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2024/09/26

<ライブレポート>Co shu Nie めくるめく最新アルバムの世界に観客を誘ったリリースツアー【Wage of Guilt】

 約2年半ぶりの新作アルバム『7 Deadly Guilt』を引っさげて開催されたCö shu Nieの東阪ツアー【Cö shu Nie Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt"】。初日となる東京公演では、これまで積み重ねてきた歴史を引き継ぎながら、新たな物語を切り開いていくふたりのすがすがしい姿を見ることができた。ライブアレンジが施されたアンコールなしの全23曲。絵巻物のように次々と情景を変える様子は、不可思議なおとぎ話の中に迷い込むようにミステリアスでありながらも、ふたりの意思や喜びがダイレクトに伝わってくるものだった。

 開演前よりステージの紗幕に映し出されていたのは、ブラウン管テレビに映るゲームのトップ画面。『7 Deadly Guilt』のジャケットに登場する7つの仮面があしらわれ、BGMにはアルバムのラスト曲「Wage of Guilt」のアウトロがリピートされる。会場が暗転し、画面内の「New Game」の文字にカーソルが合うと、アルバムの1曲目「Labyrinth」に乗せて解像度が粗いサイケデリックな映像が流れ、紗幕越しにバンドのシルエットが淡く浮かび上がり、「Where I Belong」のイントロが響いた。ひずんだ弦楽器の音色と緊迫感がほとばしるドラムのビート。1番のサビが終わると幕が開くが、その後の「Deal With the Monster」に入ってもそのひりついたムードは途切れることはない。会場はたちまち混沌とした別世界へといざなわれていった。

 中村未来(Vo. / Gt. / Key. / Programming)が「ご機嫌よう、Cö shu Nieです。みんなありがとう」と柔らかい語り口で挨拶すると、松本駿介(Ba.)がベースを鳴らし、堀越一希(Dr.)とbeja(Pf. / Gt.)が音を重ね、そのまま「絶体絶命」へつなぐ。しなやかでダイナミックな演奏で駆け上がると、クワイアの導入SEから鳥かごに光が灯り「Lamp」へ。『約束のネバーランド』のエンディング・テーマを2曲続けて届け情景を変えたかと思いきや、雨音のSEに中村が口上を重ね、「アマヤドリ」で雨模様を描く。彼女たちの生み出してきた楽曲世界と、暗闇を切り裂く刺激的な照明が混ざり合う様子は、万華鏡のように目まぐるしく、つかみどころがないくらいに謎めいていた。

「【こしゅあん】から育ててきた温度感をそのままZeppに持ってこれた」と満足げな表情を浮かべる中村に、観客は高らかな歓声で応える。【こしゅあん】こと【Cö shu Nie presents「Underground」】は、東京・渋谷スペイン坂地下のライブハウス・WWWから、クリエイターやファンとともに独自のシーンや世界観を創り上げていくという試みのもと、昨年11月から隔月で計5回開催されたイベントである。ライブだけではなくこの空間でしか体感できない特別な企画が多数用意されたため、ファンとの結束もより強固になったと想像する。彼女たちの佇まいからは、気心の知れた相手とのびのび過ごすようなリラックス感が漂っていた。

 サイケカラーの照明に照らされながら「no future」を演奏すると、千変万化な展開が高揚感を呼び起こす「私とペットと電話線」、ディープネスとポップネスを兼ね備えた「病は花から」、艶やかな毒に包まれるような「undress me」とほぼノンストップで披露。松本のベースソロにドラム、ピアノ、ギターが重なると、客席から湧き上がる手拍子に中村が歌を乗せて「Artifical Vampire」へ。なめらかな繋ぎがさらに没入感を強める。

 インスト演奏とメンバーのソロ回しに乗せてメンバー紹介を行うと、「最後にみんなの声ください!」とシームレスにコール&レスポンスを求め、バンドの粘度の高いグルーヴが引き立つ「水槽のフール」へとなだれ込む。観客もコールで音の渦に飛び込み、ハンドマイクスタイルだった中村も間奏からギター&ボーカルスタイルに戻り、さらに演奏の熱量を高めた。曲が次々と連鎖反応を起こすようにパフォーマンスが繰り広げられる。景色が次々と変わっていけばいくほど、Cö shu Nieの世界の奥深くへと幽閉されるような感覚に陥った。

「I want it all」の後、再びハンドマイクスタイルになった中村は、スポットライトが当たるなかアカペラで「I am a doll」を歌い出す。切ない歌声に終盤でピアノが重なり、静寂と暗闇が内省性を高める。繊細なタッチのピアノが鳴り終わるや否やリズム隊が演奏を始めると、中村がピアノの前に座り、bejaがギターを抱えて音を重ね、そのまま「iB」へ。密室を感じさせる細やかな演奏と透明感のあるボーカルは、ふたりだけの世界を体現するようにウェットに鳴り響いた。

「ビードロ鏡の絵について」「give it back」と純粋すぎるほどの愛情に満ちた楽曲で長尺セクションに区切りをつけると、松本は会場にたくさんの観客が集まったこととアルバムがようやくリリースできる喜びをあらわにし、「このまま最後までぶっ飛ばしていきますので、楽しんでいきましょう!」と呼びかける。そして「asphyxia」「bullet」「永遠のトルテ」「supercell」とアッパーかつスリリングな曲を立て続けに披露し、会場を熱気で包んだ。

 中村はアルバムについて、完璧主義ゆえに人と自分を比較して劣等感に苛まれることや、自分で自分に課した枷を取り払い、自分自身を愛するための第一歩として“罪悪感”と向き合ったと話す。「理不尽なことに対して怒っていい。感情を解放する自分を受け入れて、もっともっと楽しく生きていきたいと思いました。心の中にこの曲を棲まわせるとお得です」と続け、「Burn The Fire」を披露した。自身につきまとう呪いを振り払うようにたくましく歌い上げる様子は、どこから見ても勇敢だ。その思いに共鳴するように客席も拳を掲げた。

「前回のZepp(去年9月のツアーファイナル)から成長したところを皆さんにお見せしたくて、今日のためにいっぱい用意をしてきました。こうやってみんなと音楽を共有することがわたしの最大の幸せです。こんな特別な瞬間をたくさん重ねて一緒に生きていきたいと、心から思っています。全員とハグしたいくらい愛が溢れています」と感謝を伝えると、「青春にして已む」とアルバム収録曲「消えちゃう前に」でライブを締めくくる。観客へのメッセージのようにあたたかく激しく響く歌と演奏に身を委ねていると、Cö shu Nieは自分を愛することに向き合ったがゆえに、自分たちの音楽を愛する人への愛情をさらに深くしたのではないかと感じられた。終演後の会場は、青空の下を駆け抜ける澄んだ風のように爽やかだった。それは、ふたりの残した優しさの余韻だろう。

Text by 沖さやこ
Photo by 鳥居洋介

Co shu Nieの「o」はウムラウト付きが正式表記

◎公演情報
【Cö shu Nie Album Release Tour 2024 "Wage of Guilt"】
2024年9月7日(土) 東京・Zepp Divercity (TOKYO)
2024年9月21日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside

<追加公演>
【Cö shu Nie Album Release Tour 2024“Wage of Guilt” – Encore】
2024年11月28日(木) 東京・WWW X
開場18:00 / 開演19:00
2024年11月30日(土) 石川・REDSUN
開場16:00 / 開演17:00

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