2024/12/07 18:00
Revoを主宰に、“物語音楽”をコンセプトとして活動する“幻想楽団”=Sound Horizon。彼らがメジャーデビュー20周年を迎えたことを記念して、11月23日から2日間にわたり、神奈川・ぴあアリーナMMにて開催した【Revo's Halloween Party 2024】について、初日の模様は別の記事にて公開されている通り。
かくいう筆者は、Sound Horizonもとい“サンホラ”初挑戦だったこともあり、あまりの情報量が詰め込まれた物語音楽のステージに、ただ感動するままに終わってしまった。ライターとしての職務を果たさねば。そんな想いで、2日目公演は怒涛の勢いになんとか喰らいつき、本レポートを書き記している次第である。
山崎杏演じる皐月、物語の最後に見つけたものは? ハロウィンの“起源”から考える
全26曲を披露したライブのうち、序盤8曲の流れは前日と同様。配信リリースされたばかりのBeyond Story Maxi『ハロウィンと朝の物語』を収録順通りにパフォーマンスしていき、“ハロウィン関係者”をはじめ、灰野優子演じる温泉旅館の若女将、山崎杏による少女・皐月(めい)らがステージを賑やかにする。
筆者が前日に気づけなかった点としては、7曲目で本公演のテーマソングといえる「Halloween ジャパネスク ’24」を歌い上げた後、“ハロウィン関係者”とのMCを経て、皐月が真夜中にも関わらず、浅間の山中へと飛び出して行った場面。彼女は“なにか”を探しながら、最後には力尽きて倒れてしまうのだが、そこで流れているのが、来年3月5日にフィジカルリリースされる方の『ハロウィンと朝の物語』に収録となる新曲「約束の夜」だったことだ。ビギナーな筆者はてっきり、過去の“地平線”の収録曲かなにかかと勘違いしていたのだが、まさか物語の完結編をサプライズの形でライブ披露してくれるとは。
そしてサプライズは、もうひとつあった。皐月が眠ってしまった場面で、ステージ上に灯されたスポットライトが、なぜか会場後方に。そこには……7th Story CD『Märchen』の登場人物の恰好をしたふたりが立っていた。彼らが皐月とどんな関係性かはわからない。が、両親を失った皐月の前に現れ、彼女をおぶっていったのだ。実は前日には、このポジションを同じく過去作Anniversary Maxi『いずれ滅びゆく星の煌めき』の登場人物が務めていたこともあり、予定調和に収まらなかった展開にアリーナ席の方からは絶叫が。そして肝心の皐月は、朝目覚めれば見知った“ハロウィン関係者”の背中に……といったのが、この物語のオチである。
改めてにはなるが、本公演のコンセプトは“ハロウィン”。その成り立ちについて詳細に記すつもりはないが、まだ紀元前のころ、現在のアイルランド周辺に住んでいた古代ケルト人が考えた文化で、10月31日になると現世と来世の境界が曖昧になり、自身の先祖や悪霊など、死者の霊がともに地上に降りてくるものだと言われている。あくまで筆者の解釈となるが、そんな起源を踏まえて行き着いた答えは……皐月を助けたふたりは、もしや“仮装”をした両親?(この死者の霊が地上に降りてくるという考え方が、RevoによるラストMCでとても大切になってくる)
あるいは、過去作の登場人物たち本人が別の世界線(つまりは過去作)から本当に登場したという見方もできるかもしれない。世界の境界が曖昧になる。つまり、この世界のなんらかの“扉”が開き、交わることのない存在たちが一堂に会するという意味では、この国独自の進化を遂げているハロウィンの文化とも重なり合うように思えた。
石川由依、南里侑香らがレア曲を続々披露ーー17曲すべてが日替わりの豪華ステージ
さて、お待ちかねはここから。前日分のレポートに記した通り、ライブ中盤以降の全18曲のうち、17曲がすべて日替わりという大盤振る舞いのステージだ。“ハロウィン関係者”から途中、「今日の目的は、ハロウィンを楽しむものではない」「20年分のあらゆる楽曲で、君たちを全員、殺しにいく」「詳しいことは言わない。ただ今日、君たちは死ぬ」と、事前に歓喜の“死刑宣告”がなされたように、長年のファン、もとい“ローラン”各位には“成仏案件”続きな時間となった。
順不同ながら振り返ると、あどけない歌声がパイプオルガンのサウンドに重なる「少女曰く天使」は、石川由依が歌唱を担当。オリジナルの台詞パートを務めた声優・ゆかなの雰囲気を完コピしていたと、“ハロウィン関係者”からも太鼓判を押される仕上がりだった。
また石川はライブ終盤に「13の冬」も披露。『進撃の巨人』で自身が演じたミカサ・アッカーマンの想いを歌い上げる。会場全体にしんと静寂が走り、どこかこの季節と同じ、冬の空気のようなものが流れていた気がした。落ちサビの聴かせどころで、スクリーンには『進撃の巨人』のラストシーンが流れていたが、何度だってマフラーを巻いてあげたくなるような相手が自分にもいたら。そんな気持ちにさせられる。
