかった。この曲とミュージック・ビデオを通して、聞いてくれる人にもその煌めきや胸の高鳴りを感じてもらえたらと思いました。

――10代や20代の青春はしばしば美化されがちです。それでも、あなたにとって“青春”は美しいものですか?

スンユン:「ME(美)」の歌詞をよく見ると、常に“二面性”が描かれているんです。やわらかいけれど鋭いまなざし、優しいのに痛みを伴う触れ方、壊れそうなのに確かに生きている――そういう相反する感覚を意図的に入れました。僕にとって青春の美しさは、まさにその“矛盾”にあると思っています。あれも欲しい、これも欲しい、どちらも自分だと感じる。そんな欲張りさは若さならではですよね。年を重ねると、少しずつ自分を整理して、どちらか一方の方向に進むようになる。その瞬間が、“若さ”が少しずつ遠ざかっていくときなのかもしれません。

――アルバムの5曲目「S.A.D」は、〈Where are you going? Why are you packing up like that?〉(どこへ行くの?なんでそんなふうに荷物をまとめているの?)という一節で始まります。この曲は、愛犬トルの気持ちを想像して書いたと聞きました。

スンユン:はい、比較的最近書いた曲のひとつです。「僕が家を出るとき、もしトルが言葉を話せたら、どんな気持ちで僕に声をかけるんだろう?」そんな想像から始まりました。でもこの曲はラブソングとしても聞けると思うんです。恋の始まりにある「離れたくない」「もっと自分を見てほしい」という気持ちや、思いが届かないもどかしさ。そういう感情は人間関係にも通じるものがあります。だから聞く人それぞれが自分なりの“誰かへの思い”として解釈してもらえたら嬉しいです。

――今回のアルバムでは多くのアーティストたちと一緒に制作を行われました。長く同じ事務所(YG)に所属し、先輩・後輩たちと積極的にコラボレーションしてきた中で、どんなメリットを感じますか?

スンユン:すごく多くの利点がありますね。僕のメインスタジオは会社のビルの中にあって、社内プロデューサーたちのスタジオもすぐ近くにあるので、コミュニケーションもコラボレーションもとてもスムーズなんです。顔なじみの関係であることは強みですが、それは「慣れ」で停滞するという意味ではありません。みんな常に新しいものを探していて、音楽的に成長しようとしている。その会話の中から生まれるアイデアに僕自身もたくさん刺激を受けます。それでも「新しい風が必要だ」と感じたら、ソングキャンプを開いたり、海外のプロデューサーと一緒に作業したりしています。

――今作には、少女時代、Red Velvet、TOMORROW X TOGETHERなどの楽曲を手がけてきたダニエル・シーザーとルドウィグ・リンデルの名前もありますね。

スンユン:僕たちは彼らのことを「シーザー&ルイ」と呼んでるんです(笑)。彼らが最近ソングキャンプのために韓国に来ていたので、そのタイミングで「一緒にやろう」と声をかけました。僕は普段、ピアノの簡単なラインやギターのコード数本から曲をスケッチして、そこにメロディーや歌詞を重ねていくような作り方に慣れています。シンプルなループからアイデアを膨らませていくのが好きなんです。

でも、異なる方法で音楽を作ることから学べることもたくさんあると思っています。もしずっと一人だけで作っていたら、きっとどこかで行き詰まってしまうでしょう。だからできるだけ多くの人と出会って、コラボレーションするようにしています。正直、作曲・作詞・編曲すべてのクレジットが自分の名前だけになっている曲を出すことは、これからもないと思います。フィーチャリングでも共作でも、アイデアを交換しながら作り上げていく過程こそが一番ワクワクする瞬間なんです。

――シンガーソングライターとして、またWINNERのメインプロデューサーとして、今の音楽シーンの変化をどう感じていますか?

スンユン:「有名だからライブを観に行く」という時代はもう終わったと思います。今のリスナーは、自分の好みをよりはっきり理解していて、自分のプレイリストをキュレーションするように音楽を選ぶんですよね。ライブも同じです。最近は本当に公演が多くて、小規模なライブからK-POPグループ、バラードアーティスト、フェスティバルまで、どれもスケジュールがびっしり。会場を押さえるのも大変なくらいです。そんな中で、“自分の音楽を明確に求めてくれるオーディエンス”を持つアーティストがどんどん強くなっている。その現状を見ながら、自分はこのシーンの中でどんな役割を果たせるのかを自然と考えるようになりました。今回のアルバムのプロモーションを通して、“カン・スンユンにしか作れないステージ”を見つけていけたらと思っています。

――2010年、高校生のときにオーディション番組を通じて全国的に知られるようになり、2013年に初のソロ曲を発表、そして2014年にWINNERとしてデビュー。気づけば10年以上、常に走り続けてきましたね。パフォーマー、ボーカリスト、ヒットメーカーとして多くの人があなたの才能を称賛していますが、その期待にプレッシャーを感じることはありますか? 創作の燃料が尽きるのではと不安になることは?

スンユン:確かに「本当に才能があるね」とか「すごく上手だね」と言ってもらうことはあります。でも正直、批判されることも多いです(笑)。というのも、僕が最初に注目を浴びたのが、“評価されること”が前提のオーディション番組だったからなんです。だから不思議と、批評や評価というのは僕にとって身近なものでした。ある意味、それには感謝しています。おかげで地に足をつけていられるし、褒め言葉に酔いすぎないようにしてくれる。いつも「結果で納得させよう」「本当にいいものを届けよう」と努力し続ける原動力になっています。

そしてこれまで、本当に才能にあふれた人たちにたくさん出会ってきました。彼らと比べたときに、自分に満足することなんてできないんです。彼らの才能がどれだけ長く続くかはわからないけれど、今の瞬間の輝きは本当にまぶしい。そんなとき、僕は自分に言い聞かせます。「あの人にあるものは僕にはないかもしれない。でも僕には僕にしか作れないものがある」と。だからこそ、「どうすればもっとよくなれるか」「どうすれば自分らしい表現ができるか」を常に考えながら、前へ進み続けています。

――『PAGE 2』を聞いたリスナーからどんな反応をもらえたら一番嬉しいですか?

スンユン:「カン・スンユンはまだ成長している」「1枚目よりもさらに深みがある」と感じてもらえたら嬉しいですね。若い頃は、“誰かの人生を変えるような曲”や“大きなカタルシスを与える曲”を書きたいと思っていました。でも今は、たったひとりでもいい、このアルバムを聴いて“自分の気持ちに重なる曲”を見つけてくれる人がいたら、それだけで意味があると思っています。誰かが「この曲、プレイリストに入れるね」と言ってくれたら、それが何より嬉しいです。しかもそれがタイトル曲ではなく、アルバムの中の1曲――いわゆる“B面”だったら、なおさら報われた気がします。


Photos by CHIN SO YEON

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