南里侑香が歌う「Lui si chiama...」も記憶に強く残っている。グレーの制服姿で届けた、アコースティック調のギターポップ。朗らかなサウンドの上に、〈「体が機械の女の子って普通ですか?」〉という衝撃のフレーズが乗るあたり、“これがサンホラか……”と驚愕をさせられたからだ。とはいえサンホラビギナーなため、終演後に初めて知ったのだが、この楽曲は2005年のリリース以来、今回が19年越しの初披露だったという。それだけに、会場のローランたちは筆者とは別の意味で驚き散らしていたはず。
“初披露”つながりで「暁の鎮魂歌」の話もしたい。同楽曲では、すずかけ児童合唱団のほか、JoelleやCeuiらを含む、この日のゲストボーカルが総出でクワイヤーに入るなど、なんとも豪華な歌唱布陣に。曲中、聴き手に問いかけるようなフレーズも、すずかけ児童合唱団の無垢な歌声だからこそ胸の奥に届いてくるものがあるし、そんな楽曲の仕上がりぶりに、Revoも会場のどこかで頷いていたはず。ところでなぜ、Revoをここで話に登場させたのか。それは、メインボーカルを務めた“ハロウィン関係者”が歌唱後、初披露にも関わらず、それを歌ったのがRevoでないことに、恐縮の塊になっていたからである。
そのほか見どころしかないステージで、筆者が特に紹介したいと思ったのが、栗林みな実による「Ark」。記憶操作によって、悲しい結末を遂げた兄妹の物語だが、栗林自身がキャリア豊富なシンガーということもあり、歌唱力が抜きん出ていたと書くと凡的な表現にしかならず申し訳ない。ただとにかく、サビでのファルセットの使い方や、オートチューンが掛かっているかのように凛とした彼女の声質そのものが、楽曲の主人公のキャラクターを大いに引き立たせていたのだ。そんな主人公さえ〈被験体〉として数字で呼称され、最後に“楽園パレード”へと誘われてしまう世界線が、とてつもなく憎い。
Revoが生者にも死者にも示した20年分の感謝「どっかで見てるか、名もなきローラン!」
ライブ終盤、前述の「13の冬」を終えて、会場は「人生は入れ子人形 -Матрёшка-」で再び明るい雰囲気に。ここでステージ上では軽めのコサックダンスが繰り広げられていたが、もう間もなく閉幕になると思えぬ運動量を求めてくるあたり、なんとも“攻め”のセットリスト。そこからは前日同様、メンバー紹介の後、サンホラの“国歌斉唱”こと「栄光の移動王国 - The Glory Kingdom-」に移ったわけだが、改めて舞台上を見渡しても、本当にバラエティに富んだ衣装が並んでいる。その光景は言わずもがな、ハロウィンそのものだった。
3時間半に及ぶ宴を終えて、ようやく姿を見せたRevoが、20周年を機に久しぶりにライブを訪れたローランに言葉を掛け、感謝を示す場面があった。“令和のSound Horizonは、どうなっているんだろう?”。そんな想いで訪れてくれたのならうれしいし、過去を支えてくれた彼らがいたからこそ、いま、この景色が見られるのだと。
筆者も新たなアーティストの音楽を聴くと、そのときまで支えてくれたファンの存在がなければ、自分はいま、この楽曲に出逢えていなかったのだろうなと、勝手ながら似たような気持ちになることが、よくある。Revoとは視点が違うが、筆者もまた今回、多くのローランに敬意を示したいと思った者のひとりだ。
また遡って初日には、こんなMCもあった。「残念ながら、来れなかった者もいると思う。だけどもね、その全員が居ての20周年だからね」「本当にね、来たくても来れなかった、名もなきローランがいるんだよ。そんな(しんみりとした)ノリにしたいわけじゃないけども、居るんだ! 20年もあると、居る!」。多くは語らないが、この日のチケットはソールドアウトした。が、Revoが前述の言葉を語りながら指さした先は、ぽっかりと空いた空席のブロックだった。きっと、そこには……。
「君たちもね、なにがどうなるかわからん。そんなもんなんだよ、人生というのは」。そう語ったRevoと、最後にこんな約束をした。「10年後、20年後にいつか、ハロウィンのコンサートをやるときがあると思う。そういうときは、絶対に来てくれ! 生きてても、死んでてもいい。いいんだ!」と。「どっかで見てるか、名もなきローラン! 約束だぞ、また来てくれよ」。そんな言葉をステージに残し、Revoは初日のステージを後にしていった。
本公演のコンセプトは“ハロウィン”。その成り立ちについて詳細に記すつもりはないが……。ここまで書けば、すべてが伝わるだろう。20年間という時間の長さと尊さを浴びたライブを終えて、次はどんな仮装をしていけばいいんだろう? そんなことを考えつつ、次なるハロウィンの宴に期待を寄せつつ。そのときはどんなことがあっても、会場に辿り着いてやろう。そう強く決意するくらい、Sound Horizonを大好きになる2日間だった。
Text by 一条皓太
Photos by 江隈麗志、藤村聖奈
◎公演情報
【Revo's Halloween Party 2024】
2024年11月24日(日)神奈川・ぴあアリーナMM
OPEN 16:00 / START 17:00
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